帝国劇場 《マリー・アントワネット》
2006年11月5日(日)5:30PM

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  ウィーンミュージカルの大傑作《エリザベート》の脚本ミヒャエル・クンツェ、作曲シルベスタ・リーヴァイの新作《マリー・アントワネット》を見てきましたが、これは同じコンビの《モーツアルト!》レベルの失敗作でした。
 仰々しく『世界初演』と銘打たれているけれど、オリジナルミュージカルなら、劇団四季だって宝塚だってみんな世界初演でしょうに (^_^; 。

    ミュージカル《マリー・アントワネット》
  2006年11月5日(日)5:30PM 帝国劇場

    脚本:ミヒャエル・クンツェ
    作曲:シルベスタ・リーヴァイ
    演出:栗山民也(新国立劇場演劇部門芸術監督)

  マリー・アントワネット:涼風真世
  マルグリット・アルノー: 新妻聖子
   アクセル・フェルセン:井上芳雄
   アニエス・デュシャン:土居裕子
        ルイ16世:石川禅
       オルレアン候:嶋政宏
       カリオストロ:山口祐一郎
       ボーマルシェ:山路和弘
      ロベスピエール:福井貴一
        ラパン夫人:北村岳子
 ローズ・ベルタン/ポリニャック夫人:春風ひとみ
 ローアン大司教/レオナール:林アキラ


 同じ「M.A」というイニシャルを持つ二人の女性。世の栄華を一身に集めるマリー・アントワネットと、貧しい民衆のひとりマルグリット・アルノー。対照的な運命の星の下に生まれた二人の人生は、ドラマチックに交差する。

 チラシにはこのように書かれていますが、ベルサイユ宮殿の舞踏会にマルグリットが飛び込んで、アントワネットと話をするという冒頭から、引いてしまいました。
 この絶対にあり得ない作り事が「ドラマチックな交差」なのでしょうか?
 完全に脚本が間違っています。
 そして、この勘違いは最後まで続くんです。

 ストーリー全体が魔術師カリオストロ(山口祐一郎)の「我が掌中の珠の出来事」(チラシ)なんだそうで、カリオストロがやたらうろうろしています。
 《マリー・アントワネット》という題名なのに、カーテンコールの最後に挨拶するのがカリオストロで、彼が主役の扱いを受けています。
 しかし、「カリオストロの全ての場面が不必要」と言わなければならないのが、山口ファンの僕としては残念です。
 他にも不必要な登場人物はありました。

 なにはともあれ、マリー・アントワネットを始めとする登場人物の設定が薄っぺら。
 性格が、出てくるたびにコロコロ変わっているのには困りました。
 ルイ16世も最初はバカ殿なのに、最後は立派な父親として愛情にあふれた歌を歌う。

 主役の一人マルグリットの支離滅裂さがとりわけ目立ちまして、こんな役を演じさせられる新妻さんも、お気の毒なことです。
 一生懸命演じておられるだけに、痛ましさが募ります。
 出番が多い上に大声で叫ぶ場面も多く、この役だけがダブルキャストになっているのも分かります。

 最後のマリーのギロチンによる処刑に向かって、脚本はますます支離滅裂となっていきますが、フランス革命自体が人間の一番醜い部分が見える、狂気の世界ですからね。
 
 土居裕子さん(アニエス:マルグリットの先生)の歌声(少なかったけれど)を久しぶりに聴くことが出来たのは嬉しかった。
 新妻さんとの二重唱もありまして、「新旧マドモアゼル・モーツアルト」の共演でしたね。

 リーヴァイのメロディーは悪くないのでCDが出たら買ってもいいけれど、歌詞が分からない外国語の方がいいですね (^_^ゞ。

 主役クラスのメンバーを集めたキャストのレベルは高かった。
 これだけのキャストを集めて、こんな舞台しか作れないとは、脚本のクンツェ、演出の栗山民也の責任は重いでしょう。
 
 
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