グリーン・エコー 《火刑台上のジャンヌ・ダルク》
1997年11月30日(日)愛知県芸術劇場大ホール

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  グリーン・エコー第42回定期演奏会 《火刑台上のジャンヌ・ダルク》
      ポール・クローデル詞 / アルトゥール・オネゲル曲
      1997年11月30日(日)愛知県芸術劇場大ホール

            指揮:井上 道義
            演出:実相寺 昭雄
     ジャンヌ・ダルク:高橋 紀恵
           ドミニク:夏八木 勲

 え〜、書きにくいんですが‥‥ (^_^;
 途中で、隣のおばさん二人が突然、大きな声で話しはじめたんです (@o@)。
 『なあにこれ? なにうたっとるかも、なにやっとるかも、わっかれへんがね!』ってね (^_^;。

 そもそもこの作品自体が、オペラ化するのが難しいんじゃないでしょうか?
 というより、本日のような演出しかできないのなら、演奏会形式でも同じことで、その方が安上がりでしょう。
 舞台を上げ下げしておりましたが、あまり有効とは思われませんでした。
 火刑の場面では紙吹雪が降ってくるし‥‥どういう意味があるの?

 コーラスに関して言えば、場所だけ指定されて、あとは放置されて戸惑ってウロウロしている、という印象ですね。
 演出家は、特にプロの演出家がアマチュアの演出をするなら、きちんとコーラスに目指す道を指し示すべきだと思います。
 舞台の隅々にまで気配りの行き届いた演出が、僕は好きですね。

 ジャンヌはですね、白い服に白いズボンで、髪は黒いし、あまりジャンヌに見えませんでした。
 子供時代の聖徳太子に見えてね (^_^;。
 ドミニクは自分のセリフが終わるとすぐ引っ込んじゃうし‥‥。
 役作りとしては、威厳があるというより、優しいドミニクでしたね。

 井上さんの音楽は印象に残っておりません (^_^;。
 原田節さん演奏するところのオンド・マルトノの音色は、興味深かった。

 いろいろ演出の不満を書きましたが、このような滅多に聞くことができない作品に挑戦していただいたグリーン・エコーには感謝しております。
 プログラムに『膨大な資金作りに直面して』とかかれていましたが、さぞ大変なことだったでしょう(まだ過去形じゃないのかな?)。
 これからも、今までどおりグリーン・エコーならではの意欲的な作品に挑戦していただきたいと思っています。

◇ジャンヌの予習(1)

 《火刑台上のジャンヌ・ダルク》があまりにも難解なので、予習をしてみました。
 半分は自分のためのメモだから、読みにくいとは思いますが、この作品を御覧になる方の参考に、少しはなるでしょうか。

 この作品についてまず混乱するのは、時間の問題でしょう。
 『昔、ジャンヌという乙女がいた』というのが修道士ドミニクの第一声だから、物語はすでに死んでしまったジャンヌが過去を回想する形で語られているのではないかと考えられます。

 しかし、それから物語はリアルタイムの時間通りに進行する。
 で、現在進行形かと思っていると、途中でジャンヌが火刑の火を思い出す場面があって、やはり過去のことと考えられたり‥‥。
 結局、台本がいい加減なんじゃないか (^_^; ?

 ではジャンヌの一生を、このオペラと合わせてたどってみよう。
  参考書は『ジャンヌ・ダルク/超異端の聖女』竹下節子(講談社現代新書)と『ジャンヌ・ダルクの百年戦争』堀越孝一(清水新書)。
  ジャンヌ・ダルクについては、王太子シャルルによるポアティエの審問(1429年)、彼女を火刑としたルーアンの異端審問(1431年)、死後25年を経た復権裁判(1456年)などの記録が残されているので、かなり詳しいことまで分かっているようだ。

 ジャンヌ・ダルクは1412年頃東フランス、ロレーヌ地方の小村ドンレミ村に、農家の娘として生まれた。
 当時のフランスは百年戦争の時代で、混乱し過ぎていて良く理解出来ないんだが、フランス王、イギリス王、ブルゴーニュ候の間で争いが続いていたようだ。
 幼いイギリス王(ヘンリー6世)の摂政がベドフォード候で、彼はトランプ遊戯の場面に出てくる。

 13歳の夏の正午、ジャンヌは神の声を聞いた。
 それから彼女が聞くようになる声は、大天使ミカエラ、聖マルグリット、そして聖カトリーヌ。
 聖マルグリットと聖カトリーヌはこのオペラに登場する。

 僕はキリスト教(特にカトリック)の知識がないものだから、この3人がどういう意味を持つのかが、さっぱり分からない。
 ヨーロッパの人には聖人伝説でお馴染みのメンバーなんだろうが。
 一応調べたところでは下記の通り(ただし、自信なし (^_^;)。

 大天使ミカエルは甲冑に身を固め、『神の剣』を持って、天使の軍団を率いる。
 これはジャンヌのイメージそのものではないか。
 《トスカ》で有名な聖天使城に建っているのが大天使ミカエル像。
 武器や騎士の守護聖人になっている。
 
 聖マルグリットはアンチオキアの貴族の娘で、美人。
 15才(?)で殉教。
 火にあぶられたり、水に漬けられたりして、最後は首をはねらた。
 安産の聖人になっているらしい。

 聖カトリーヌはキリスト教初期の殉教処女で、彼女の名においてなされる祈願は全て神がかなえるという言い伝えがあって、中世には大人気だった。
 ジャンヌは聖カトリーヌの指示によって、ある祭壇から古い剣を見つけたという。
 この剣のエピソードは、このオペラに出てくる。

 やがてこの声は、彼女に『フランスに行き(当時ドンレミ村はフランス外だったらしい)、イギリス軍を追い出し、王太子シャルルをランス戴冠させることが彼女の使命だ』と告げる。
 17才のジャンヌはその指示に従い、1429年2月25日シノンで王太子シャルルに面会し、まあ審問とかいろいろあったんだが、やがてフランス軍を率いて、5月8日オルレアンの町を開放する。
 そしてランスへと進軍し、1429年7月17日、シャルルを国王として戴冠させる。
 これがシャルル7世で、この頃がジャンヌの絶頂期。
 このランス大司教が、トランプ遊戯の場面に出てくる、ルニョー・ド・シャルトル。

 ランスで戴冠したシャルル7世は、ハト派の講和路線に転換する。
 『ランスで王を戴冠させよ』という神の声を短期間(5ヶ月 (@o@))で達成したものの、ジャンヌには神の声が聞こえなくなる。
 1429年9月8日に始まったパリ攻撃も失敗し、これを機会に王は軍隊を解散した。

 ジャンヌは王の後援も無いまま戦い続けた。
 聖マルグリットと聖カトリーヌから『聖ヨハネの日までに、彼女は捕らえられるであろう』との不吉な予言を聞く。
 1430年5月、ジャンヌはコンピェーニュの防衛戦に参加する。
 コンピェーニュの守備隊長がギョーム・ド・フラヴィで、トランプ遊戯の場面に出てくる一人。

 5月22日の戦闘で、ジャンヌは捕らえられ、ブルゴーニュ派のジャン・ド・リュクサンブールの捕虜となった。
 このジャン・ド・リュクサンブールもトランプ遊戯の場面に出てくる一人。
 これでトランプ遊戯の4人が揃ったな (^_^) 。

 この時代には、戦争捕虜を処刑するという習慣は無かったようだ。
 人質交換するか、身代金と引き替えるか。
 ハト派のシャルル7世は、過激派のジャンヌのために身代金を出す気はなかったらしい。

 ここで出てくるのが、ブルゴーニュ派のボーヴェ司教・コーション。
 彼の仲介で、イギリスはジャンヌを10000フランで買うことになる。
 そして彼女は、フランスにおけるイギリス軍の本拠地、ルーアンに送られ、宗教裁判が開かれる。
 この裁判長になったのがコーションで、オペラでは『豚(フランス語でコションと言うらしい)』として登場する。

 前にも書いたが、この時代には、戦争捕虜を処刑するという習慣は無かったようだ。
 だからジャンヌを処刑するためには、宗教裁判で異端とする事が必要だったらしい。
 また、彼女を異端とすることで、シャルル7世の即位の正当性を失墜させる意味もあったであろう。

 彼女は牢獄で鎖につながれ、5人のイギリス兵が見張りとなった。
 宗教裁判で裁かれるものが世俗の牢獄に入れられ、男性が女囚の番人をすることは違法であった。
 ジャンヌは異議を唱えたが無視され、このことが、やがて、彼女の命取りとなる。

 宗教裁判は1931年2月21日から公開審問6回、3月10日以降は獄中で8回の審問が行われた。
 5月24日、ジャンヌは『火刑か改悛の署名か』の選択を迫られ、屈服する。
 その条件は、二度と武器を手にせぬ事、二度と男装をしないこと等々。

 ところが牢獄に戻され、女装になった彼女はイギリス兵から強姦されそうになり、身を護るために再び男装した。
 そのために『戻り異端(オペラにも出てくる)』として、火刑に処せられることになった。
 ジャンヌはコーションを『教会の牢に入れてくれれば、この様なことにはならなかった』と糾弾した。

 1431年5月30日に、彼女は火刑に処せられた。 19歳。
 ジャンヌ処刑の朝、ジャンヌの告解を受け、処刑にも立ち会ったのは2人のドメニコ会修道士。
 彼らが修道士ドミニクのモデルになったのか?

 1455年、フランスを統一したシャルル7世により復権裁判が行われた。
 1456年、ローマ法王はルーアンでの異端裁判の無効を宣言し、ジャンヌ・ダルクは、死後25年して、名誉を回復した。
 そして、第一次世界大戦後の1920年、ジャンヌは聖女に列せられた。


みっきいさん、どーもKYO-KOです。
とーっても遅くなりましたが・・・

>>《ジャンヌ》は難解だ

タイトルに付けちゃいます。そうです。難解です(^_^;)。
で、今回はチケットを買って下さった方に「あらすじ」を付ける、という手を
うちの団は使ったんですよー。でも何が何を表していうのかまでは分からないですよ
ね。

まず話は、火あぶりにされていくジャンヌの回想を時間を順に遡っていき
最後にジャンヌにとってのリアルタイムになる、という構成になっています。(大体)

>> そもそも、ドミニク修道士とはいったい何者なのか?
>> 彼はジャンヌの生涯に関わりを持った人なのだろうか?

彼は架空の人物です。文盲のジャンヌに文字を獄中で教えた修道士がドミニクだった、
とか、ジャンヌの最後の数時間を付き添っていたドミニコ会の修道士がモデルとなって
いるという話がありますが、彼女の生涯に何らかの関わりがあった訳ではありません。

>> カトリーヌとマルグリットという天使(?)が現れるが、彼女たちとジャ
>>ンヌの関係は?
>> 彼女たちがジャンヌにフランスを救うように告げたのか?

ジャンヌの故郷ドンレミーで彼女が聞いた神のお告げです。

>> 動物が裁判をするという話はまだ分かるが、カルタ遊びとはいったい何を
>>象徴しているのか?

カルタ遊び、これはわかんないですよねえ(^_^;)。
実はこの裁判は表向き、ジャンヌは魔女だとみなす宗教裁判なのですが、
本当はそれを口実にした政治的裁判だったのです。
これを説明するのはちょっと難しい、いや長くなる・・・(^_^;)
その政治的な醜い争いを戯画的に表しているのですが。

同じ様に、その後出てくる、「風車おじさん」と「酒樽おばさん」これも二つに引き裂かれていたフランスが一つになったということを北の穀物(風車)と南のワイン(酒樽)によって表しています。

上記以外でも、野獣の裁判シーンとか、ジャンヌの台詞「蝋燭になる」など本当に例え、とか象徴的に、とかが多い台本です。

しかしね、新聞のインタビューで「高橋ジャンヌ」が言っているのだが、「ジャンヌを普通の女の子として・・・」
思春期と、思春期過ぎた女の子では全然違うと思うのだがねえ。
だってほら、思春期過ぎると今までみえてた物がパタッと見えなくなったりするし、今思うと、あの時なんでこんな思いこみしてたんだろう、とか思うことあるし。
私には何でも出来ると思ってるし。
ジャンヌは死ぬまで思春期を卒業してなかったんだと私は思うんですよね。
 
 
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