G.C.メノッティ 《領事》 The Consul
2001年3月18日(日) ザ・カレッジ・オペラハウス

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 毎年レベルの高い現代オペラの公演を続けている大阪音楽大学カレッジオペラ『世紀末から新世紀』シリーズ。
 今年の演目はジャン・カルロ・メノッティのオペラ《領事》。
 これは期待通り、全く素晴らしい公演でした。

    G.C.メノッティ《領事》The Consul
     2001年3月18日(日)14:00
        ザ・カレッジ・オペラハウス

   指揮:飯森 範親  演出:松本 重孝  制作:高橋 浩子

  ジョン・ソレル:小林 克人  ジョンの妻・マグダ:田中留美子
   ジョンの母親:児玉 祐子         秘書:井岡 潤子
    秘密警察官:岸  俊昭      コフナー氏:新川 和孝
    外国人女性:岸  美香    アンナ・ゴメス:藤原 啓子
 ヴェラ・ボロネル:橘 知加子        奇術師:柏原 保典
     アッサン:晴  雅彦

 メノッティといえば、《アマールと夜の訪問者》《泥棒とオールドミス》など、軽妙な作品が多いのかと思っていました。
 しかし《領事》は大変に重厚な(重苦しい)作品で、彼の最高傑作と評価されるのももっともでしょう。
 ニューヨークで初演され、英語台本。

 自由主義者のジョン・ソレルは国外逃亡を図る。
 妻マグダはヴィザの発給を求めて領事館に行くが、領事には会えず、秘書に書類の書き直しばかり要求される。
 その間に子供も母親も死んでしまい、最後にガスの栓をひねった彼女は朦朧とした意識の中で幻影を見る。
 暗い話でしょう (^_^;?

 まず、メノッティの音楽が素晴らしい。
 現代オペラ風の響きの中から、ミュージカル風のメロディーが聞こえてきたりして、ハッとします。

 歌手のレベルは高かった。
 特に主役のマグダ(田中留美子)が歌った、第二幕のアリアは素晴らしい曲でした。
 柏原保典さんは奇術を演じながら歌っておられましたが、奇術の特訓を受けたんだそうです (^_^) 。

 舞台に領事自身は出てこないのですが、何度も書類の書き直しを命じる秘書の機械的な対応を見ていると、『命のヴィザ(杉原千畝)』『シンドラーのリスト』『ミス・サイゴン』など、いろいろ思い返されました。

 松本重孝さんの演出はオーストドックスなもの。
 いつの間にか(第一幕から)舞台の両脇には照明も当てられない人々が椅子に座って並んでいます。
 これはヴィザの発給を待つ人々でありましょう。
 休憩時間も並んでいましたね。

 最後にマグダが倒れると彼らに照明が当てられ、上からガスが降り注ぎ、彼らはバタバタと倒れていきます。
 もちろんナチスの毒ガスで、『ここまでする必要があるのか?』とも思いましたが、メノッティの音楽の盛り上がりと共に圧倒的な印象を受けました。

 カレッジオペラは《金閣寺》《夜間飛行》とNHKで放映されましたが、《領事》はどうなのでしょう?
 この日には録画はありませんでした。
 この素晴らしい舞台が2日間でたった千人あまりの人に見られるだけで消えてしまうなら、オペラとは何とはかない芸術なのでありましょうか。
 
 
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