あらかわバイロイト 《ラインの黄金》
2012年11月24日(土)6:00PM サンパール荒川大ホール

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 今回の公演の特徴は演出家にアニメ・映像の企画制作会社である「ガイナックス」の山賀博之氏を起用し、そしてダンスカンパニー「コンドルズ」とコラボしたこと。
 ガイナックスは『ふしぎの海のナディア』『新世紀エヴァンゲリオン』などを製作しているらしい。
 プログラムによれば、田辺とおるさんは5年前にドイツで、映画『ロード・オブ・ザ・リング』に対抗する演出を山賀さんに委嘱されたようです。

 演奏前のアナウンスが入るときに、震度4の地震がありました。
 もっと強い本震が来て、ミューザ川崎のように天井が落ちてきたらどうしようかとは思いましたね。
 クリスティアン・ハンマーさんは僕の近くに座っておられましたが、地震の感想を聞いてみたかった。

 あらかわバイロイト 《ラインの黄金》
 2012年11月24日(土)6:00PM
 サンパール荒川大ホール

 指揮:佐々木 修 演出:山賀 博之(ガイナックス)
 音楽総監督:クリスティアン・ハンマー
 オペラ監督:田辺とおる

 ヴォータン:勝村大城
 フリッカ:仲野玲子
 エルダ:田中牧子
 フライア:鶴田朋子
 ドンナー:田中拓風
 フロー:阿部祐介
 ローゲ:升島唯博
 ファーゾルト:木川田澄
 ファフナー:松中哲平
 アルベリッヒ:上田純也
 ミーメ:島田道生
 ヴォークリンデ:廣瀬春乃
 ヴェルグンデ:日下麻彩
 フロスヒルデ:里まり
 管弦楽:TIAAフィルハーモニー管弦楽団

 今回の公演は4組のキャストで上演されますが、佐々木修さんが指揮するC公演を観劇してきました。

 会場に入ると舞台には直径7メートルという巨大なリング型のスクリーンが浮かんでいます。
 チラシを見ていただくと分かるでしょう。
 このスクリーンに流れる雲などが映像として映し出されるわけですが、大蛇になったり、カエルが映ったりします。
 金色の指環になったときは日本のアニメ技術者のレベルの高さに仰天しました。
 字幕もこのリングに流されましたが、その行書体の流れる早さを追っていくことは出来ませんでした。

 映像技術に較べるとドラマとしては、少し物足りないところもあったような気がします。
 演技をしていない人をどのように動かすかは、演出家にとって経験を要する難しいところなのでしょう。

 キャストはヴォータンの勝村大城さんなど、レベルの高い人が多かったと思います。
 ファーゾルト役の木川田澄さんが2000年の関西二期会の《パルジファル》でグルネマンツを歌われたときには、「これほど立派にワーグナーを歌える人が日本人にいたのか!」とビックリしたものです。
 それなのに今回の上演は異なるキャストで4回公演ですから、時代は変わったものです。
 無謀な企画にも思えるのですが、ワーグナーを経験する日本人歌手がどんどん増えていくのは結構なことなのでしょう。

 指揮者の佐々木修さんをインターネット検索してみると、1955年弘前大学公衆衛生学教授・佐々木直亮氏の二男として青森県弘前市に生まれる。
 武蔵野音楽大学に学び、1977年からオーストリア政府奨学生としてザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学指揮科に学び、ヘルベルト・フォン・カラヤン、セルジュ・チェリビダッケらに師事。
 1979年国際カラヤン指揮者コンクール入賞。
 1981~1983年モーツァルテウム音楽大学管弦楽団常任指揮者、指揮科講師をつとめる。
 帰国後、日本各地のオーケストラや合唱を指揮する。
 プランナー、ITにも活動の場を広げ、株式会社マエストロ代表取締役。
 2011年には「あらかわバイロイト」で《神々の黄昏》全曲を指揮(日本人としては3人目)、高い評価を得ている。

 『ワルハラ城への神々の入場』ではドンナーが「ヘダ ヘド」のところを速く飛び出してしまったようで、舞台に緊張が走りましたが指揮者が食い止めまして、最後はリングのスクリーンに虹が架かってフィナーレとなりました。

 終演後の出口には、出演者が並んでお見送りしていただき、良いことだと思います。
 しかし、皆さまのメークは凄かったですね (^_^ゞ。