名古屋市文化振興事業団 《こうもり》
1996年2月10日(土) 2:00PM 11日(日) 5:00PM
名古屋市芸術創造センター

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 名古屋市文化振興事業団《こうもり》
   名古屋市芸術創造センター
 1996年2月10日(土) 2:00PM Aキャスト
         11日(日) 5:00PM Bキャスト

 台本・演出:増田 邦彦  指揮:岡田 司

 演出の増田さんは東宝演劇部所属の方で、90年に同じ企画で《サウンド・オブ・ミュージック》を演出している。
 誰も見たことがないと思うから勝手なことを書いてしまうが、この《サウンド・オブ・ミュージック》は「宮本亜門・大地真央」コンビよりずっと泣けた。
 だから今回の《こうもり》も、とても楽しみにしていた。

 指揮の岡田さんは大阪の指揮者で、元名フィル副指揮者。
 以前我がオケを振ってもらったことがあるが、なかなかの力量の持ち主。

 会場の名古屋市芸術創造センターは 500人くらいの劇場で、オペレッタには丁度いいのではないか。
 舞台装置もなかなか立派なもの。

 今回の公演は二幕構成で行われた。
 アイゼンシュタインの家の場面が終わると幕が下りて、その前で『トリッチ・トラッチ・ポルカ』が歌われ、それが終わって幕が上がるとそこはオルロフスキー公爵邸。
 スムースなものです。

 パーティーのコンパニオンはバレリーナで(衣裳はチュチュって言うの?)、空いたグラスを受け取るとクルクル回って退場するのが面白かった。
 このバレリーナたちは歌も一緒に歌っていて、気持ちが良かった。

 そして、パーティーの途中で第一幕が終わる。
 まあここまでは普通の演出で、そつなくまとめたという感じだったんですが、第二幕になってからいろいろ面白くなりました。

 まずバレエ『春の声』が踊られます。
 僕はバレエは苦手だと思っていたんですが、この『春の声』(振付:松原扶佐子)は良かった。
 特にたった一人の男性バレリーナが実に格好いい。
 松岡伶子バレエ団の大寺資二という人なんですが、ファンになってしまおうかな。

 大寺資二さんは、4月〜5月に名古屋『中日劇場』で行われる『回転木馬』に、フェアグランドボーイとして出演されます。
 バレエシーンの振付はケネス・マクミラン。

 それから全員でポルカね。
 《チックタックポルカ》という曲だそうだが、最後はクルクル回って全員で倒れるのはオットー・シェンクの演出と一緒。
 その瞬間舞台は暗くなり、不気味な雰囲気が漂う。
 全員倒れたままの暗闇で、アイゼンシュタインとファルケによって《こうもり》の由来が語られる。
 そして明るくなったところに警官が登場して、アイゼンシュタインをかくまった(?)疑いで、男性が全員逮捕されてしまう。
 アイゼンシュタインとフランクは一足早く逃げる。

 そして幕が降り、降りた幕の前を男性軍が上手から下手に引き立てられて、幕が上がるとそこはもう監獄。

 アイゼンシュタインとフランク以外の男性全員が牢屋に入れられまして、フランク登場。
 彼は口笛を吹きながら手品を見せて、大いに受ける。

 アイゼンシュタインとフランクの、水を吹きかけあうシーンあり。
 ブリントのど○り癖は、ほとんど無しでした。

 そして、アイゼンシュタインの『私はアイゼンシュタインではない!』という場面でまた舞台は不気味に暗くなり、その中で彼は自分のアイデンティティを失ってしまい、『ここはどこ? 私は誰?』ということになってしまう。
 フロイド風か?
 ちょっと無理があるような気もするが、これくらいしないとアイゼンシュタインも反省しないのだろう。

 彼が反省したところで舞台は明るくなり、監獄のセットが左右に引っ込むと、そ
こはオルロフスキー公爵邸。
 で、華やかなフィナーレを迎える、というわけです。

 いやあ、楽しかったですよ。
 演出も良かったが、なんと言ってもやはり曲がいいですね。
 次から次へと美しいメロディーが出てくる。

 出演者ではAキャストのロザリンデ・飯田実千代さんと、Bキャストのアデーレ・長屋恵さんが気に入りました。
 全国に通用するんじゃないでしょうか。
 でも回りの批評を聞いていると、何人か上手じゃない人がいると公演全体の評価が下がってしまうようですね。
 
 2月16日(金)にもう一度、飯田さんのロザリンデが聴きたくて、仕事が終わってから行って来ました。
 丁度アイゼンシュタイン邸の最後の所だったんですが、舞台を見てあっ!とびっくり、Bキャストだった(^^;。
 でも楽しかったからいいんです。

 本日のフロッシュ、『あっちにいるのはカッパライ(囚人)、こっちにいるのがヨッパライ(自分のこと)』というところで『あっちにいるのはヨッパライ、こっちにいるのがカッパライ』なんて言っていました(^^)。

 Bキャストの方が面白いのはアイゼンシュタインのためじゃないでしょうか?
 Aキャストの井原さんは二枚目の枠を破れないけれど、Bキャストの澤脇さんはもうこれ以上失うものはないという感じで。。。
 フランクもBの方が。

 バレエの大寺資二さん、ス・テ・キ!
 緒方直人に似てますね。

 ところで、本日(17日)の朝日新聞夕刊に劇評が出ておりまして、『演技は総じて感情の起伏に欠けるし、リズムもテンポも眼中にない。これでは船をこいでいる客が少なくなかったのも無理はない』なんて書かれていましたが、この評には全く納得できない。

 16日の読売新聞の批評は好意的で、こちらの方が僕の感想に近い。
 『後半やや失速。もっと大胆にカットして短時間にしても良かったのではないか』と書かれているのは監獄のシーンのことだな。
 このフロッシュやフランクのシーンは、(クライバーのビデオでも)確かに失速気味だと思う。
 そこをジョークや手品で持たせているんだけれど、ここはカットしてはいけない場面なんでしょうか?

 しかしこの演出はいろいろ新しいアイディアがあって、これだからオペレッタやオペラは止められない! と思わせるものがある。
 常套的な演出では、もっと歌のレベルが気になって楽しめないかも。
 
 
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