新国立劇場 《さまよえるオランダ人》
2007年3月4日(日)2:00PM

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 僕の今までの《さまよえるオランダ人》経験で、最高の舞台は2000年5月6日のヘッセン州立劇場
 本日はそれに匹敵する素晴らしい舞台に巡り会うことが出来ました。
 いや、字幕が付いている分、こちらの方が感銘が深かったかもしれません (^_^; 。


   新国立劇場《さまよえるオランダ人》
    2007年3月4日(日)2:00PM

    指揮:ミヒャエル・ボーダー
    演出:マティアス・フォン・シュテークマン

    ダーラント:松位 浩
    ゼンタ:アニヤ・カンペ
    エリック:エンドリック・ヴォトリッヒ
    マリー:竹本 節子
    舵手:高橋 淳
    オランダ人:ユハ・ウーシタロ

 まずは序曲。
 ボーダーの指揮は打点のはっきりした、てきぱきとしたもの。
 僕はてきぱきとした指揮は好きではありません。
 オーケストラもあまり合っていないような‥‥
 
 休憩なしで上演されることが多いオランダ人としては珍しく、一幕が終わったところで25分の休憩がありました。
 ここまでの印象は「演出に不満なし。オランダ人とダーラントの歌唱はちょっとスケールが小さいか?」といったところでしょうか。

 二幕から登場するゼンタ役のカンペは金髪碧眼。
 見るからにゼンタにふさわしい舞台姿でした。
 「ゼンタのバラード」冒頭の遅いテンポには驚きましたが、これはカンペの意図なのか指揮者の指示なのか‥‥。

 エリックが登場し、ゼンタとの二重唱から舞台は緊迫し、音楽的にもがぜん面白くなってきました。
 エリック役のヴォトリッヒは昨年のバイロイトのジークムントだそうです。

 演出のシュテークマンは、15年にわたりバイロイトの演出助手をしているとのこと。
 これが大きい舞台では初演出でしょうか?

 ドイツの演出家ということで、流行の「読み替え」なる演出家の勝手気ままを覚悟していましたが、いたくまっとうな演出で、オランダ人の幽霊船がせり上がる場面などスケールの大きさにも不満なし。

 最後の場面はゼンタが幽霊船に乗り込んで海に沈み、オランダ人は陸に取り残されるというもので、これは意外でした。
 二人で手を取り合って昇天したり、ゼンタが後追い飛び込みをするような演出ばかり見ていましたから。

 しかし、考えてみればゼンタの望みは「自らが犠牲となってオランダ人(の命)を助けたい」というものでしょう。
 そう考えれば、シュテークマンの演出こそ正しいもので、これこそが「ゼンタの自己犠牲」というものだと納得できます。

 フィナーレのゼンタとエリックの二重唱からオランダ人の死に至る場面は演出も音楽も圧倒的なもので、震えました。
 これほどの上演を日本で見ることができるとは嬉しい限りです。
 
 オランダ人を救うため幽霊船と沈んでいくゼンタの崇高な姿を思い出すと、しばらくは泣けそうです (^_^ゞ 。
 
 
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