関西二期会《ナクソス島のアリアドネ》
1998年10月11日(日)2:00PM 尼崎アルカイックホール

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 前にも何回か書いたことがありますが、僕は《ナクソス島のアリアドネ》を一度見たことがありまして、時は1980年8月19日、ところはザルツブルグ音楽祭小ホール。
 別にこのオペラに興味があったわけではなく、たまたまツアーの日程がぶつかってしまっただけなんですが。
 ところが、これは我が人生最高のオペラ体験となりました。

 指揮はカール・ベーム、ツェルビネッタは当時売り出し中のグルベローヴァ。
 しかし、僕が何より衝撃を受けたのはディーター・ドルンの演出でした。

 このオペラ《ナクソソ島のアリアドネ》はウィーンの富豪の館でオペラ《ナクソス島のアリアドネ》を上演するというオペラで(なんのこっちゃ (^_^;?)、その上演までのドタバタを扱った『序幕』が付いています。
 ドルンの演出、『序幕』は広間となりの小部屋。
 で、ボーイが出入りする度に開くドアから広間でワルツを踊る人たちが見える。

 休憩後の『オペラ』になるとシューボックススタイルで豪華な内装の小ホールが、舞台まで含め一つの部屋になってしまっている。
 そして『序幕』でドアのすき間から見えたワルツを踊っていた人々は、『オペラ』では会場に座る我々なんですから、このアイディアには驚いてしまいます。
 で、役者は奥の扉(そこに小部屋があるんですから)から出入りする。
 何書いてるか分からないでしょう (^_^;?

 ベームはこの演出が大のお気に入りだったそうですが、この年が彼のザルツブルグ最後のシーズンとなりました。
 後を引き継いだのがサヴァリッシュ。
 彼はバイエルン国立歌劇場で《ニーベルングの指環》の新演出を上演するときに、まずドルンに話を持って行ったんですが、『まだ準備が出来ていない』と断られてしまったんだそうです。
 で、レーンホフ(だった?)演出になってしまったのね。

 さて、これほど思い入れの強い《ナクソス島のアリアドネ》ですが、見たのはこれ一回だけ。
 本日が第2回目の観劇となります。
 あまり上演される機会がありませんからね。
 実はストーリーも良く知らない (^_^;。

    関西二期会《ナクソス島のアリアドネ》
 作曲:R.シュトラウス 台本:H.ホフマンスタール

 1998年10月11日(日)2:00PM 尼崎アルカイックホール

    指揮:現田茂夫  演出:松本重孝
    管弦楽:京都市交響楽団

 音楽教師:米田哲二  執事:木川田誠  作曲家 :児玉裕子
 舞踏教師:安川忠之  下僕:麻田健洋  かつら師:服部英生
 士官  :茶木敏行
 アリアドネ:畑田弘美  バッカス:竹田昌弘
 ナヤーデ:森川華世  ドリャーデ:日比直美  エコー:宇留嶋美穂
 ツェルビネッタ:日紫喜恵美
 ハレルキン:草野道広  スカラムッチョ:八百川敏幸
 トルファルディン:萬田一樹  ブルゲルラ:神田裕史

 アルカイックホールに来るのは何年ぶりだろう。
 阪神尼崎駅前があまりに変わっているのには、戸惑ってしまった。
 震災復興の大きなバザーなんかやってるし。

 会場はほぼ満席。
 指揮の現田さんは今までに何回か聴いたけれど、あまり印象に残った演奏はありません。
 演出の松本さんは《椿姫》で感心して、《フィガロの結婚》でがっかりした経験があります。

 『序幕』の舞台は大きな柱6本に囲まれたロビー。
 大理石(に見える)の半円形の階段があり、後面は壁と扉。
 なかなか本格的な装置だ。

 オペラ上演が行われる部屋は上手にあるようで、楽器、譜面台や料理がそちらに運ばれてゆく。
 序幕で素晴らしかったのは作曲家の児玉裕子さん。
 よく通る美声で、カーテンコールでは盛大な『ブラヴァ!』が飛んでいた。

 『オペラ』の舞台装置、柱と階段は序幕と同じ。
 後面は大きな洞窟の岩になっていて、その隙間から海が見えるという、スケールの大きい舞台装置だ。

 しかし待ってくれ、ここはウィーンの富豪の屋敷だろう?
 この館には同じ作りの部屋が2つあるのか?
 こんな大きい装置が入る部屋が本当にあるのか?
 ディーター・ドルンの呪縛から逃れられない僕 (^_^;。

 しかし、こんなことばかり言っていても仕方がないので (^_^;『ここから舞台はオペラハウスに移行したのだ』と思って見ることにした。
 バッカスは船に乗って現れ、また『ウィーンの富豪の部屋に‥‥ (^_^;』なんて思ったりして。

 最後は後面、側面の大道具がすべて引っ込んで、星空まで現れる。
 オペラハウスだと思って見れば、これは大変豪華な舞台装置と言えよう。
 最後にはちょっとした趣向があったが、これは不要だったね。

 歌手ではやっぱりツェルビネッタの日紫喜恵美さんでしょう。
 長大で難易度の高いアリアを歌い切っただけでも感激ものです。
 ザルツブルグでグルベローヴァを聴いた頃には、日本人がこの曲を歌えるようになるとは夢にも思わなかった。
 考えてみれば、R・シュトラウスやワーグナーのオペラを日本人が上演できるようになるとも思わなかったな。

 他の歌手も健闘で、現田さんの指揮するオーケストラともども、満足度の高い公演となりました。
 昨日大阪で見たミュージカル《RENT》も素晴らしかったし、本日午前には芦屋の『谷崎潤一郎記念館』に行ったし、実り豊かな連休を過ごすことが出来ました (^_^) 。
 
 
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