ミュージカル座 《センス・オブ・ワンダー》
2000年11月26日(日)4:30PM 東京グローブ座

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        ミュージカル座 《センス・オブ・ワンダー》
     2000年11月26日(日)4:30PM 東京グローブ座

       レイチェル・カーソン: 伊東恵里

 プログラムによれば、ミュージカル座の主宰者ハマナカトオルさんは『10年続かなければ大きなことは何も言えない』という方針らしいんですが、残念ながら『ミュージカル座は5年にして壁に突き当たっているな』というのが、今回の感想です。

 僕がミュージカル座を見始めたのは《ルルドの奇跡》からなんですが、ハマナカさんの脚本作りは単純なので、偉人ものでは伝記を読んだだけで、どのような作品になるか予測できてしまいます。

 《アインシュタイン・フォリーズ》では『光』という抽象的なキャラクターを出してきたりして、新しい試みもあったんですが、《センス・オブ・ワンダー》にはそのようなアイディアも無い。
 それなら、よほど劇的な人生を送った人を主人公にしなくては舞台が持たないでしょう。

 主人公であるレイチェル・カーソンとは何をした人なのか?
 『沈黙の春』という本で、農薬による自然破壊を告発した人だそうだ。

 ハマナカさんは『自然を大切にし、あらゆる生命と共存しよう』という考えをこの作品に込めたそうで、それが現代の観客に受けると思っているようだ。
 しかし、『DDTで虫たちが死んだ。自然が破壊されている』などと歌われても、説教臭く押しつけがましいだけ。

 また、レイチェル・カーソンの人生には他にドラマティックな要素が乏しい。
 大学に入ったとか、実家が破産したとか、本が出版されたとか、それくらい。
 これでは、いくら音楽だけが盛り上がっても、こちらの気持ちは付いていかない。
 ハマナカさんは主人公が変われば作品も変わってくると考えているようだが、ストーリーの作りが同じなので、誰を主人公にしてもワンパターンに見えてしまう。

 では、創作ものはどうか?
 《ママ・ラブズ・マンボ》では、TVキャスターの黒木瞳が『関西環境博でオオタカが絶滅に瀕している』という投書を全く検証することなくテレビ番組で流してしまい、しかもその投書をしたのが自分の息子だったという、まったくあり得ない呆れ果てたストーリー。
 これで大丈夫なのだろうか?

 山口e也さんの音楽は、全曲を音楽で構成したもの。
 休憩無しで2時間という力作だが、起伏に乏しいストーリーをなんとか盛り上げようとして、職人的な器用さが見えてしまうのが残念。
 とは言え、カーテンコールを見ていると『一度は見ておいても良かったかな』という優しい気持ちにもなります (^_^) 。

 思い返せば、ミュージカル座は昨年《ルルドの奇跡》《アインシュタイン・フォリーズ》の頃が良かったですね。
 ということで、来年2月の《ルルドの奇跡》は絶対のお薦めです (^_^) 。
 
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