名古屋二期会第36期研修生 《コジ・ファン・トゥッテ》 2006年3月18日(土) 0:30PM |
前にも書いたけれど、僕は《コジ・ファン・トゥッテ》が大好き。 そして、このオペラの本質について、僕が最も感心したのは2000年11月、名古屋二期会公演のプログラムに書かれた演出家、中村敬一さんの文章(以下大意)。 ここに描かれているのは、単に恋人交換といった大人のスワッピング・ゲームではなく、「うそ」のゲームのつもりがいつしか「本当」になっていってしまう人間の「性(さが)」なのだ。 ほんの軽い賭のつもりで始めたゲームは想像以上に刺激的で、気がつくと変装ゲームを面白がっていた男性すら真剣に友人の恋人に迫る。 迫られた女性も、そうあってはいけないと想いながら、新しい愛人の熱い求愛の言葉と愛撫に心を乱してゆく。 「いくら変装しているとしても、友人の恋人に口説かれて気づかないはずはないだろう」という虚妄な議論がされるが、ここで問題にされているのはそんな些末な技術論のことではない。 繰り返される嘘の中に本当が芽を吹き、実を結ぶ。 本当と想っていた真心の実が、あっという間に地に落ちる。 「本当と嘘」この背中合わせの人間の真実が音楽の力を借りて舞台の上で表現できればと考えている。 その中村さんが演出する公演を見てきました。
10分遅れで東文化小劇場に到着。 受付係「どうしました?」 僕 「当日券ありますか?」 受付係「あっ、はい、1000円です」 当日券で来る人は想定外だったようです (^_^;。 東文化小劇場の座席は349席。 入りは半分くらいでしょうか。 いつものように最後列に座りオペラグラスの観劇ですが、気が付くと同じ列に中村敬一さんが座っていました (@o@)。
名古屋二期会第36期研研修生終了オペラ公演 《コジ・ファン・トゥッテ》 2006年3月18日(土) 0:30PM 指揮:工藤俊幸 演出:中村敬一 ピアノ:森本綾子 守屋亜樹 フィオルディリージ:安田未央 ドラベッラ:白須聖子 デスピーナ:近江志穂 フェッランド:笠木厚憲 グリエルモ:加藤正裕 ドン・アルフォンゾ:関口大介 舞台にあるのは椅子とテーブルくらい。 照明も舞台全体を照らす普通の照明だけ。 しかし、演出の力は怖ろしい。 ちゃんと舞台上の人物が役柄に成り切っているんですね。 当然の事ながらドラマが動き出す第2幕が面白かった。 僕がこのオペラのクライマックスだと考えている、貞淑なフィオルディリージが遂にフェッランドに身をまかせる場面。 グリエルモとドン・アルフォンゾは舞台奥でこの場面を見つめています。 そして恋人フィオルディリージの裏切りを止めようとするフェッランドをドン・アルフォンゾが引き留めるんです。 「約束だろう?」ってね。 だから「俺は何を見たんだ!」というフェッランドの愁嘆場が納得できるわけで、本当に息をのむような物語の展開です。 キャストは皆さま良かったけれど、やはりフィオルディリージでしょうか。 低い音が少し弱いかと思いましたが、難しいアリアを立派に歌い上げていました。 終演後、中村さんを直撃し、演出の秘密に迫ってみました。 僕 :どうしたら歌手をあのように役に成り切らせることが出来るのですか? 中村:ポイントポイントのアドバイスです。 オペラの後は、隣のナゴヤドームで開かれている「フラワードーム2006 あいち花フェスタ国際蘭展」を覗いてきました。
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