びわ湖ホール ピッチーニ 《つばめ》
2021年10月10日(日)2:00PM びわ湖ホール中ホール

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 びわ湖ホール オペラへの招待

 プッチーニ 《つばめ》
 2021年10月10日(日)2:00PM
 びわ湖ホール中ホール

 指揮:園田隆一郎
 演出:伊香修吾

 マグダ:中村恵理
 リゼット:熊谷綾乃
 ルッジェーロ:谷口耕平
 プルニエ:宮城朝陽
 ランバルド:平欣史
 その他

 管弦楽:大阪交響楽団
 合 唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル

 プッチーニは10曲のオペラを書いていますが(『三部作』で1曲)、《つばめ》は失敗作とされ、上演の機会も少ないオペラです。
 1910年《西部の女》がメトロオペラン歌劇場で上演されてから、1917年の《つばめ》の上演まで長い期間がありましたが、この時期プッチーニは公私ともに苦しい時期を送っていました。

 1903年2月、自動車事故
 1904年2月17日、《蝶々夫人》初稿:スカラ座
 1909年1月23日、妻エルヴィーラのすざまじい嫉妬といじめに耐えられなくなった小間使いドーリア・マンフレーディが服毒自殺。
 エルヴィーラは訴えられ、最終的にプッチーニが多額の示談金を支払うこととなりました。
 1910年12月10日《西部の女》メトロポリタン歌劇場
 1915年5月にイタリアが第一次世界大戦に参戦
 1917年3月27日《つばめ》モンテカルロ歌劇場

 「第Ⅰ幕」
 舞台はパリ。マグダは銀行家ランバルドの愛人でサロンの女主人だ。
 ある日、詩人プルニエが《ドレッタの夢》を歌い、マグダが曲を完成させます。
 プルニエはマグダの手相を見ながら「あなたはつばめのように海を渡って恋をする」と予言します。
 「第Ⅱ幕」
 マグダはダンスホール「ブリエ」に出かけ、青年ルッジェーロと恋に落ちる。
 「第Ⅲ幕」
 彼らはコートダジュールで共に暮らし始める。
 しかし数カ月後、ルッジェーロに求婚されたマグダは、自分が汚れた身であることを打ち明け、彼のもとを去って行く。

 第Ⅰ幕は《椿姫》の第Ⅰ幕、第Ⅱ幕は《ラ・ボエーム》の第Ⅱ幕、第Ⅲ幕は《椿姫》の第Ⅱ幕でしょうか。
 このオペラで有名なアリアは第Ⅰ幕前半に歌われる、『ドレッタの夢』。
 ただこのアリアはストーリーの本筋と無関係で、必要の無いアリアです。
 ドレッタなる人物はアリアの中だけで、現実には出てきません。

 僕はマルタ・ドミンゴ(プラシド・ドミンゴの妻)演出のDVDで予習していったのですが、『ドレッタの夢』が済んだらこのオペラは終わったようなものかと考えていました。
 しかしその後も美しいメロディーやドラマティックな部分があり、最後まで面白く聴くことが出来、これは嬉しい喜びでした。
 終演は4:10PM。

 この上演成功の最大の殊勲者は、文句なしにマグダ役の中村恵理さんです。
 彼女は客演で、後はびわ湖ホール声楽アンサンブル。
 『ドレッタの夢』は最初をプルニエが歌い、続いてマグダが全曲を歌います。
 歌手がマグダに変わると歌は声量が2段階大きくなり、表情が濃厚になります

 伊香修吾さんの演出は初めて見ましたが、ストーリーは正統的なもの。
第1幕、第2幕ではプロセニアムに斜幕が利用されていて、舞台がボケて見える。
 照明のバランスが良くないのでしょうか。
 その斜幕に白黒の写真が投影されるのですから、舞台もよく見えません。

 第Ⅱ幕は『ブリエ』というナイトクラブ。
 大勢の人数がいるはずなのですが、大きな部屋に交代で、2~3人が現れて歌います。
 予算の問題でしょうか。
 マグダとルッジェーロの愛の二重唱では自転車による『ローマの休日』が面白かったですね。

 休憩後の第Ⅲ幕は斜幕が無くなり、コートダジュールの青空と海が広がります。
 マグダとルッジェーロのフィナーレは迫力のある本格的な曲でした。