(2) 新国立劇場 《コジ・ファン・トゥッテ》
   2006年2月11日(土・祝) 3:00PM

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 僕はモーツアルトの所謂「3大オペラ」はダメなんですが、《コジ・ファン・トゥッテ》は好きで好きで‥‥。

 でも、なかなか理想の舞台に出会えないのは残念。

 今回も「外人の演出家だから、いつものようにダメなんだろうな」と、覚悟を決めての東京遠征です (^_^ゞ。

     新国立劇場 《コジ・ファン・トゥッテ》
     2006年2月11日(土・祝) 3:00PM

       指揮:オラフ・ヘンツォルト
       演出:コルネリア・レプシュレーガー

 管弦楽:東京交響楽団   合唱:新国立劇場合唱団

     フィオルディリージ:リカルダ・メルベス
          ドラベッラ:エレナ・ツィトコーワ
         デスピーナ:中嶋彰子
         フェルランド:高橋 淳
         グリエルモ:ルドルフ・ドーゼン
     ドン・アルフォンゾ:ヴォルフガング・シェーネ

新国立劇場  
  絵葉書


 オラフ・ヘンツォルトの指揮は、前半はテンポがもたれているような気がしましたが、後半は舞台で繰り広げられる人間ドラマに引き込まれました。

 コルネリア・レプシュレーガーの演出は、覚悟通り (^_^;、あまり良いところがなかった。

 だいたい、プログラムに最後の恋人達がどうなるかなどということを長々と書いているところからして気に入らない。

 恋人達の組み合わせがどうなったかなんて、オペラが終わってしまえば誰も覚えていません (^_^ゞ。
 
 このオペラの本質について、僕が最も感心したのは2000年11月、名古屋二期会公演のプログラムに書かれた演出家、中村敬一さんの文章。

 少し補足しながら、以下に紹介させていただきます。

 ここに描かれているのは、単に恋人交換といった大人のスワッピング・ゲームではなく、「うそ」のゲームのつもりがいつしか「本当」になっていってしまう人間の「性(さが)」なのだ。

 ほんの軽い賭のつもりで始めたゲームは想像以上に刺激的で、気がつくと変装ゲームを面白がっていた男性すら真剣に友人の恋人に迫る。

 迫られた女性も、そうあってはいけないと想いながら、新しい愛人の熱い求愛の言葉と愛撫に心を乱してゆく。

 「いくら変装しているとしても、友人の恋人に口説かれて気づかないはずはないだろう」という虚妄な議論がされるが、ここで問題にされているのはそんな些末な技術論のことではない。

 繰り返される嘘の中に本当が芽を吹き、実を結ぶ。
 本当と想っていた真心の実が、あっという間に地に落ちる。
 「本当と嘘」この背中合わせの人間の真実が音楽の力を借りて舞台の上で表現できればと考えている。

 僕が考えますに、恋人を裏切りかねない自分の心におののき、戦場にいる恋人のもとへ逃げようとする貞操堅固なフィオルディリージでさえ、新しい恋人の死を賭けた求愛に負け、身も心も許してしまう部分。
 音楽が長調から短調に変わるこの瞬間こそがこのオペラのクライマックスでしょう。

 そして、彼女の裏切りを見せつけられ、嫉妬にもだえ苦しむグリエルモ。
 軽い冗談が、美しい音楽の中で、何という苦悩に満ちた結末を迎えてしまったのでしょう。

 そういえば、2001年4月小澤征爾音楽塾のプログラムに、小澤征爾氏は「物語は恋人を入れ替えてしまうお色気話で、教育にふさわしい物語ではない」と書いていて、このような薄っぺらな理解しかできない人物が、モーツアルトの総本山ウィーン国立歌劇場の音楽監督になるのかと、茫然としたことがあります。

 本日のキャストでは、ドラベッラのツィトコーワと、ドン・アルフォンゾのシェーネが気に入りました。
 ツィトコーワはアグネス・バルツァ風で、ぜひ彼女の《カルメン》を見てみたいものです。

 終演後は、かねてから気になっていた、新国立劇場3階のレストラン「MAESTRO」に行ってみました。
 今までは、オペラが終わると新幹線に直行でしたからね (^_^) 。

 食事の後は、また東京都庁展望台に登り、東京の夜景を楽しみました。


 
 
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