東京室内歌劇場 《インテルメッツォ》 (04/7/19)

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 近ごろ下調べも億劫になって、プログラムで予習をしようと会場前の列に並びました。
 この作戦が大成功で、対訳付きのプログラムはあっという間に売り切れ、郵送予約の長い列が出来ていました。
 さて、そのプログラムの解説によれば、1923年(59歳)に作曲されたこのオペラはリヒャルト・シュトラウス夫妻の間に実際に起こった夫婦喧嘩をオペラ化したという驚くべき作品でした。

                東京室内歌劇場
           オペラ《インテルメッツォ》日本初演
          (交響的間奏曲を伴う2幕の小市民喜劇)
          台本・作曲:リヒャルト・シュトラウス

          2004年7月19日(月・休)3:00PM
                新国立劇場中ホール

           指揮:若杉 弘 / 演出:鈴木 敬介

           ロベルト・シュトルヒ:多田羅 迪夫
              クリスティーネ:釜洞 祐子
              ルンマー男爵:近藤 政伸
                   アンナ:若槻 量子
                  公証人:竹澤 嘉明

 宮廷楽長ロベルト・シュトルヒはウィーンに2ヶ月の出張。
 その留守宅に届いたのは『オペラのチケットを2枚送ってね。その後は、いつものバーで。あなたのミーツェ・マイヤーより』という手紙。
 この手紙を読んだ妻クリスティーネは激怒して、夫に離婚を申し立てる電報を送るが‥‥。

 内容を知らされずにドレスデンでの初演(1924年11月4日)に臨んだ妻パウリーネの怒りは凄まじいものだったそうです。
 それはそうでしょう。
 舞台の上にいる自分が、シュトラウスの友人から「俺がそんな女のそばにいたら、あっという間に精神病院行きさ」なんて言われているし、フィナーレでは自分が「あなたは立派で、純粋で、光り輝いている夫だわ!あなただけを永遠に愛し続けます」なんて歌っているんですから。
 うっぷん晴らしとか、面白半分とかいう言葉が頭に浮かんできますね。

 作品としては「インテルメッツォ」という名前の通り、間奏曲の部分が、夫婦喧嘩にはもったいないほどの充実した音楽でした。

 主役の釜洞さんは声量にちょっと不満は感じましたが、膨大なドイツ語のテクストに挑戦して、「単に原語で上演するという段階を超えて、言葉の微妙なニュアンス、日常会話の機微にどこまで迫れるのか」という命題に、輝かしい成果を収めたと言っていいでしょう。

 鈴木敬介さんの演出は、舞台装置を動かすことにより、特に一幕の頻繁な場面の移動に対応し、上手いものだと思いました。
 2月の《エジプトのヘレナ》(東京二期会)の雪辱を果たした、という印象でしょうか。

 僕は新しいものが好きなので、次々と日本初演のオペラを指揮してくださる若杉弘さんには、いつも感謝しています。

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