リヒャルト・ワーグナー 楽劇《ワルキューレ》
2002年3月31日(日)3:00PM 新国立劇場

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 9:00AMの名古屋駅、名古屋のオペラファン2組と遭遇しました。
 全国のオペラファンが《ワルキューレ》に向け、民族移動をしているのでしょう。

 せっかくの上京です。この機会に国立西洋美術館の「プラド美術館展」を見に行きました。
 ベラスケスやゴヤなど、まあまあの内容だったでしょうか。
 先週の雪舟展(京都)ほど混雑はしていませんでした。
 むしろ、ついでに行った常設展(松方コレクション)の充実ぶりには驚きました。
 
   リヒャルト・ワーグナー 楽劇《ワルキューレ》
  2002年3月31日(日)3:00PM 新国立劇場

        指揮:準・メルクル
        演出:キース・ウォーナー

      ジークムント:アラン・ウッドロー
      ジークリンデ:蔵野 蘭子
      フンディング:長谷川 顯
       ヴォータン:ドニー・レイ・アルバート
        フリッカ:小山 由美
     ブリュンヒルデ:スーザン・ブロック

 客席にバイロイトの総帥、ヴォルフガング・ワーグナーを迎えての御前演奏でした。
 最近のオペラ演出はいかに新しいものを創り出すかがポイントとなっており、キース・ウォーナー演出もいろいろな趣向が凝らされていました。
 僕はベルリン国立歌劇場のクプファー演出は全く受け入れられなかったんですが、今回は許容範囲ですね。
 新国立劇場の持つ最新の舞台機構が有効的に使われていて、面白かった (^_^) 。

 今回の演出の特徴は、矢印でしょうか (^_^;。
 ノートゥンクがが刺さったトネリコからして矢印ですし、春の場面では地面から緑の矢印が生えてきます。
 このジークムント、ジークリンデの愛の場面は大好きなんですが、今回はちょっと欲求不満ぎみ。

 何故かと考えたのですが、ジークムントのスタミナ切れ、ジークリンデの声量不足‥‥それより、準・メルクルの指揮が小手先でまとめている印象。

 ということで、僕の最高の《ワルキューレ》体験は、1998年3月22日に聴いた、飯盛泰次郎、佐藤しのぶの名フィル定期演奏会(セミ・ステージ形式)だったりします。

 第3幕の「ワルキューレの騎行」は救急救命室(ER)です。
 移動ベッドで勇者の死体を運ぶのは見たことがあるし(ゲッツ・フリードリッヒだったっけ)、白塗りの死体がワルハラに向けて歩くのはベルリン国立歌劇場のクプファー演出で見たし、完全に新しいものを創り出すのは大変な作業だと演出家に同情してしまいます。

 勇者の死体をワルハラに運ぶこの場面を病院に設定するのは、ある意味でシンプルな発想であり、ヨーロッパのオペラハウスで演じられたことがあると新聞に書かれていましたね。
 場面を病院に設定しただけで、それ以上の新しい仕事をウォーナーはしたのでしょうか?
 ブリュンヒルデがジークリンデに妊娠を告げる場面では、「病院だから検査が早いのか!」と笑ったけどね (^_^ゞ。

 フィナーレの「ヴォータンの別れと魔の炎の音楽」で、「我が槍の穂先を恐れる者はこの炎を決して越えるな!」という歌詞が映写されるのに、ヴォータンがその槍を持っていなかったは間が抜けてるようで (^_^;‥‥無理に槍を投げ捨てなくても良かったんじゃないでしょうか。

 ブリュンヒルデは金属製ベッド(?)で寝ており、ベッドの枠全体に本物の火が広がります。
 ピーター・ホールがバイロイト音楽祭で実際に火を使う演出をして、「フライパンのようだ」と不評だった、と読んだことがあります。
 実際の火ではそれほどスケールも出ないし、何よりブリュンヒルデが火傷するんじゃないかと心配で (^_^;。

 終演時間 は8時25分。
 自宅に着いたのは12時に近く、それから月末の御仕事。
 好きな道とはいえ、疲労困憊いたしました (^_^;。