ワーグナー作曲 《妖精》 日本初演
2008年2月17日(日)3:00PM 新国立劇場中劇場

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 僕は初めてのオペラが好きで、それがワーグナーとなればどうしても見ないわけにはいきません。
 東京オペラ・プロデュースは2007年1月の《ルイーズ》で初めて見て、その高い完成度に驚いたんですが、果たしてこの《妖精》も単なる日本初演の域を超えた素晴らしい舞台となっていました。

 プログラムの「ごあいさつ」には、代表で演出担当の松尾洋さんが稽古直前に倒れ入院加療となり、そのプランを八木清市氏が引き継いだと書かれていました。
 そして本日(2月19日)の朝刊に松尾洋さんの死亡記事が出ていました。
 公演の翌日の18日、呼吸不全のため死去されたそうです。
 ドラマチックで泣ける話ですね。享年65とはお若いことです。
 松尾さんのご冥福をお祈りします。


 東京オペラ・プロデュース ワーグナー作曲 《妖精》
2008年2月17日(日)3:00PM 新国立劇場中劇場

  指揮:マルコ・ティトット 演出:松尾 洋・八木清市

  アーダ(妖精):大隅智佳子
  アリンダル王子(トラモント王国の王子):内山 信吾
  ローラ(アリアンダルの妹):松尾香世子
  ゲルノート(アリアンダルに仕える狩人):保坂真悟
  モラルト(ローラの恋人でアリンダルの友人)
                         :杉野 正隆
  グンター(トラモント王国の廷臣):江原 雅敏
  ツェミーナ(妖精):藤永 和望
  ファルツァーナ(妖精):背戸 裕子
  ドロッラローラの侍女でゲルノートの恋人):鈴木 彩
  妖精の王グロマ:森田  学
  ハラルト(トラモント国の将軍):白井 和之
  伝令:浅野 和馬

管弦楽:東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団

 ワーグナー(1813年〜1883年)がヴュルツブルクでの見習い時代の1834年(21歳?)に完成した、最初のオペラです。
 初演はワーグナーの死後、1888年にミュンヘンで行われたそうです。

 ストーリーはオンディーヌ伝説のようなものですが、不必要に複雑で説明しにくい。
 アリンダル王子が石となったアーダを捜しに行く第3幕は《魔笛》の「試練の場」のようなものかと思いました。
 全3幕。各1時間ずつの大作です。

 ワーグナーの音楽はなかなか充実したものでしたが、その後の作品に較べると印象的に残るメロディーに乏しかったような気がします。
 松尾さんの遺作となった演出は、回り舞台を使った大がかりな装置と、照明設計が実に美しい本格的な舞台でした。

 キャストではアーダ役の大隅智佳子さんが圧倒的。
 大隅さんは《ルイーズ》にも感心しましたが、今回のアーダには驚嘆しました。
 第2幕の長大なアリアのなんと素晴らしかったことか。
 ジークリンデ、ブリュンヒルデ、イゾルデ、どの役も聴かせていただきたいものです。

 次回の公演はビゼーの《美しいパースの娘》の日本初演だそうで、初めてのオペラが好きな僕としては心が騒ぎます。
 リーダーを失った東京オペラ・プロデュースには、今後とも有意義な公演を続けていただきたいとお願いさせていただきます。
 
 
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