《ラ・ボエーム》 新国立劇場版 愛知県文化振興事業団 2006年10月1日(日)2:00PM 愛知県芸術劇場大ホール |
3月18日に熱田文化小劇場で見た《カルメン》では全く感心しなかった粟國 淳さん。 今度は03年4月19日に新国立劇場において初演されたプロダクションの舞台装置を持ち込んでの《ラ・ボエーム》です。 当時の「音楽の友」石戸谷結子さんのレポートでは好意的に評価されていますが、これは僕にとって、突っ込みどころ満載の公演でした。 《ラ・ボエーム》新国立劇場版 愛知県文化振興事業団 2006年10月1日(日)2:00PM 愛知県芸術劇場大ホール 指揮:小崎雅弘 演出:粟國 淳 ミミ:吉田恭子 ロドルフオ:市原多朗 マルチエツロ:堀内康雄 ムゼッタ:山本真由美 ショナール:柴山昌宣 コッリーネ:清水宏樹 管弦楽:名古屋フィルハーモニー交響栄団 カーテンコールの最後に出てきたことで分かるように、この公演は市原多朗さんのための公演でしょう。 しかし、この市原さんが酷かった。 最初から「声に張りが無いな」と聴いていたのですが、有名なアリア『冷たいこの手』でその声は破綻しました。 痰が絡んだような声の連続で、スコーンと聴かせる(プログラム)はずのハイCなど、出したと思ったら途絶えてしまった (@o@)。 オペラ公演でこれほどの声の不調を聴くのは(僕にとっては)珍しい。 一番辛い、悔しい思いをしているのは市原さんでしょうが、こうなると「この声でいつまで持つのか?」などという、不埒な興味でロドルフォに聞き入ってしまいます。 その後はいく分持ち直しましたが、「最近の市原さんは、いつも調子が悪い」という声もあり、びわ湖ホールの《海賊》は大丈夫でしょうか? ミミは背が低く、横に広いおばさん。 市原多朗と市原悦子の共演、などという突っ込みも。 しかも演技がぎこちない。 気を失って椅子に座り込む場面など、空中遊泳かと思いました。 小崎さんの指揮はインテンポで、歌手の都合も考えず、飛ばす飛ばす。 粟国さんの演出は、屋根裏部屋に出口が2つあるという装置で分かるように、奇をてらったもの。 登場時のミミの服装は、花柄(?)のワンピースに黒いハイヒール。 現代の普段着ですが、他のキャストは通常の《ボエーム》の公演と同じ。 当然「いつの時代なんだ?」という疑問がわきますが、プログラムによれば、時代を100年ほど移しているとのこと。 その意図は表現できていないし、もともと無意味な発想でしょう。 ミミは手にコートを持って、どこかに出かける、もしくは帰ってきたという設定のようです。 なら、なぜ蝋燭の火を取りに(しかもコートを持って)来る必要があるのか? 蝋燭のやりとりは入り口で行われますが、ミミが落とした鍵を探すのは舞台中央。 「あんたはそんな奥まで入ってないだろ!」って (^_^; 。 彼らがカフェ・モミュスに出かけるときに、このコートはロドルフォが持ちますが、2幕になると二人ともコートを着ている。 ロドルフォのコートはどこから飛んで来たんだ? 第二幕では、本筋よりも脇の人物の動きの方に、彼の熱意は向けられているようでした。 コーラスの動きがグループ単位なのは(いつも言っているんですが)、申し訳ないが、粟国さんの演出家としての能力に疑問を持ってしまいます。 プログラムの解説(本谷麻子)に、「ぜひとも第4幕にも注目してほしい」と書かれていますが、確かに第4幕は相対的に良かった。 でも、ミミはハイヒールを履いたままベッドに寝かされ、毛布を掛けられます。 結局ミミは、ハイヒールを履いたまま死んでしまったんだな。 何はともあれ突っ込みどころ満載の公演でした。 |