パーヴォ・ヤルヴィ & NHK交響楽団定期演奏会
2015年2月22日(日)3:00PM 愛知県芸術劇場コンサートホール

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 数十年前にテレビでN響を見る度に、「彼らはどうして、こんなに喜怒哀楽が無い、つまらなさそうな顔で演奏をするのだろう」と不思議に思っていました。
 
 2005年に第一ヴァイオリン奏者だった鶴我裕子さんの『バイオリニストは肩が凝る』という本が話題になりまして、読んでみました。
 そこに書かれていたのは、「入団までは必死で努力するけれど、入団してしまえば後はサボることを考えている」という、当時のN響団員の実態でした。

 特に不快に感じたのは新国立劇場における《神々の黄昏》の部分。
 鶴我さんは歳を取っているので出たくなかったのに、無理に載せられたと書かれています。

 さて、(2004年)3月1日、初めは管・弦別々の分奏。指揮者の準・メルクルは、もちろんちゃんと勉強してあって、ポイントだけを弾かせた。それは、パガニーニの練習曲よりも理不尽な難所の連続だった。
(中略)
 譜読みの何日目になっても、弾けるようにならないので、心配になってくる。本番までになんとかなるとは、とうてい思えないのだ。
(中略)
 結局準・メルクルは、すべての練習期間中、1度も怒らなかった。それどころか、「とてもよく進んでいるから」と練習日を2日も減らしてくれて、「休日はもう、オペラを忘れて」とまで言ってくれた。
 いい人だなあ。

 結局、劇場に来た観客は、手抜き指揮者と手抜きオーケストラの《神々の黄昏》を聴かされたように思えるのです。
 彼らには最善を尽くすという芸術的良心が無いのでしょうか?
 準・メルクルとN響団員は2日分のギャラは返したのでしょうか?

 僕はウォーナー演出が不快だったので行かなかったのですが、この本を読んでから、ますますN響が嫌いになりました。


 NHK交響楽団定期演奏会
 2015年2月22日(日)3:00PM
 愛知県芸術劇場コンサートホール

 指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
 ピアノ:ピョートル・アンデルジェフスキ
 コンサート・マスター:篠崎史紀

 R.シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』
 モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番ハ長調
 R.シュトラウス:交響詩『英雄の生涯』

 指揮者のパーヴォ・ヤルヴィは1962年、エストニアの首都タリンに生まれる。 53歳。
 名指揮者ネーメ・ヤルヴィの長男。
 現在、パリ管弦楽団およびフランクフルト放送交響楽団音楽監督、ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団芸術監督。
 2015年9月からN響の首席指揮者に就任予定。
 任期は3年間。

 次期首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィの指揮の下、N響は素晴らしい演奏を繰り広げました。
 前にも書いたことがありますが、『ドン・ファン』は僕がアマオケで演奏した最も難しく、そして美しい曲でした。
 N響の技術は圧倒的でした。
 中間部のオーボエソロは茂木大輔さん。
 まだ、オーボエ奏者としての活動も続けておられたのですね。

 ピアニストのアンデルジェフスキは1969年ワルシャワ生まれ。
 珠を転がすような、モーツァルトにふさわしい音色の持ち主かと思いました。

 後半の『英雄の生涯』もN響の演奏能力の高さを見せつけた演奏で、これ以上の『英雄の生涯』を聴くことはなかなか無いでしょう。
 N響は良い首席指揮者を獲得したようで、羨ましいことです。
 彼らの関係が長く続くよう、期待しております。