ベルリン国立歌劇場 《ワルキューレ》
1997年11月9日(日)2:00PM NHKホール

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 ワルキューレ/

 NHKホールに入るのは何年ぶりだろうか?
 開幕前入り口付近が厳重警戒ぎみ。皇太子殿下ご夫妻がお見えになるそうだ。
 それでは、ということで僕も階段から雅子妃殿下を拝見してしまった。
 さすが東京。これだけでも来た甲斐があると素直に喜んでおこう (^_^) 。
 広いNHKホールもほぼ満席状態(当日券はあるようだったが)。

  ベルリン国立歌劇場 《ワルキューレ》
 1997年11月9日(日)2:00PM NHKホール

   指揮:ダニエル・バレンボイム
   演出:ハリー・クプファー

   ジークムント:ポール・エルミング
   フンディング:ルネ・パーペ
    ヴォータン:ファルク・シュトルックマン
   ジークリンデ:ワルトラウト・マイアー
  ブリュンヒルデ:デボラ・ポラスキ
     フリッカ:ローズマリー・ラング

 歌手はみんな良かった。
 特に、ジークリンデとヴォータン。

 メトロポリタン名古屋公演《カルメン》の後でマイアーのサインを貰いにいったとき、『次は貴女のワグナーが聞きたい』と言ってみたところ、『11月に東京で歌うから来てね』、と誘われてしまった 。
 だから来た‥‥というわけではないんだが (^_^)。
 カルメンとは大違いで、言うことがないんじゃないだろうか。
 小柄な身体から、強靭な声が3階席までビンビン飛んでくる。

 ヴォータンのシュトルックマンという人は名前も知らなくて、期待していなかったんだが、無理なく朗々と響く声で、すっかり感心してしまった。
 当然、最後の『わが槍の穂先を懼れるものは、この炎を決して越えるな!』なんか、その迫力にしびれました。

 ジークムントのフレミングも良かったんだが、疲れたのであろうか、第一幕最後の『花嫁にして妹』の部分の声が、オケに隠れてしまったのは残念だった。
 フンディング、フリッカとも豊かな声量で良かったんだが、ポラスキの発声には少し違和感があったかな?

 演出は気に入らなかった。
 さすが!と思う場面がなく、納得できない場面が多かった。

 舞台は周囲を格子にはめられたガラスで囲まれている。
 第一幕は頭に杭を刺されたワニのような物体がおかれているんだが、これがトネリコの木。
 第二、第三幕では、特に舞台装置らしいものはなかったと思う。

 一幕のジークムントとジークリンデの双子の兄妹の二重唱は大好き。
 その中間部で、急に部屋の扉がバタンと開く。
 『誰かが出ていったのか、入ってきたのか?』と尋ねるジークリンデに、ジークムントは『誰も出ていかない。入ってきたものはある。春だ。春が部屋の中で微笑んでいる』と答え、春の宵の愛の二重唱となる。

 ここはワーグナーのオペラでも最高の場面のひとつだと思うんだが、舞台はガラスの後ろが明るくなるだけ。
 これなら、二期会公演の、開いた扉から月の光が差し込む演出のほうがずっと好きだな。

 しかし第一幕はまだ良かった。納得できないことが多かったのは第二幕から。

 例えば、 第二幕の『死の予告』では、ブリュンヒルデはジークムントの顔におしろいをぺたぺた塗る。
 そうすると僕なんか、『あれでは歌いにくいんじゃないか?』『カーテンコールはこのままの顔で出て来るんだろうか?』とかいろいろ考えてしまって、音楽に集中できなくなる。

 もう一つの例として、第3幕の父娘の二重唱のクライマックス直前、二人は膝立ちして手をつないでいる。
 で、音楽が最高に盛り上がったときにどうすると思う?
 二人でばたりと、前方に倒れるんだよ (@o@)!
 あまりのことに唖然としてしまった。
 これではバレンボイムの指揮がどうこういう前に、演出に邪魔されて、ワーグナーの音楽も楽も楽しめない。

 最後のブリュンヒルデを火に包む場面だって、予想通りガラスの後ろが赤くなるの。
 煙は出たけれどさ。
 格子にはめたネオンがピカピカするのが、かえって安っぽい印象だった。

 クプファーのオペラを見るのは《タンホイザー》に続き2作目なんですが、どちらも私にはも気に入りませんでした。
 彼の演出で気に入ったのはウィーンミュージカル《エリーザベト》だけ。

 苦手なタイプなんでしょうか?
 まあ、来年のベルリン・コミッシュ・オパーの2演目を見てから判断することにしましょう。

 カーテンコールの最後にオーケストラ全員が舞台に上がり、挨拶したのにはびっくりしました。
 ベルリンではいつもこのようにしているのだろうか?
 ピットから出るのが早いな、とは思ったんですよ。
 
 
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