名古屋市文化振興事業団2001年企画公演
《サウンド・オブ・ミュージック》
2001年2月10日(土) 名古屋市芸術創造センター

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 名古屋市文化振興事業団2001年企画公演《サウンド・オブ・ミュージック》が本日(2/10)から始まりました。
 会場は名古屋市芸術創造センター。
 2月17日(土)までの公演です。

 このシリーズで《サウンド・オブ・ミュージック》が上演されるのは、1990年に続いて2回目。
 1990年の公演(演出:増田邦彦)はなかなか素晴らしいものでした。

      名古屋市文化振興事業団2001年企画公演
          《サウンド・オブ・ミュージック》
    2001年2月10日(土) 名古屋市芸術創造センター

      マリア・ライナー:中田 裕子
 ゲオルグ・フォン・トラップ:友森 美文 (A)
               服部  廉 (B)
          修道院長:中須賀悦子 (A)
               夏目 久子 (B)
    エルザ・シュレイダー:浅香 真理子(A)
               大久保幽香 (B)
 マックス・デットヴァイラー:志村 俊人 (A)
               柴田  聡 (B)
          リーズル:梶田 祐紀恵(A)
               真井 聖美 (B)
     ロルフ・グルーバー:西野  誠

   指揮:古谷 誠一  セントラル愛知交響楽団


 今回の訳・訳詞・演出は青井陽治さん。
 劇団四季出身で、最近の演出作品は《きみはいい人 チャーリー・ブラウン》。
 ブロードウェイ原典に忠実な舞台を心がけたそうです。

 本日の公演はAキャスト。
 まだ始まったばかりということもあるのでしょうが、1990年の方がずっと素晴らしい舞台だったと思います。

 例えば、シュレイダー夫人を迎えて子供達が『サウンド・オブ・ミュージック』を歌う場面を取り上げてみましょう。
 トラップ大佐は子供達に歌うことを禁じていたわけで、それなのに子供達が歌うことについて、怒りや戸惑いがあったことでしょう。
 しかし、歌を聴いているうちに昔の歌や愛情あふれた生活を思い出し、諸々の気持ちがこみ上げてきて、一緒に歌い出してしまうわけです。

 歌を禁じていた大佐自身が歌いだすとは、子供達もさぞ驚いたことでしょう。
 しかし、彼らも父親と一緒に歌えることの幸せに満たされ、感動的な盛り上がりになるわけです。
 今回の舞台はこの辺がおざなりというか、通り一遍。
 1990年の松本トラップ大佐には泣かされたものですが‥‥。

 マリア役の中田裕子さんは笑顔が可愛い人で、適役でしょう。
 初めて見る人かと思っていたら、昨年《かぐや》の主役を歌ったそうで、ヒロインを忘れてはいけませんね (^_^ゞ。

 青井陽治さんの訳は翻訳調で、日本語として上手くこなれていなくて、実に聞き取りにくい。
 「ドレミの歌」では、『DOE , A DEER , A FEMALE DEER』を直訳して『ドは鹿、雌の鹿』という歌詞は、日本の舞台にはいかにも不適当。
 英語の歌詞を知らない人には、何が何だか分からないのでは?
 まあ、覚悟の上なんでしょうが。

 しかし、『シ、大海原』というのには笑った笑った。
 この部分は『TEA,A DRINK WITH JAM AND BREAD』ですからね (^_^;。
 どうせ原典に合わせるなら、徹底的にやればいいのに (^_^;。

 それから、『山の向こうはスイス』という台詞は止めていただきたいものです。
 地図を見ればすぐ分かるように、スイスは遙か彼方で、山の向こうはヒトラーの別荘があるベルヒテスガーデンなんですから。

 まあ、プログラムにマッターホルンの写真を使った東宝公演(宮本亜門)よりは、まだましですけどね。
 ブロードウェイ原典に忠実だということですから、ブロードウェイでもあった台詞なんでしょうね。

 と不満を言いながらも、3時間近くを結構退屈もせずに観ることが出来ました。
 舞台転換はオーストドックスなもので、子供達の演技は学芸会みたいなところもあったけれど、健気だし (^_^) 、

 映画(僕のデフォルト)に較べると、エルザ、マックスに重要な歌が多い。
 それから、ロルフはナチスに入党しながらも、恋するリーズルやトラップ一家のことを心配している、結構いい人でした。
 冒頭の『サウンド・オブ・ミュージック』って、お星様が出て、夜の歌なのか?


◇ 『永遠のサウンド・オブ・ミュージック』(木之下晃 &Tomoe著・東京書籍・2200円)

 映画『サウンド・オブ・ミュージック』が上演されたのは1965年ですか?
 もう35年も前の映画なんですね。

 僕は初めて見たときから、この映画の虜になってしまいました。
 オーストリアの子供って、勉強もせずに遊んでばかりで何と羨ましいことか、ってね (^_^) 。

 舞台になったザルツブルクには何回か行ったことがあるんですが、その度に映画の舞台となった場所を訪ねています。
 レオポルツクローン城(トラップ大佐の邸宅)にあったガラスのパヴィリオン(ラブシーン)にも行ったし、シャフベルク(ドレミの歌の蒸気機関車)にも登ったし、モントゼーの教会(結婚式)にも行きました。

 当然、マリアが住んでいたノンベルク修道院にも行きました。
 子供たちがマリアに会いに来る門扉を入って、僕はびっくり仰天したんですが、教会の内部は映画と全然違うんですよ (@o@) 。
 真っ暗な聖堂が建っているだけ。

 では、映画の修道院はどこにあるのか?
 オープニングシーン、マリアがくるりと回って『THE HILLS ARE ALIVE』と歌い出す、あの丘はどこにあるのか?
 マリアがギターを弾きながら『LET'S START AT A VERY BEGINNING』と『ドレミの歌』を歌い始める、あの山はどこにあるのか?
 僕はずっと知りたいと熱望していました。

 今回『永遠のサウンド・オブ・ミュージック』(木之下晃 &Tomoe著・東京書籍・2200円)という本が出版されました。
 帯に『ここが本当のロケ地だ!』とあるように、映画の舞台となった場所が紹介されています。
 僕は永年の希望が叶って、嬉しくてたまりません (^_^) 。

 著者の木之下晃さんは、カラヤンの写真集も出している有名な音楽写真家で、音楽取材の傍ら、奥さんのTomoeさん(写真家)と『サウンド・オブ・ミュージック』のロケ地を探して歩かれたわけです。

 この本によれば、オープニングのシーンは、ドイツS村のM部落。
 『ドレミの歌』はホーエンヴェルフェン城を望む、ヴェルフェンにあるRさんの牧草地。
 実名を挙げられないのは私有地だからだそうですが、映画そのままの写真を見ることが出来るのは感動もの (^_^) 。

 木之下夫妻はカメラマンなので、掲載された写真も多く、ザルツブルク観光の良いガイドブックにもなっています。
 今度ザルツブルグに行くときは、この本を持って、ノンベルク修道院からトラップ大佐の家まで、映画でマリアが通った道を辿ってみたいものです (^_^) 。
 
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