《RENT》 1996年5月3日 (2)

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 《レント》第一幕は、パンクロッカーのロジャー(白人)たちが住む、イーストビレッジのロフト。
 クリスマスの夜です(これは《ボエーム》と一緒)。

 ビデオアーティストを目指すマーク(白人)が、説明の歌を歌い始める。
 歌詞は全く理解できないが、ロジャーはHIVポジティヴで、死ぬ前に偉大な歌を書き上げたいと苦しんでいる、というようなことを歌っているんじゃないだろうか。

 やがて仲間たちが集まり、どんちゃん騒ぎになる。
 ロジャーの楽譜(だと思う)を燃やして暖を取るのは《ボエーム》と一緒。
 《ボエーム》の場合はロドルフォの戯曲の原稿だけれど。

 《You Okay Honey ?》という曲で、ハイテク哲学者のコリンズ(黒人)は、ドラッグクィーン(女装ゲイ)のエンジェル(黒人)と知り合い、男同士の恋に落ちる。
 このエンジェルが、ちょっと可愛いたがりたくなるようなタイプなんだ(^_^)。

 やがてロジャーだけが残った部屋に、SMクラブのダンサー、ミミ(プエルトリコ人?)がロウソクの火をもらいに来る。
 これが《Light My Candle》という曲。
 どうして火をもらいに来るんだろう? 停電とも見えなかったが。
 もちろん、《ボエーム》のストーリーに合わせるためなんだけれど。

 《ボエーム》では、ロウソクの火をもらうためにロドルフォの部屋に入ったときにミミは鍵を落としてしまう。
 廊下に出てそれに気が付いたミミ、その時風でロウソクの火が消えて、暗くなった部屋でロドルフォとミミは床に落ちた鍵を探す。
 そのうち、二人の手が触れ合って、《冷たいこの手》《私の名はミミ》という有名なアリアが歌われ、二人は恋に落ちる。

 《レント》のミミも何かを落として探している(鍵にしては、落とした金属音がしなかった)。
 それをロジャーが見つけるんだけれど、ミミは積極的ロジャーにに抱きついて(オペラと違う ^_^;)、ロジャーのズボンのポケットからそれを取り戻してしまう。

 隣のおじさんの話では、それはヘロインなんだそうだ。
 ミミはドラッグ中毒なのね。
 で、オペラと違って二人はそのまま別れてしまう。

 このミュージカルは、ロジャーとミミの恋物語というよりも、イーストビレッジに住む若者たちの青春群像という感じで、ここからはいろいろな登場人物が現れるが、この辺が言葉が分からない悲しさで、どうにも分からない。
 コリンズとエンジェルの同性愛コンビの純愛は順調に進み、熱烈なキスシーン まである( ^_^;。

 一方、ロジャーとミミの関係はじれったいほど進まないんだけれど、隣のおじさんの解説では、ロジャーは HIV ポジティヴのため、AIDS を感染させることを恐れ、女性とのセックスに積極的になれないのだそうだ。

 モーリーン(白人)は一幕も終わりの方に、オートバイに乗って現れ、一人で長いパフォーマンスを繰り広げる。
 僕には理解不能でしたが、観客には受けていました。

 《ボエーム》の第2幕はクリスマスのパリはラテン街の『カフェ・モミュス』なんですが、《レント》の第1幕フィナーレはライフカフェでのバカ騒ぎです
 イーストヴィレッジの青春万歳! というような場面ですね。
 途中でモーリーンがズボンを下げてお尻を丸出しにしたのには驚きました。

 第一幕の最後に《I Shoud Tell You》という曲があって、どうもこの時にミミとロジャーは二人はお互いの秘密を打ち明け合うようです。
 で、やっと恋に落ちると。
 この曲では『I Shoud Tell You , I Shoud Tell』という歌詞が二人によって繰り返し歌われるんだが、これが『愛してるよ、愛してる』と聴こえて、おかしかった(^_^)。

 第二幕冒頭に全員が並んで歌うのが《Seasons of Love》。

 ミミはロジャーのために麻薬を止めようと努力するんだけれど、どうしても止められない。
 一度はケンカ別れしそうになる二人ですが、やはりお互いが必要だということで歌う《Without You》という二重唱は大変美しい曲でした。

 しかし彼らの青春にも暗い影が差し始めます。
 まず、エイズが悪化して、エンジェルが死んでしまいます。
 やがてミミも去っていき、マークの恋人モーリーンも弁護士のジョアン(黒人女性)の下へ去っていきます(レスビアンですね)。
 これが《Goodbye , Love》という曲。

 そして時は去り、何カ月か後のロジャーとマークのロフトに、道で倒れていたミミが、モーリーンとジョアンによって運び込まれます(《ボエーム》と一緒)。
 そして、ロジャーはミミの求めに応じ、作曲していた曲を歌います。
 《Finale/Your Eyes》というナンバーです。

 そしてミミは事切れ、ロジャーの『ミミ〜!!!』という悲しみの叫びで、《ボエーム》なら終わるところなんですが‥‥なんと!、《レント》では死んだはずのミミの手がピクピクと動き出し、やがて彼女は復活してしまいます(^_^)。
 『いやあ〜、ちょっと調子が悪くて』なんて言っているようです(^_^)。
 これはラーソンの、 AIDS による死を恐れず、この病気との共生を目指そうという考えによるものではないか、とプレイビルに書かれていました。

 ミミが復活した後は、死んだエンジェルまで現れ(男装)、盛大なフィナーレ。
 そして、アッという間のスタンディングオベージョン。
 観客の反応は、1曲ごとに歓声が飛んで、熱狂的なものです。

 僕はBWミュージカルというと、《クレイジー・フォー・ユー》みたいな能天気な作品が受けるのかと思っていたので、このようなシリアスな作品が拍手喝采を浴びているのを見て、『NYも捨てたものじゃないな』と、嬉しく思いました。

 さてこの《レント》ですが、ストーリー的には《コーラス・ライン》、音楽的には《ジーザス・クライスト・スーパースター》を思い出させる、いずれも、実に真剣な内容を持ったものです。
 正直な話、ロックの曲は僕には皆同じに聴こえたりしたんですが(^_^;、全く手抜きのない、充実した音楽であることには、間違いありません。

 AIDS 時代のイーストビレッジの青春群像、ということで、全く今、上演される意義のある作品です。
 そして、恋し、悩む青春時代というのは永遠のテーマですから、《コーラスライン》のように、長く上演されていく作品であろう、と予言しておきましょう。
 
 
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