《アスペクツ・オブ・ラブ》 原作を読む

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 僕は《アスペクツ・オブ・ラブ》がすっかり気に入ってしまいました。
 その複雑な人間関係を理解するため、絶版となっている《アスペクツ・オブ・ラブ》の原作(デイヴィッド・ガーネット/訳:橋本福夫)を、図書館から借りて来ました。
 もちろん原作とミュージカルは別物でしょうが、いろいろ参考になる面もありましたし、意外な相違に驚いた部分もありました。。
 僕の興味のあった部分をまとめてみましたが(すぐ忘れちゃうから (^^ゞ )、長いよ、本一冊分だから (^_^) 。

◇ 第一部

 アレックスは原作ではアレクシスとなっている。
 名前はアレクサンダー・ゴライトリー。
 僕の一番の興味は、彼の年齢なんだが、これが書かれていない。
 そもそも物語が何年の出来事なのかも書かれていない。
 ローズから見て『17歳そこそことしか見えない』とは書かれているけれど。
 母親(ミリー)は5年前に死んで、母の兄であるジョージが後見人。

 ローズ・ヴィベールは貧乏女優でアルビ公演までのホテル代が無かったので、アレクシスの提案は渡りに船だった面もある。
 イプセン劇は『スースネル建築士』『人形の家』『ヘッダ・ガーブラー』。
 ローズも年齢不詳(最後に分かる)。

 ミュージカルの夜行列車シーンで互いに肩に頭をもたせかけるのはわざとらしいと思ったが、原作にもそのように書かれているのね (@o@)。
 列車がポーに着くのは朝の5時。

 ジョージ・ディリンガム卿はバロネット(准男爵)。
 ポーの別荘の名前は『蔓日日草館(つるにちにちそうかん)』。
 この頃、ジョージはジュリエッタ・トラパーニ侯爵夫人に初めて逢ったばかり。

 白糸、銀糸を撚り合わせたきらびやかなラメ織りのイブニングドレスを着たローズは、40年前のディーリア(ジョージの妻)に似ていないことはなかった。
 ディーリアはジョージと逢ったときは、すでに人妻。
 ディーリアまで複数の男性と関係があったのか (@o@) !
 彼女が死んだのは1940年(今が何年なのかが分からない (^_^;)。

 ローズは予定より3日早く、ポーを去った。

◇ 第二部

 二年後、アレクシスはパラシュート大隊の大尉となって、マレー半島から帰還。
 ローズは有名女優になりつつある。
 ジョージは64歳(ということは第一部では62歳か。ミュージカルでは58歳だったね)。
 エリザベスは年寄り。
 アレクシスは4〜5日ジョージの部屋でローズと暮らし、ロンドンへ発った。

 そして、彼は数週後にロンドンから戻り、ローズを銃撃することになる。
 絵はマチスではなく、ベルト・モリゾ(って知らないな (^_^;)。

◇ 第三部

 パリを発ったジョージがスイスやドロミテをドライブしながら、四日後にヴェネチアのホテルに到着したとき、ローズはもうホテルに着いていて、大騒ぎとなっていた。

 ジュリエッタ・トラパーニ侯爵夫人は彫刻家ではなく、アメリカの雑誌に寄稿して多少の収入を得ているが貧乏。
 夫のオルランドーは、新婚旅行中に交通事故で死亡。
 彼女には若い恋人がいる (@o@)。
 僕はジョージに執着しないジュリエッタの気持ちが良く理解できなかったんだが、彼女にも恋人がいるということなら納得できるね (^_^) 。

 ローズがジョージに求婚するのは10月(これまでの時間経過は書かれていないのに突然10月といわれてもね (^_^;)、ベルガモの広場でコーヒーを飲んでいたとき。
 彼らは数週後、ジェノヴァで結婚式。
 ジュリエッタは恋人(蒼白い青年詩人)を連れて (@o@)、結婚式に出席した。
 
 そして『つわり』。
 彼らは男の子を望んでいた(名前はベルガモットに決めていた)。
 二人の結婚はザ・タイムズで告知され、アレクシスからの祝福の手紙が届く。
 彼は軍隊に戻り、ドイツに配属される。

 この頃、ローズとジョージは葡萄畑を購入した。
 場所はシノンの近くで、《ガルガンチュア物語》を書いたラブレーの生地 ラ・ドヴィニエールに近く、彼の生家を見下ろす丘。
 この葡萄畑からは良質の赤ワインが取れ、そのため値段は高かった。
 この高価な葡萄畑を購入するため、ポーの別荘や絵画2点が売却された。
 彼らはその住まいを『ラ・グーランジュ(納屋)』と呼んだ。
 ありゃりゃ、原作ではポーの別荘と葡萄畑は全く別の場所なんですね (@o@)。

 ローズはこの村で出産。
 生まれたのが女の子だったので彼らは失望。
 女の子では准伯爵の称号を継げないから。
 赤ん坊はジャンヌと名付けられたが、すぐジェニーと呼ばれるようになった。
 ジェニーの出生はザ・タイムズ紙に告知され、アレクシスから祝福の手紙が届いた。

 ジョージは融資した旧友が破産したため、一文無しになってしまう。
(ミュージカルではプロポーズ直前で、唐突な感じがした)。

 一方、ローズは映画に出演して大成功をおさめ、舞台でも大成功。
 こうして、別れ別れの暮らしが二人の生活様式となった。
 ローズは大金持ちとなり、若い男と奔放な関係を繰り広げるようになる。

◇ 第四部

 ジェニーが生まれて10年が経った(ミュージカルでは12歳)。
 30歳になったアレクシス(ジェニーとは20歳違いということになるらしい)は順調に昇進を重ね、6年間のアフリカ暮らしを終え、陸軍中佐としてパリに赴任した。
 彼がパリに着いた翌日は、ローズが主演するツルゲーネフ《村の一ヶ月》の最終日であった。
 ローズとの再会、そしてシノンの別荘『ラ・グーランジュ』でアレクシスとジェニーの間で人魚姫の会話。

 それから三年後。 だからジェニーは13歳。
 ローズはパリで舞台に出演し、彼女にはヴァンサンという20歳の愛人がいる。
 アレクシスはパリ暮らし。
 彼はジェニーがパリの学校に転校するよう、両親を説得する。

 ここでジェニーが、白糸、銀糸を撚り合わせたきらびやかなラメ織りの、例のイブニングドレスを着て登場。
 アレクシスとローズはジョージの心臓を心配する。
 しかしジョージは少し老人ボケになっていて (@o@)、事態を認識できない。
 ジェニーと最初にダンスを踊るのは、なんと (@o@)! アレクシス。
 そしてなんと! ジョージは踊らないの (@o@)!

 クリスマスの頃、ジョージとジェニーはパリに移る。
 ローズは同じ建物でヴァンサンと暮らし、ジョージは余った部屋を使うことになった。
 アレクシスは週に2〜3回、ジェニーに逢いに来る。

 春が来て、夏が来て、10月となった。
 ということは、アレクシス34歳、ジェニー14歳ですね。
 皆でサーカスに出かけるエピソード。
 その夜、アレクシスがジェニーと約束のお休みのキスをするために忍び込んだ所をジョージに見つかってしまう。
 アレクシスを乗せたエレベーターが動き出し、ジョージが階段を追う。
 その途中でジョージは死んでしまう。
 葬儀は3日後。

◇ 第五部

 ジョージは自分の葬儀について、面白がって細かい指示を出していた。
 遺体は一人の友人の出席もなく、ペール・ラシェーズ墓地で荼毘に付された。
 ジョージの指示によれば、遺骨は葡萄園にまき散らされ、ワインと音楽付きのダンスパーティが開かれる段取りになっていた。
 この葬儀にはVIPを含む多くの参列者があり、道は人波で溢れた。
 ここで、アレクシスとジュリエッタが、初めて出会う。

 そして、ジュリエッタの英語による追悼の演説。
 これについては少し詳しく書いておきたい。

 『HAND ME THE WINE AND THE DICE』という、葬儀の場でのコーラスの(そして、最後のジュリエッタの)歌詞について、この歌詞がどこから来たのかは、長い間僕の悩みの種だったが、やっと分かった\(^o^)/。
 これはジュリエッタの追悼演説の中に引用されるジョージの詩に出てくるフレーズ。
 ジョージの詩はラテン語で書かれていて、『酒とサイコロをそなえて、明日のことなど思いわずらうな』。

 ローズはジョージの遺骨を白目細工の柄杓で撒く。
 フルート(ピッコロ持ち替え)、バイオリン、ビオラ、オーボエ、バスーンの五人組による音楽。
 アレクシスとジュリエッタは最初に踊り出す。
 その後、アレクシスはジェニーとも踊る (@o@)。

 夕食後ジェニーはぐっすり眠り込んでしまう。
 アレクシスとジュリエッタは牛小屋へ。
 なんという早さ (@o@)! 陸軍中佐と侯爵夫人なのに (@o@)!
 『明日も、あさっても、永久に私のそばにいるのよ』というジュリエッタのプロポーズ(?)。
 アレクシスの観察『ジュリエッタは40近い女と見て取れた、自分より二つ三つ年上だろうか』。

 僕の計算では、アレクシスは34歳。 ミュージカルでも34歳だね (^_^) 。
 ということは、ジュリエッタは37歳?
 アレクシスと3歳違いということは、ミュージカル最初に出てくる場面では、20歳かな (@_@)?

 原作では、この場面でやっとローズの年齢が判明。 40歳と書かれている。
 ということはアレクシスとは6歳違い。
 ということは、最初の場面では23歳か。
 ミュージカルでは25歳だったね (^_^) 。

 もう一回まとめておくと、物語の最後で、アレクシス34歳、ローズ40歳、ジェニー14歳、ジュリエッタ37歳、ジョージは79歳かな?
 最初の場面は、この17年前だね(ミュージカルと違って、計算は合っているようだ (^_^) )。

 ジェニーは女中のガブリエルから『アレクシスとジュリエッタが乾燥納屋から出てきた』と聞き、そこで二人が愛撫しあったあとを見つけた(何だ、そりゃ (@_@)?)。
 ジェニー『私を愛して』 アレクシス『君はまだ子供だ』 という会話。
 『私が4年間あなたのことを待っていたら結婚してくれる?』

 最後の場面はレストラン『サン・ディジェ』での、アレクシスとジュリエッタの夕食。
 『恋はめぐるの (^_^) 』みたいな会話があって、ジュリエッタは空のグラスを差し出して『Pone merum et talus. Peeat qui crastina curat.』と言った。
 ついで、アレクシスがわけの解からなそうな顔をしているのを見て取ると、そのラテン語を英語で繰り返した。
 『酒とサイコロをそなえて、明日のことなど思いわずらうな』。
 これは、前に書いたジョージのラテン語詩のフレーズだね。

 最後に書いておきたいのは、ローズの『行かないで!』は全く影も形も無いこと (@o@) (@o@)!
 ローズがそんな女々しいことを言うわけがないと思っていましたよ。
 どうせアレックスは自分とジェニーの元に戻ってくるんですから。
 
 
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