びわ湖ホール 沼尻竜典:歌劇 《ローエングリン》 21年3月7日
 
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 昨年のびわ湖リングの《神々の黄昏》はコロナのために上演中止となり、代わりにブルーレイディスクが残されたのでした。
 今年は《ローエングリン》が上演されましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、上演形式をセミ・ステージ形式に変更しての上演となりました。
 やむを得ないキャストの変更も多くあったようです。

 本日の琵琶湖は雨模様でしたが、遠く伊吹山も霞んで見えているという不思議な景色でした。
 タクシーで交通系のカードが使えないのは、大変不便でした。

 ワーグナー:歌劇《ローエングリン》
 指 揮:沼尻竜典(びわ湖ホール芸術監督)
 ステージング:粟國 淳

 2021年3月7日(日)2:00PM
 びわ湖ホール大ホール

 ハインリヒ国王:斉木健詞
 ローエングリン:小原啓楼
 エルザ・フォン・ブラバント:木下美穂子
 フリードリヒ・フォン・テルラムント:黒田 博
 オルトルート:八木寿子
 王の伝令:大西宇宙
 ブラバントの貴族Ⅰ 谷口耕平*
 ブラバントの貴族Ⅱ 蔦谷明夫*
 ブラバントの貴族Ⅲ 市川敏雅*
 ブラバントの貴族Ⅳ 平 欣史*
 小姓:熊谷綾乃*、脇阪法子*、上木愛李*、船越亜弥*

 *びわ湖ホール声楽アンサンブル

 管弦楽:京都市交響楽団
 合 唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル

 沼尻竜典さん指揮する京都市交響楽団が、圧倒的に雄弁で魅力的でした。
 10人以上のバンダが左右に分かれ、位置を変えながら演奏するのが面白かったですね。
 『エルザの大聖堂への行進』ではパイプオルガンも鳴ったようですが、さすかにこれは録音でしょう。

 合唱団はマスクをしての歌唱で、演技に参加すことはありませんでした。

 エルザ役の木下美穂子さんは横山恵子さんの代役。
 「キャスト変更のお知らせ」のチラシが入っていましたので、最近決まったのでしょうか。
 安定した歌唱、演技で、大変良いエルザでした。

 ローエングリン役の小原啓楼さんは宮本亜門のピンカートンですか。
 申し訳ないけれど、全く覚えていません。
 白髪で登場したときは飯守泰次郎さんかと思いました。
 線の細いテノールですが、聴かせどころはバッチリ決まり、「こんな素晴らしいローエングリンが日本にいたのか」と驚きました。
 愛知県立芸術大学教授だそうですが、こちらではあまり名前を見ませんね。

 オルトルート役の八木寿子さんは福岡教育大学卒、京都市立芸術大学院を首席で卒業。
 第81回日本音楽コンクール入賞。
 若手の抜擢かと思いましたが、エルザとローエングリンの運命を翻弄する魔性の女を立派に演じておられました。
 得な役柄ですからね。

 男性低音軍は、どなたも立派な歌唱、演技でした。

 不満に感じたのは粟國 淳さんのステージング。
 今回の配置はオケピットに蓋をした舞台でキャストが演じ、その後ろにオーケストラ。
 アクリルの板があってその後ろにマスクをした合唱団が椅子に並びます。
 その後ろに黒いカーテンがあって、カーテンが開くとスクリーンに様々な映像が投影されます。
 
 このような手法をとると舞台転換が簡単にでき、海や山や壁やいろいろなものが不必要に映されてしまうわけです。
 悪い使い方の見本を見たような気がしました。

 ローエングリンとテルラムントの決闘では舞台は暗くなり、スクリーンに鎧姿のイラストが投影されます。
 漫画映画でもあるまいに。
 第3幕、テルラムントがローエングリンを襲う場面では照明がピカピカするだけ。
以後の舞台のテルラムントが死んだという歌詞が分からなかった方もあったでしょう。