映画 『帝国オーケストラ ディレクターズ・カット版』
12月26日(金)0:40PM 名古屋シネマスコーレ(今池)

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 帝国オーケストラ ディレクターズ・カット版
 12月27日(金)0:40PM 名古屋シネマスコーレ

 『ベルリン・フィルと子どもたち』の共同監督エンリケ・サンチェス=ランチによるナチス時代のベルリンフィルのドキュメント。

 ナチス時代の語り部として、元コンサートマスターのハンス・バスティアン(96歳)と、コントラバス奏者のエーリッヒ・ハルトマン(86歳)を得たことが大きい。
 彼らの口から、当時の様子がまるで今あったことの様に語られます。

 1933年、ヒトラーはドイツの首相となりました。
 当時自主運営していたベルリンフィルは経済的に困窮した状態でしたが、ナチスの宣伝相であったゲッベルスの支援により、フルトヴェングラーと共に演奏活動を続けることが出来ました。

 ナチスの大きな旗(鉤十字、ハーケンクロイツ)が掛かったコンサートホールで行われた演奏会。
 火を吐くようなゲッベルスの演説。
 長身をフラフラふらつかせながら、ブルブルと震える指揮棒から沸き上がるフルトヴェングラーの偉大な音楽。

 しかし、身の危険を感じたユダヤ人の団員たちはアメリカに去っていきます。
 その中には有名なバイオリニスト、シモン・ゴルトベルクもいました。
 彼らの子孫たちを探し出してのインタビュー。
 次々と出てくる写真や手紙、そして思い出話。

 逆にナチスの団員もおり、一般の団員は彼らに近づかないようにしていたとか。
 ドイツ敗戦によりナチスの団員たちは追放される。

 ユダヤ人の団員やナチスの団員の中には自殺した人もいたようです
 彼らの写真も出てきます。

 そして戦後の混乱の中で戦災を免れた建物での再出発。
 その様子を克明に記録したメモ帳。

 指揮者ではエーリッヒ・クライバーが面白かった。
 アメリカ兵に誤って射殺されたレオ・ボルヒャルト、若き日のチェリビダッケは出てきますが、カラヤンは出てきません。

 二人の語り部たちは「私たちはナチのオーケストラではない」と言う。
 彼らの気持ちとしては、ただ演奏できる場所で最高の演奏をしただけなのでしょうが、やはり後生の人々はそうは見ないだろうなとは思いましたね。 

 この二人が元気なうちに、彼らの知るすべてを記録として残していただきたいものです。
 DVDが発売されたらじっくりと見直したい、優れたドキュメントでした。
 
 
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