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◇異説・カルメン情話(11/20)

 2000年・名古屋能楽堂の「能形式による《ドン・ジョヴァンニ》」で高い評価を得た松尾葉子さんが、今回は「文楽様式による《異説・カルメン情話》」を企画・上演しました。
 仕事の都合で第二幕からの観劇でしたが、これはなかなか質の高い公演でした。

   セントラル愛知交響楽団第64回定期演奏会
    文楽様式による《異説・カルメン情話》 
   2003年11月20日(木)6:30PM
       愛知芸術劇場コンサートホール

    指揮:松尾葉子     演出・振付:五條園美
  カルメン:河野めぐみ    ドン・ホセ:神田豊壽
  ミカエラ:池田京子   エスカミーリオ:森口賢二
   義太夫:竹本駒輝       三味線:鶴澤三寿々

 本質的には、義太夫・三味線を語り手とした《カルメン》のハイライト。
 オーケストラの後ろに舞台を作り、歌と演技はこの舞台上でされる。
 大道具は一切なし。

 演出の五條さんは名古屋の日本舞踊家のようだが、プログラムによれば、時代を近松の江戸中期、場所は吉原あたり、ホセは同心、カルメンは遊廓の女、エスカミーリオは旗本で闘牛士、と設定したそうだ。

 歌手の演技は人形振り、後ろには黒子の人形遣いが付いている。
 アリアになると邪魔にならないよう黒子は退くが、歌手は人形振りで歌う。
 黒子は後見の役目もあり、引き抜きをして衣装を一瞬にして早変わりさせたりする。

 第三幕前の間奏曲では、フルートの美しいメロディーをバックに、カルメン、ホセ、エスカミーリオによる、人形振りの演技があったが、これは夢のように美しかった。
 最後の修羅場で、カルメンがホセに投げつけるのは指輪ではなく簪。

 歌手達の人形になりきった演技も見事だったし、演出家・振付家の意志が隅々まで徹底されていることにも感心した。
 無念だったのは、僕が文楽を見たことがなく、何処までが文楽の表現なのかが分からなかったこと。
 チケット代が《戦争と平和》の10分の1だったのも嬉しかった (^_^) 。