ニューヨーク・シティオペラ 《蝶々夫人》
   2005年5月26日(木)18:30開演 愛知芸術劇場大ホール

「REVIEW05」に戻る
 

 先週の《椿姫》に続き、本日も第二幕からの観劇です。
 僕は1996年にNYシティオペラに入ったことがありまして、大変立派なロビーが印象的でした。
 今回のプログラム、宮本亜門のページにロビーの写真が載っています。

 その時は夏だったのでオペラはお休み。
 バレエを見ましたが、これは下手でした。
 http://www.nakash.jp/opera/1996NY/12abt.htm

         NYシティオペラ日本公演 《蝶々夫人》
           2005年5月26日(木)18:30

         指揮:山田 敦  演出:マーク・レイモス

          蝶々さん:シュウ・イン・リー
           スズキ:重松みか
        ピンカートン:ジェラールド・パワーズ
           ゴロー:キース・ジェイムソン
       シャープレス:ジェイムズ・マッダレーナ

 僕は《蝶々夫人》は第一幕は大好きなんですが、第二幕以降はあまりに愚かな蝶々さんに笑っちゃったりしていたんです。
 それが、2003年3月30日にジュゼッペ・タッデイのシャープレスと小林史子さんの蝶々さんを見てから、見方が変わってきました。

 今日の第二幕もとても良かったです。
 周りからは蝶々さんに同情して、鼻をすする音が聞こえてきました。

 舞台装置は舞台奥にかけて、舞台幅の大きい8段の階段があるだけ。
 マーク・レイモスの演出は照明を生かしたデザインで、細やかな演技が付けられているものです。

 蝶々さんのシュウ・イン・リーは上海生まれだそうですが、歌唱も良かったが、なにより蝶々さんに成り切った演技が素晴らしい。
 他のメンバーの出来も良く、このオペラハウスのレベルは高いと思いました。

 僕の席(5階)からはオケピットが見えず、山田敦さんの指揮姿を拝見することが出来なかったのは残念でした。
 愛知芸術劇場大ホールは豪華な内装ですが、大きいだけの欠陥劇場です。

 蝶々さんとスズキが東洋人で、ピンカートンとシャープレスが欧米人という、原作通りの組み合わせが好ましい。
 蝶々さんの子供は歌詞にあるように「金髪で青い目」の子供で、満足満足。
 日本人の公演では日本人の子供が出てきて、歌詞とのギャップで不満に思うことが多い場面ですからね。

 最後の場面は是非書いておきたい。
 舞台奥には大きい障子があって、中央が出入り口になっています。

 蝶々さんは子供に目隠しをして座らせ、障子に向かって立ち(客席には後ろ姿になる)ピンカートンが来るのを待ちます。
 やがて、「バタフライ! バタフライ!」と歌いながら舞台上手の奥からピンカートンがやってきて、中央の障子を開けた瞬間に、蝶々さんは首を切るんです。

 大体この場面は蝶々さんが衝立の奥で自害して、「バタフライ!」の声は蝶々さんの幻影として処理されていることが多いでしょう。
 本来のプッチーニの意図は、現れたピンカートンが自害した蝶々さんを見つけて立ちすくむのかな。

 ピンカートンの妻ケートとの会話の中で、蝶々さんは「半時間後にピンカートン自身が子供を受け取りに来て」と歌っています。
 今回の演出では、蝶々さんはその時からピンカートンの目の前で自殺する覚悟だったことになり、たいへん納得がいく優れたアイディアかと感心しました。
 
 
「REVIEW05」に戻る