『新・ワーグナー家の女』 (04/8/3) |
木山事務所公演「新・ワーグナー家の女」 2004年8月3日(火)7:00PM 名古屋市芸術創造センター 作・演出=福田善之 音楽=林 光 ヴィニフレッド・ワーグナー: たかべしげこ フリーデリント・ワーグナー:水野ゆふ ピアノ演奏:安藤由布樹 第二次大戦後の1946年、国外へ出奔していた娘フリーデリントは、「ナチ協力者」として裁判にかけられる母ヴィニフレッドを救うためにバイロイトへ帰ってきた。 舞台は「裁判のためのリハーサル」という設定。 リヒャルト・ワーグナーのパトロンはルードウィッヒ2世、そしてヴィニフレッド・ワーグナーのパトロンはアドルフ・ヒトラー。 ナチスによるバイロイト支配に反抗するフリーデリントは、トスカニーニの手助けでフランスへ亡命する。 娘の詰問に「彼の政治がどうあろうと、私にとっては、芸術を愛するパトロンだったというだけ。ワーグナーの芸術を」と答えるヴィニフレッド。 ワーグナーに関心を持つ僕には緊迫した興味深い舞台でしたが、一般の人にはどうだったのでしょう? 最後に裁判に参加した人々の言葉として作者の思いが語られるのですが、在日朝鮮人問題や《トスカ》みたいな話も出てきて、取って付けたような印象でした。 しかし、真剣な制作意図を持った作品であることは評価したいと思います。 ピアノでワーグナーのメロディーが演奏されると、そちらに耳が行ってしまって、セリフが聞き取れなくなり困りました (^_^ゞ。 中公新書「ヴァーグナー家の人々」(清水多吉)を読み返してみると、フリーデリントの出奔は大事件だったようで、フルトヴェングラーが説得のためパリに送られたとか。 フリーデリントはその後トスカニーニの養女として迎え入れられたそうです。 この舞台ではヴィニフレッドが敗者、フリーデリントが勝者の立場になっていますが、ヴィニフレッドはバイロイトに残り、フリーデリントはヴァーンフリート荘に入ることを拒否され、アメリカに戻ったそうです。 そして、バイロイト音楽祭はヒトラーに可愛がられたヴィーラントとヴォルフガングの兄弟の時代へと移っていくわけです。 勝者はどちらなのでしょう? 「お前がバイロイトを乗っ取るために来たという噂は本当なの?」というヴィニフレッドのセリフが思い出されました。 |