TSミュージカル 《タン・ビエットの唄》
2010年8月29日(日)1:00PM 兵庫県立芸術文化センター中ホール

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 出家・振付家である謝珠栄(しゃたまえ)さんが主催する、TSミュージカルファンデーションの《タン・ビエットの唄》は初演時より評価が高く、いつか機会があれば見てみたいものだと思っていました。
 今日の名古屋ではティエリー・フィッシャー指揮のブラームスや、三澤洋史指揮のワーグナーなど、魅力的なコンサートがあったのですが、《タン・ビエットの唄》は今回を逃すと次の機会があるかどうか。

 今日の大阪は暑かった。
 今年の最高気温だそうで37.5℃。
 新幹線からホームに降りると、あまりの暑さにクラッとしました。

   TSミュージカル 《タン・ビエットの唄》
    2010年8月29日(日)1:00PM
   兵庫県立芸術文化センター中ホール

   演出・振付/ 謝 珠栄 脚本/大谷 美智浩
   音楽/玉麻 尚一

   フェイ:安寿ミラ
   ティエン:土居裕子
   トアン:畠中洋
   ハイン:吉野圭吾
   ミン :宮川浩
   ビン/ビック:駒田一
   ゴク :戸井勝海

 このミュージカルはベトナム戦争中の1968年3月16日に起きたソンミ村虐殺事件を題材としています。
 ベトナム戦争を題材としたミュージカルでは《ミス・サイゴン》が有名ですが、当然の事ながら《タン・ビエットの唄》も《ミス・サイゴン》の影響下に作られたミュージカルでしょう。

 《ミス・サイゴン》のキムに当たるのが、土居裕子さん演じるティエン。
 土居裕子さんは《マドモアゼル・モーツァルト》初演からのファンです。

 ソンミ村はこのミュージカルではハンティン村となっています。
 アメリカ兵による大虐殺から逃れたティエンとフェイの姉妹は、解放民族戦線(ベトコン)の5人の男たちに助けられ、育てられました。
 フェイは大虐殺の証言をするためにヨーロッパに派遣される使節団に選ばれ、そのままベトナムには戻りませんでした。

 物語はイギリスで暮らしていたフェイが姉ティエンの消息を訪ねて、20年ぶりに祖国ベトナムへ戻るところから始まります。
 フェイはかつての仲間だったベトコンの5人の男たちを訪ねますが、彼らは幸せではなく、真実を知ろうとするフェイを拒絶し、追い返そうとする。
 その隠された真実を追うミステリアスな、そして衝撃的な展開で、2時間30分があっという間に過ぎてしまいました。

 後から考えればお約束通りのストーリーかも知れないし、突っ込みを入れたくなる場面もあるのだけれど、事実の重さと、美しいメロディーと、簡素ながら隙のない舞台演出、そして実力派がそろったキャストの渾身の演技に、会場のあちらこちらからすすり泣きが聞こえてきました。
 
 最後のシーンはフェイが美しいハンティン村を再び訪れ、虐殺事件についての長いモノローグを語ります。
 この「どうしても泣かせてやろう」という気迫のモノローグが結構感動的で、そこにティエンの娘(土居さんの二役)が現れたりすると、「そんなご都合主義ありか?」と思いながらも、美しいデュエットに涙腺は決壊してしまうんですね (^_^ゞ。

 「タン・ビエット」は「また会うためのさよなら」だそうで、「See You Again」でしょうか。
 
 
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