バッハ街道の旅(20)2000年5月6日(金) |
さて、本日の観劇はヘッセン州立劇場の《さまよえるオランダ人》。 ヴィースバーデンはヘッセン州の州都であり、ヘッセン州立劇場はクアパークに面した、華麗な外装のオペラハウス。 『ウィーンの国立歌劇場が広大な公園の中に建っている(少し小さいけれど)』と書けば、少しは雰囲気が分かってもらえるだろうか。 劇場の前にはシラーの像が建っている。
開場30分前に劇場に到着。 クアパークを散歩しながら開場を待つ。 しかし、開場時間になっても観客がやって来ない。 ひょっとして、と劇場の反対側(クアハウス側)に廻ってみたら‥‥果たして、コリント式の柱が並ぶ入口で、着飾った人々が談笑していた (^_^ゞ。
この劇場の観客は今回訪れた劇場の中で、最もゴージャスで上流社会風。 黒い蝶ネクタイにロングドレスのカップルが(老年も含め)いっぱい。 普段着の人なんて、いなかったような気がする。 劇場内の内装もウィーン国立歌劇場やゼンパーオパーに匹敵する華麗なもので、『これでこそヨーロッパのオペラハウスだ!』との好印象を強く持った (^_^) 。 《さまよえるオランダ人》 ヘッセン州立劇場(ヴィースバーデン) 2000年5月6日(土)19:30開演 休憩なしで2時間15分 2 Rang Mitte Links Raihe 2 Plat 97 145マルク(7250円) 指揮:ウルフ・シルマー 演出:アッヒム・トルワルド ( Achim Thorwald ) ダーラント:クルト・モル ゼンタ(歌唱):エヴァ・ヨハンソン ゼンタ(演技):サスキア・フィッシャー エリック:グレン・ヴィンスラーデ マリー:ディアネ・ピルヒャー 舵取り:ヨヘン・エルバート オランダ人:ユッカ・ラジライネン 今回のオペラツアーで、僕が知っている人が出たのはこのオペラハウスだけ。 ウルフ・シルマー、クルト・モル、エヴァ・ヨハンソン。 それだけ、このオペラハウスは他の劇場と較べ財政的に豊かなのだと思う。 その分チケット代も高いようだ。 旧東独のオペラハウスと較べ、100マルク(5000円)くらい高いのかな。 ウルフ・シルマーの指揮で序曲が始まった瞬間、とんでもないオペラ経験が出来そうだと確信した。 歌手ではオランダ人のユッカ・ラジライネンが圧倒的。 初めて聞く名前だが、このような声を聴けるのは全く耳の悦びで、彼が歌うたびにゾクゾクした。 クルト・モルのちょっと枯れた声も、ダーラントにはふさわしい。 ゼンタのエヴァ・ヨハンソンは、『ゼンタのバラード』では物足りなかったが、エリックとの二重唱のあたりから調子が出て、素晴らしい声を聞かせてくれた。 エリックも良かったね。 また、合唱の迫力は凄まじいばかりだ。 つまり演奏に関しては、文句の付け所がないわけだ (^_^) 。 アッヒム・トルワルドの演出が、また素晴らしかった。 舞台は大きい正方形ABCDが、直線ACとBDで4分割された抽象的なものだが、それぞれがロープで持ち上げられ、ダーラントの船、オランダ人の船、ゼンタの部屋が見事に造り上げられる。 背景の赤いスクリーンに、オランダ人の船の巨大な帆が現れたときには、音楽の効果もあり本当に興奮した。 アッヒム・トルワルドという名前は初めて聞いたが、この演出家の今後には大いに期待していきたい。 ゼンタが二人いるという発想は新しいものではないのだろうが、特に不自然な邪魔な動きが無かったのは良かった (^_^) 。 演技用ゼンタは、最初は舞台の外にいたけれど、後に舞台の中に入っていった。 最後は舞台前方で倒れたが、出来れば海に飛び込んで頂きたかった (^_^;。 しかし、このような演出もソリストもオーケストラも合唱も、何もかもが素晴らしい舞台なんて、めったにお目にかかることは出来ないだろう。 今回の旅の最大の収穫であった。 ヘッセン州立劇場があるヴィースバーデンは、フランクフルト空港からSバーンで40分。 つまり、日本から最も近いオペラハウスの一つなんだ。 スケジュールが合えば、ぜひ観劇されることを強くお薦めしたい。 終演後ヴィースバーデン駅に戻ると、ロビーは巨大ロック会場となっていた (@o@) 。 周辺にたむろする金髪碧眼の若者たちを見ていると『これがナチスの末裔か』と怖ろしいばかりだ。 まあ、こちらも帝国軍人の末裔なんだが (^_^ゞ。 無事に集団の中を通り過ぎ(見かけよりは紳士的だった (^_^) 、22:38 ヴィースバーデン → 23:30 フランクフルト。 ライン川の向こうに浮かぶマインツの夜景は美しかった。 |