チェコ国立ブルノ歌劇場オペラ 《トスカ》
1997年7月4日(金) 6:30PM 愛知県芸術劇場大ホール

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      チェコ国立ブルノ歌劇場オペラ 《トスカ》
 1997年7月4日(金) 6:30PM 愛知県芸術劇場大ホール
   指揮:ヤン・ズバビィテル  演出:ミロスラフ・フィシェル

      トスカ    :タマラ・クチェンコ
     カヴァラドッシ:ブルーノ・セバスティアン
     スカルピア  :リハルド・ハーン

 仕事で遅れて、会場に着いたときには『テ・デウム』が始まっていた。
 ロビーのモニターTVで見ていたら、抽象的な舞台に、スカルピアがただ一人映っている。
 おかしな演出なのではないか、と心配になる。

 さて、舞台はセミ抽象的というか、シンプルなんだが、スカルピアの部屋ということは良く分かり、何の不満もない。
 オケの音は素朴で小さかったが(5階最後列だからね (^_^;)、かえって、ソリストの声の邪魔にならなくていいかも。

 スカルピアのリハルド・ハーンは、ザルツブルグ音楽祭のヤナーチェック《死人の家から》のゴンチャロフを歌って絶賛を博したそうだが、ゴンチャロフって重要な役なの (^_^;?
 このスカルピアはスケールは小さいが、それなりにいい役作りをしていたと思う。

 トスカのタマラ・クチェンコは、ちょっと(大分?)声楽的に問題があった。
 『歌に生き恋に生き』は、楽しめなかったな。

 しかし、2人とも演技が上手。
 それに、この演出はメットのゼッフィレッリより、気に入った。
 オーストドックスなんだけれど、ハッと思わせる部分がある。

 例えばですね、『勝利だ!!』と叫んだカヴァラドッシが連れ去られたあと、トスカはネックレスやイヤリングをはずしている。
 どうするのかな? と思ってみていたら、彼女は『おいくら?』と聞きながら、その宝石をテーブルに投げるんだ。

 ナイフの場面でも、彼女はテーブルのナイフを床に落としてしまい、それを拾い上げる。
 そして、スカルピアの方に数歩歩いた所で、ナイフで刺し殺すことを思いつき、テーブルまで戻るわけだ。
 ナイフを落とすのって、スカルピアが反応しなかったので、ハプニングだったのかもしれません。

 で、彼女はそのナイフを後ろ手に持って、客席を背にして、奥のスカルピアに向き合う。
 つまり、スカルピア以外は、彼女がナイフを持っていることを知っているわけだ。
 また、このナイフが長くて目立って、ちょっと、ゾクゾクしたな (^_^) 。

 刺し殺したあと、ロウソクは置いたけれど、十字架は置かなかったんじゃないかな?

 第3幕は作品の出来が良くないと思っているので、あまり書くことはないんだが、『星も光ぬ』に拍手があったことは報告しておこう。
 ただし、音楽は止まらなかった。

 カヴァラドッシのブルーノ・セバスティアンは、メットでこの役を歌ったこともあり、藤原歌劇団にも客演したことがあるそうだが、これくらい歌ってくれれば、特に不満もない。

 ということで、トスカに不満はあったものの、終わったあとの気持ちは満足です。
 いいオペラを見せていただいた、と感謝しています。
 
 
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