名古屋オペラ協会 《琵琶白菊物語》
1997年11月8日(土)2:00PM アートピアホール

「REVIEW97」に戻る  ホームページへ
 
 
 オペラ集中鑑賞の月、11月になりました。
 全部で8演目かな?
 その第一弾は名古屋オペラ協会創立15周年記念公演の委嘱作品《琵琶白菊物語》です。

      名古屋オペラ協会 《琵琶白菊物語》
   1997年11月8日(土)2:00PM アートピアホール

 作曲・指揮:川島 博  台本:森 治美  演出:西川 好美
 名古屋楽友協会管弦楽団   名古屋オペラ合唱団  琵琶:北川 鶴昇

  槐(かい/尾張の国・井戸田の村長の娘):藤本 圭子
藤原師長(もろなが/太政大臣・琵琶の名手):鏑木 勇樹
               小夜(遊女):出田 光代
  清蔵(村の青年・塊のことを想っている):櫻井 重仁
            忠良(師長の家臣):澤脇 達晴
              宗覚坊(住職):川口  豊

 太政大臣にして琵琶の名手藤原師長は平清盛によって、尾張の国・井戸田(名古屋市瑞穂区)に流される。
 彼は出家し理覚(りかく)と名乗り、遊女と遊んだりしているんだが、世話役となった槐と恋に落ちる。
 彼は琵琶演奏の力により、日照りに雨を降らせ、雨大臣と呼ばれる。
 で、槐と師長の愛の二重唱で第一幕は終わる。

 作曲・指揮の川島さんは東京芸術大学作曲家卒業で、愛知教育大学名誉教授というからかなりの年配。
 曲は現代のオペラにしては聴きやすい。
 ただ、オーケストラが美しいメロディーを演奏して、歌手は語るように歌う場面が多かったのは残念だった。
 歌手にもう少し声量があれば、もっと感銘深かったのではないだろうか。

 演出の西川さんは西川流日本舞踊の出身、演出の仕事もしているんだそうだ。
 シンプルだが具象的な舞台をスムーズに転換している印象。
 衣装は実に立派。

 さてこのオペラ、第二幕の方が面白かった。
 平清盛は大病となり、都から師長に帰るよう使者がやってくる。
 彼は槐と藤原家との間に立って悩む。
 しかし父の亡霊も現れ、やはり家のために都に帰ることになる。
 で、自分の分身として琵琶の白菊を槐に残す。

 第二幕第三場は三瀬川(庄内川)の土提。
 紗幕の向こうの暗闇に灯りを持った女声コーラス(灯りが浮かんで見え、なかなか幻想的)。
 その中を、琵琶白菊を持ち師長の後を追う槐が現れる。
 暗い舞台の中で、槐にだけ照明が当たっている。

 この部分は、いわば長大な狂乱の場なんだが、音楽も演出も印象的。
 例によって、オケと女声コーラスにメロディーがあるんだが、師長を想い錯乱していく槐の歌には心を打たれた。
 で、彼女は川に身を投げる。

 エピローグは熱田の森で琵琶を弾じ、槐の魂を呼び出す師長。
 そこへ現れた槐の霊は『私は幸せでした』と歌う。

 こんなところでしょうか。
 師長に捨てられて、自殺までしながら『幸せでした』とは、ちょっと女性には引っかかりがあるんじゃないかな? とは思いましたね。
 脚本家は女性なんだけれど‥‥。

 名古屋の北西、庄内川に面して枇杷島という地名があります。
 僕は今まで、果物のビワの産地かと思っていたんですが、今回初めてその由来を知った次第です (^_^;。
 
 
「REVIEW97」に戻る  ホームページへ