ミュージカル 《ミス・サイゴン》 名古屋公演
 2012年7月25日(水)6:15PM 愛知県芸術劇場大ホール

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 大好きなミュージカル《ミス・サイゴン》が名古屋にやって来ました。
 せっかくだから7公演全部行こうかとも思ったのですが、新妻聖子さんの名前がなくて愕然。
 僕は新妻さんは世界一のキムだと思っているし、名古屋出身の新妻さんにとって、故郷に錦を飾る絶好のチャンスだったのに。

 オペラファンの皆さまに説明しておきますと、《ミス・サイゴン》は《蝶々夫人》をベトナム戦争に移したミュージカル。
 作曲者のクロード=ミシェル・シェーンベルクは、十二音技法で有名なアーノルド・シェーンベルクのお兄さんの子孫。

 クロード=ミシェル・シェーンベルクやアンドリュー・ロイド=ウェッバーが「現代のプッチーニ」と呼ばれるように、現代クラシックのオペラが不協和音に埋没し、数回の公演しか出来ないのに対し、彼らのミュージカルはプッチーニのような美しいメロディーを持ち、ドラマチックな舞台作りで多くのファンを何年も集めています。
 
 今まで《ミス・サイゴン》はニコラス・ハイトナー(オペラ演出でも有名)によるコンピュータ制御の舞台装置で、帝国劇場以外での公演は出来なかったわけです。
 今回はローレンス・コナーという人の新演出で、装置は人力で動かします。
 そのおかげで、全国での巡回公演が出来るようになったわけです。

 ミュージカル《ミス・サイゴン》
 2012年7月25日(水)6:15PM
 愛知県芸術劇場大ホール

 エンジニア:市村 正親
 キ ム:知念 里奈
 クリス:山崎育三郎
 ジョン:岡 幸二郎
 エレン:木村 花代
 トゥイ:泉見 洋平
 ジ ジ:池谷 祐子

 今回の公演、何といっても興味はローレンス・コナーの人力によるアナログ演出。
 これが大変に上手く行っておりまして、ニコラス・ハイトナーの金のかかったコンピューター装置は不必要だったのではないかと思えて来るほどです。
 
 クライマックスの一つである「サイゴン陥落」シーンなど、米軍基地のフェンスを人力で次々と動かし組み立て、コンピューター演出にも劣らない効果を上げています。

 このミュージカルにはヘリコプターが天井から降りてきてアメリカ兵を運び去る(キムが取り残される)という見せ場があって、どのように演出するのかと興味津々で待っていると、ヘリコプターは映像で現れました。
 この映像が帝国劇場のヘリコプターよりずっと巨大で、その押しつぶすような迫力には恐怖を感じました。

 エンジニアの市村正親さんは全公演シングルキャストという驚異的なスケジュール。
 超人ですね。
 市村さんといえば、『テルマエ・ロマエ』のハドリアヌス帝も良かったですね (^_^) 。

 初めて拝見するエレン役の木村花代さんは劇団四季出身の方だそうですが、いままで何回も見てきた日本公演の中で、最高のエレンかと思いました。
 エレンのアリアが別の曲(難しそう)に変わっていましたが、このように完成した作品のナンバーを取り替えることには抵抗があります。

 泉見洋平さんのトゥイは完成品で、ベトコンとなって祖国のために戦い、許嫁のキムをひたすら愛し続ける純朴なベトナム青年に降りかかった悲劇には、いつも泣かされます。

 今回の会場は愛知県芸術劇場大ホールという巨大劇場。
 せっかくの《ミス・サイゴン》公演なのに、ほとんどPRがなく(ポスターもチラシも見たことが無い)、多くの客席が空いているのがいかにも無念でした。