スーパー一座公演 シェイクスピア《リチャード三世》
1997年10月5日(日) 名古屋市芸術創造センター

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 僕は演劇って見たことがほとんど無くて、特にシェークスピアなんて懼れ多くて、全く敬遠しておりました。
 劇団四季《ハムレット》のTV放映も、(せっかく山口祐一郎さんがハムレットを演じていたのに)退屈で退屈で10分でスイッチを切ってしまいました。

 そんな僕が、それほど退屈もせずに最後まで見ることが出来たので、この公演は良かったんじゃないでしょうか (^_^;。
 あまり後味は良くないんですが、主人公が主人公だから‥‥ (^_^;。

  スーパー一座公演  シェイクスピア《リチャード三世》
  1997年10月5日(日) 名古屋市芸術創造センター

     演出:岩田 信一  音楽:宮脇 泰
  リチャード                 :原 智彦(座長)
  エドワード四世王(リチャードの兄)  :渡辺 健
  エリザベス(エドワード四世王の妃) :吉野 貴子
  クラレンス(リチャードの兄)      :間瀬 礼章
  エドワード王子(エドワード王の長男):木村 亮太(こども劇団たんぽぽ)
  ヨーク公(エドワード王子の弟)    :木村 文彦(こども劇団たんぽぽ)
  ヘンリー六世王             :長船 孝雄
  マーガレット(ヘンリー六世王の妃) :柴田 しのぶ
  エドワード皇太子(ヘンリー六世王の皇太子・もう殺されている)
  アン   (エドワード皇太子の妃)  :桂 元枝

 会場の芸創センター、1階は満席、2階はガラガラ。

 舞台上手の塔に音楽隊(7人)。
 下手にロンドン塔。
 これに紗幕が使ってあって、普段は城壁なんだが、塔内部の照明が明るくなると、中にいる人が浮かび上がってくる。

 さて、この史劇は僕の見るところ『イギリス版・平清盛物語』ですね。
 シェークスピアには、これに先行して《ヘンリー六世》他 があるとか。

 以下の文章は、プログラムと『ロンドン塔』(出口保夫・中公新書)を参考書として書きます。
 これしか資料が無い (^_^;。

 15世紀中頃のイングランド、バラ戦争の時代。
 赤バラのランカスター家と、白バラのヨーク家は30年に渡り、王位をめぐって争った。
 
 さて物語ですが、捕らわれたヘンリー六世王はロンドン塔で刺客に殺される。
 で、ヨーク家のエドワード四世が王座につく。
 しかし、彼は41才で若死してしまう。
 その弟、みにくい奇形のグロースター公リチャードは、兄のクラレンスや正当の王子を殺し王位につく。
 しかし、リッチモンド伯ヘンリーとのボズワースの戦いに敗死する。
 これによりバラ戦争は集結し、ヘンリーがヘンリー七世としてチューダー朝を開く。
 リチャードが王位にあったのは約2年。

 チューダー朝の時代に書かれたとはいえ、このリチャード三世っていう人、ひどい人だよ。
 殺したエドワード皇太子の妃・アンをむりやり妻にした上に、あとで殺してしまう。
 兄のクラレンス、リヴァース(エドワード王妃エリザベスの弟)、侍従長ヘースチングス、腹心バッキンガム公と、次から次へと殺してしまう。
 その中でも、特に悪名高いのはエドワード四世の二人の王子殺しだろう。

 この二人の王子が可愛いの。
 史実では、エドワード五世は13才、弟のヨーク公は10才だというが、演じたのはもっともっと小さい子供。
 この子が健気でさ、『良い王になり、民衆を幸せにしなくては』なんてセリフを聞くと、気の毒で気の毒で泣けてしまう。
 で、騙されてロンドン塔に連れて行かれちゃうのね (i_i)。

 この二人の王子を描いたドラローシュの『塔の二人の王子』という絵が有名で、夏目漱石の『倫敦塔』に影響を与えているんだそうだ。
 また、191年後の1674年には、二人の少年の遺骨が、ロンドン塔の修復工事現場から見つかっているんだそうだ。

 演出は簡素にして正統的なものだが、役者の力量もあるんだろう、長いセリフを飽きさせない。
 宮脇 泰(大須オペラの指揮者)作曲の音楽も出番が多く、効果的だった。
 
 
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