エフゲニー・キーシン ピアノリサイタル
2009年4月15日(水)6:45PM 愛知芸術劇場コンサートホール

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 1986年10月17日(金)にキーシン(1971年10月10日~)初来日(15歳)のコンサートを、新宿文化センターで聴きました。

 スピヴァコフ指揮モスクワヴィルトゥオーソ、曲目はショスタコーヴィッチの「ピアノ協奏曲」でしたがその演奏を聴き、「神様から才能を与えられた神童って本当にいるんだ」という奇跡を実感し、しばらく椅子から立ち上がれなかったほどの衝撃を受けました。

 ロボットのようにぎこちなくピアノまでたどり着く歩き方や、突然会場に向かって手を叩きカントール先生がステージまで出てくるといった異様な行動も、神童らしいものでした (^_^; 。

 あれから23年、順調にキャリアを積み、世界の巨匠となった38歳?のキーシンが名古屋まで来てくれるのです。
 会場には少し空席もありましたが熱気があふれ、女性用トイレには長い列が出来ていました。

   エフゲニー・キーシン ピアノリサイタル
    2009年4月15日(水)6:45PM
     愛知芸術劇場コンサートホール

 プロコフィエフ:バレエ「ロミオとジュリエット」からの
          10の小品Op.75より
       少女ジュリエット、マキューシオ
       モンタギュー家とキャピレット家
 プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第8番
       「戦争ソナタ」 Op.84

 ショパン:幻想ポロネーズ Op.61
 ショパン:マズルカOp.30-4、Op.41-4
      Op.59-1
 ショパン:12の練習曲 Op.10より
  1.ハ長調、2.イ短調、3.ホ長調「別れの曲」、
  4.嬰ハ短調、12.ハ短調「革命」
 ショパン:12の練習曲Op.25より
  5.ホ短調、6.嬰ト短調、11.イ短調「木枯らし」

 現れたキーシンはピアノまでまっすぐ歩きまして、「成長したなあ」という感じ (^_^ゞ。
 でも、お辞儀は何となく変でした。

 彼の音の特徴は一つ一つの音が分厚く内容があること。
 その音量は驚くばかりで、コマーシャルにも使われている「モンタギュー家とキャピレット家」など、先日聴いた《ワルキューレ》のフルオーケストラにも負けないのではないかと思うほどの迫力です。

 ショパンでは「別れの曲」の感情表出もいいけれど、「革命」や「木枯らし」など速い曲の超絶技巧に惹きつけられました。
 速い曲でも音の厚みは変わらず、どういう指をしているのか、不思議に思いながら見ていました。

 「奇跡の神童」が大人になって「奇跡の巨匠」になったことを嬉しく思いましたことです (^_^) 。


◇カラヤンの涙  09/05/20

 BSで放映された『ヘルベルト・フォン・カラヤン生誕100年記念ドキュメント』を見ました。
 カラヤンや家族、音楽家など関係者の証言を集めた、充実した内容の番組でした。
 ルネ・コロやブリギッテ・ファスベンダーなど、彼と不仲になった人も出てきました。

 そのドキュメントで、カラヤンの次女アラベルは「父の涙を一度だけ見たことがあります。ザルツブルクでキーシンを聴いた父は、とても感動していました」と語りました。

 そこでキーシンが登場し、カラヤンとチャイコフスキーのピアノ協奏曲を演奏したときの思い出を語ります。
 それは1989年(18歳)のザルツブルク・イースター音楽祭でしょうか?
 演奏が終わり、キーシンがカラヤンに握手に近づこうとしたときカラヤンは彼に投げキッスをして、そして眼鏡を外し、目をハンカチで拭ったのです。

 カラヤン夫人は「彼とは30年暮らしているけれど、こんなに感動している姿は初めて見たわ」とキーシンに言ったそうです。

 そして帰る時になり、カラヤンはそこに来ていたキーシンの母親に近づき、握手して、キーシンを指さしながら言ったのです。
 「GENIUS(天才だ)」と。
 
 
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