《アンティゴネー》 愛知県芸術劇場大ホール
1999年7月23日(金)7:00PM

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 ギリシャ悲劇なるものを見てみようか、ということで《アンティゴネー》に行ってきました。

      日本ーギリシャ修好100周年記念
         仮面によるギリシャ悲劇
          《アンチゴネー》
         愛知県芸術劇場大ホール
      1999年7月23日(金)7:00PM

  原作:ソポクレース  脚本:山下智恵子  演出:伊藤 敬
  作曲:岡坂慶紀    指揮:水谷昌平

 僕は詳しい人間関係がよく分からないので、自分なりの理解で書きますが、間違いがあればご指摘下さい。

 あの有名なテーバイ国のオイディプース王には4人の子供があった。
 ポリュネイケス(男)、エテオクレス(男)、アンティゴネー(鳥居美江)、イスメーネー(石河美幸)。

 オイディプース王は近親相姦を恥じ、目をつぶし放浪の旅に出る。
 長兄ポリュネイケスは国を去り(どうして?)、次兄エテオクレスが国を治めることになった。

 アンティゴネーとイスメーネーは、オイディプース王の妻(というか母)の弟のクレオン(鈴木林蔵)に育てられている。
 やがて、長兄ポリュネイケスはアルゴスの兵を率いてテーバイに攻めてくる。
 そして、国を守る次兄エテオクレス王と刺し違えて、二人とも死んでしまう。
 ここから物語が始まる。

 新しい王となったクレオンは、見せしめのため、長兄ポリュネイケスの死体を葬ることを禁じ、従わないものは死刑に処せられる。
 しかし、妹として兄の遺体を見捨てておけぬアンティゴネーは、兄の死体を葬り、その結果、彼女は死刑を宣告された。

 クレオン王の息子にしてアンティゴネーの婚約者であるハイモンは、アンティゴネーの釈放を求めるが、クレオン王は『国の秩序が大事』と突っぱねる。
 『人情と規則とどちらが大事か?』というのはなかなかの大問題だ。
 ギリシャではここで神様まで入って来るんだから‥‥。

 クレオン王は予言者の言葉に自らの非を悟り、アンティゴネーを許しに向かったが、彼女はすでに牢で首をつり、傷心の婚約者ハイモンも刀で胸を突いて死んでしまう。
 その悲報を聞いた王妃(ハイモンの母)は自殺してしまい、全てを失ったクレオン王は絶望の中に倒れる。
 こんなストーリーでしょうか。

 演出は象徴的でシンプルなもの(階段)でしたが、なかなか分かり易く見ることが出来ました。
 コロス(合唱)も多く出てきたんですが、群衆処理が上手ですね。
 コロスの音楽はユニゾンのお経みたいなもので、よく分からなかったんですが (^^ゞ、メンバーには澤脇達晴さん、安田健さん、野村富昭さんなど、オペラで見る名前がありました。

 この作品は《アンティゴネー》よりは《クレオン王》とした方がいいような、クレオン王の悩みがテーマとなっています。
 何より感心したのは作者であるソフォクレスの才能。
 一つ一つのセリフが、何と重要な意味を持っているのでしょう。
 ほとんど不必要なセリフが無く、物語が次々と進んでいくので退屈することもありませんでした。

 しかし、江藤淳さんの自殺、ハイジャック機長の刺殺などという事件が続くこの数日、こんな完璧な悲劇を見ていると心がブルーに鬱になってきます。
 25日、26日には《大須オペラ》で気分転換しなくてはね (^_^) 。
 
 
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