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◇ 《欲望という名の電車》 東京室内歌劇場

 東京室内歌劇場の演目には魅力的なものが多いのですが、とりわけ今回の《欲望という名の電車》には驚きました。
 アンドレ・プレヴィン1998年の新作が、こんなに早く日本で見ることが出来るとは (@o@) 。
 地方在住の身としまして、ウィークデイはちょっと辛いんですが、これを見逃すことは出来ません。
 問い合わせたところ「終演は9時半」ということで、夜行バス帰りを覚悟で東京に向かいました。

       東京室内歌劇場《欲望という名の電車》
   2003年6月11日(水)6:00PM 新国立劇場中ホール
       指揮:若杉 弘    演出:鵜山 仁
        ブランチ・デュボア:松本美和子
        ステラ・コワルスキ:塩田美奈子
     スタンリー・コワルスキ:勝部 太
       ハロルド・ミッチェル:近藤政伸

 ブランチは妹ステラのもとに滞在するため、ニューオーリンズにやって来た。
 かつては豊かな暮らしをしていた二人。
 ブランチはステラの貧しい暮らしを咎める。
 しかし、ステラの夫スタンリーによって、ブランチの惨めな境遇が徐々に明らかにされ、そして‥‥。

 まずはサスペンスドラマ風のストーリーが素晴らしい。
 心理サスペンスというんでしょうか、原作となったテネシー・ウィリアムズの戯曲を見ていないので分からないのですが、このオペラは原作に忠実に脚本化されたのでしょうか?
 プレヴィンの音楽は、現代音楽風の部分とメロディックな部分が適度にブレンドされた、聴きやすいもの。
 現代オペラなのに拍手ができるアリアがあったのには、驚きました。

 松本美和子さんは、大きい劇場で聴くと声量不足を感じたこともあったんですが、落魄し、男に捨てられ、レイプされ、気がふれていくオールドミスには、全くの適役でした (^_^;。
 その他のキャストも素晴らしかったですね。
 若杉弘さん指揮する東京交響楽団の演奏は一分の隙もないもの。
 回り舞台を効果的に使った鵜山さんの演出は、隅々まで目の届いたもの。

 これは、ストーリー、音楽、キャスト、指揮、演出、そのすべてが本当に素晴らしい公演でした。
 今のところ、今年のベストワンですね。
 もし東京に住んでいたら、当然ダブルキャストを見てみたいところです。
 こんな公演を見てしまうと、「やはり新幹線代2万円を費やしても、チャンスを逃がしてはいけない」と、つくづく思ってしまいます。

 11時20分の夜行バスに乗り、5時半に自宅に到着しました。