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◇ 「ニーベルングの指環」第3夜《神々の黄昏》

 土曜日の2時開演とは、名古屋在住で午前中に仕事がある僕には酷な時間設定です。
 しかし飯守さんの「ジークフリートの葬送行進曲」はどうしても聴き逃すわけにはいきません。
 結局「第一幕はあきらめて第二幕からの入場」という辛い決断をしまして、チケットを購入いたしました。

 さて、接近する台風情報を聞きながら名古屋駅に行ったところ、テレビの臨時ニュースで「首都圏で震度4の地震」なんて言っています。
 思い返せば、昨年の《ジークフリート》では大雨のために帰りの新幹線が止まってしまい、西日本に多くの「さまよえるワグネリアン」が出現したのでした。
 今年は地震のために新幹線が止まり、東京までたどり着けないかもしれません。
 悲壮な思いで新幹線に乗り込みました。
 結局は定刻通りの運行でしたけれどね (^_^)。

 3時過ぎに東京文化会館に到着しまして、受付のお兄さんが「一時間モニターでお待ちいただくことになりますがよろしいでしょうか?」って、よろしいわけないだろ (^_^;。

      東京シティ・フィル・オーケストラル・オペラ
      「ニーベルングの指環」第3夜《神々の黄昏》
    2003年9月20日(土)2PM 東京文化会館大ホール

             指揮:飯守泰次郎
             構成:高島 勲
 ヴィジュアル・アドヴァイザー:ヘニング・フォン・ギールケ 
        ジークフリート:成田勝美
        ブリュンヒルデ:緑川まり
           ハーゲン:長谷川 顯(あきら)
           グンター:青戸 知(さとる)
         グートルーネ:田中三佐代
        ヴァルトラウテ:岩森美里
          アルベリヒ:島村武男
           ノルンT:竹本節子
           ノルンU:岩森美里
           ノルンV:渡辺美佐子
        ヴォークリンデ:羽根田宏子
         ヴェルグンデ:田中三佐代
        フロースヒルデ:手嶋眞佐子

 オーケストラの後ろに小さい舞台があって、そこで歌い演じられるのは昨年と同じ。
 しかし、昨年と違ったのは、歌手が楽譜を見ずに、自由に演技をしていたこと。
 飯守さんの音楽のすばらしさは相変わらずで、歌手の方も大健闘。
 ワーグナーの世界を満喫させていただきました。
 飯守さんには、新国立劇場で、バイロイトで、リング・チクルスを振っていただきたいものです。
 面白かったのは、プロンプターの仕事を見ることができたこと。
 普段はプロンプターボックスの中にいて見ることができませんからね。
 舞台を見て、字幕を見て、プロンプターを見て。飯守さんを見て、オケを見て、忙しい観劇でした。

 昨年の醜悪な《パルジファル》で危惧されたギールケ・高島コンビの演出も、嬉しいことに自然なもので、特に「葬送行進曲」のあとでジークフリートの死体が出てきた場面は冴えていると思いました。
 しかしながら、ラストシーンのことは書いておかなければなりません。
 プログラムに高島さんがフィナーレのことを書いておられるのを読んで、いやな予感はしたんですよ。
 高島さんのアイディアはおかしいことが多いから。
 最初は「ワルハラの炎上に原爆の映像でも出すのか?」と身構えていたんですが、ラインの乙女たちも去り、舞台に静寂が訪れようとしたその時、ジークフリートとリュンヒルデがせり上がってきたんですね。抱き合って (@o@) 。
 これは無限の可能性があるフィナーレを矮小化してしまった、納得できない演出でした。
 これほどすばらしい公演の最後に、なぜこんな思いをさせられなくてはならないのでしょう?
 トラウマになりそう。 長野オリンピックの伊藤みどりのように。

 終演は7時半過ぎ。
 これなら3時開演でもよかったじゃないか。
 こんな素晴らしい演奏は、最初から聴きたかった、
 などと、まだウジウジと‥‥ (^_^;。
 カーテンコールで、緑川さんがプロンプターに握手を求めたのはよかったですね。
 彼は頑張ったのに、飯守さんに忘れられていましたからね。

 帰りの新幹線も台風の影響なし。
 電光掲示板には、小泉さんが自民党総裁に再選されたニュースが流れていました。