辻井伸行 『ラフマニノフ第2番』 指揮:ウラディーミル・スピヴァコフ
ロシア・ナショナル・フィルハーモニー交響楽団
2009年6月17日(水)6:45PM 愛知芸術劇場コンサートホール

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 このコンサートがあることは、ポスターを見て知っておりました。
 そのポスターには『辻井伸行の奇跡!』と書かれておりまして、何が奇跡かは分かりませんでしたが、どうも写真を見ると目に障害があるらしい。
 視覚障害ということなら、僕はピアノの梯剛之さんもバイオリンの川畠道成さんもあまり感心しなかったので、このコンサートにも興味が沸きませんでした。

 6月8日(月)の朝、『全盲ピアニストの辻井伸行さん(20)、ヴァン・クライバーン国際コンクールで優勝』というニュースが流れ、チケット争奪戦の始まりです。
 僕は昼休みにチケット確保に飛び出しました。

 この日は月曜日で、芸文センターのプレイガイドはお休みです。
 仕方がないので、栄地下街三越前にある小さなプレイガイドに行ってみました。
 ここはイヴェント関係のチケットが多いようで、クラシックは弱いのではないかと思っておりました。
 で、このコンサートのチケットを聞くと、「ありますよ~」と分厚いチケットの束が出てきました。
 チケットはまだ1枚しか売れておらず、ぼくは希望どおりの席を確保することが出来ました。
 「情報を制するものはチケットを制す」ですね (^_^) 。

 翌日の新聞には、チケットは即日完売と書かれていました。
 情報収集にこのお店に行ってみましたが、僕が買った後に来客と電話が殺到し、チケットは飛ぶように売れてしまったそうです。

 辻井伸行さんのお父さんは産婦人科医、お母さんは元アナウンサーで、生まれたときから目が見えなかったそうです。
 記者会見ではテレビ朝日「スーパーモーニング」のキャスター(原元美紀という女性らしい)による「もし一日だけ目が見えるようになったら何が見たいか」などという人間として許せないような質問がありました。
 どうしてテレビキャスターが入るような記者会見を開くのか、ピアニストは音楽で勝負するべきだろう、と不思議に思ったのですが、所属事務所が浜崎あゆみと同じエイベックスらしい。
 
 とかなんとかで、本日話題のコンサートに行って参りました。

 ロシア・ナショナル・フィルハーモニー交響楽団
 主席指揮者:ウラディーミル・スピヴァコフ
 ピアノ:辻井伸行

 2009年6月17日(水)6:45PM
 愛知芸術劇場コンサートホール

 最初の曲はチャイコフスキーの幻想序曲『ロミオとジュリエット』。
 これはインテンポで飛ばす、情感の乏しい演奏かと思いました。

 そして本日のお目当て、ラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』。
 ヴァン・クライバーンコンクールの決勝でも弾いたタイムリーな演目です。

 辻井伸行さんはスピヴァコフに肩を抱えられるようにして登場しました。
 手探りでピアノを探し、椅子に座って一安心。

 演奏では最初の和音から、辻井さんのはっきりとした芯のある音に惹きつけられました。
 どんな楽器でもそうですが、音に魅力が無くては話になりません。

 演奏している姿からは、目が見える見えないは全く分かりません。
 その音楽はロマンチックでスケールの大きいもので、全く感心しました。

 これに『盲目の』という枕詞が付けば『辻井伸行の奇跡!』と言われることになるのでしょう。
 産婦人科医であるお父さんは「音楽家としてまだスタートに立ったところ」と言っておられましたが、それよりはずいぶん高いレベルに達していると、僕は思いました。

 アンコールはショパンの『子守歌』で、ゆっくりとした旋律が心地よい。
 何と言っても音が美しいということを再確認しました。

 コンクールに優勝してからは、6月13日(土)の北上市(岩手県)と本日の2回しか、辻井さんのコンサートは予定されていません。
 今週末にはベルリンに出発すると、テレビでは言っていました。

 10月24日(土)には「しらかわホール」でソロコンサートが予定されていますが、し烈なチケット争奪戦に勝ち抜く自信はありません。
 今の熱狂的なブームが落ち着いてから、また聴いてみたいピアニストです。
 
 
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