名古屋フィルハーモニー交響楽団第391回定期演奏会
 <ハーメルンの笛吹き>
 2012年5月19日(土)4:00PM 愛知県芸術劇場コンサートホール

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  今月の名フィル定期には難しそうな曲が並び、ちょっと腰が引けたのですが、期待する川瀬賢太郎さんの演奏会なので行って参りました。
 川瀬さんは1984年生まれだと書いてあるから、27歳でしょうか。
 山田和樹さんは1979年生まれですか。

 名古屋フィルハーモニー交響楽団第391回定期演奏会 <ハーメルンの笛吹き>
 2012年5月19日(土)4:00PM
 愛知県芸術劇場コンサートホール

 リゲティ: コンチェルト・ロマネスク(ルーマニア協奏曲)
 モーツァルト: オーボエ、クラリネット、ホルンとファゴットのための協奏交響曲変ホ長調
 コリリアーノ:『ハーメルンの笛吹き』幻想曲(フルート協奏曲)

  指揮:川瀬賢太郎
  オーボエ:寺島陽介
  クラリネット:ロバート・ボルショス
  ホルン:安土真弓
  ファゴット:ゲオルギ・シャシコフ
  フルート:上野星矢

 ジョルジー・リゲティ(1923~2006)はハンガリーの作曲家。
 「コンチェルト・ロマネスク」はバルトークやコダーイの作品を、もう少し現代音楽にした感じの、予想外に聴きやすい曲でした。
 クラリネットの一番を浅井崇子さんが吹いておられるのは、初めて聴きました。
 浅井さんは名古屋市立菊里高等学校音楽科から東京芸術大学音楽学部器楽科卒業。
 1999年よりザルツブルグ・モーツァルテウム音楽大学に留学。
 つい先日のGWにモーツァルテウムに行った僕としては、ちょっと親近感を感じました (^_^) 。
 ソリスティックな部分もあり、演奏後にはスタンディングで拍手を受けておられました。

 モーツァルトの『オーボエ、クラリネット、ホルンとファゴットのための協奏交響曲』は2011年5月13日のセントラル愛知交響楽団の定期演奏会で聞いたことがあります。
 その時のレポートを引用させていただきます。

 1778年、モーツァルトは旅先のパリで、コンセール・スピリチュアルの委嘱により「フルート、オーボエ、ファゴット、ホルンのために協奏曲を書いた」と父レオポルドに手紙を書いています。
 しかしこの曲の楽譜は失われてしまいました。
 ところが19世紀のモーツァルト研究家オットー・ヤーンの遺品の中から4管の協奏交響曲の楽譜がでてきました。
 楽譜はモーツァルトの自筆ではなく、ソロはフルートではなくクラリネットになっていました。
 そのためにモーツァルトの真作か偽作か、議論のある曲だそうです。

 セントラル愛知交響楽団の定期演奏会ではフルートで吹かれていたパートを、今回の演奏会ではクラリネットが吹いていました。

 ソリストは名フィルの首席奏者達で、
 オーボエの寺島陽介さんは相愛大学からザルツブルグ・モーツァルテウム音楽大学に留学。
 クラリネットのロバート・ボルショスさんはセルビア共和国出身で、グラーツ音楽大学卒業。
 ホルンの安土真弓さんは東京芸術大学出身で、第77回日本音楽コンクール第2位。
 ファゴットのゲオルギ・シャシコフさんはブルガリア出身で、ケルン音楽大学卒業。

 川瀬さんの創り出す柔らかい伴奏の上で首席奏者が語らい合うような演奏で、「どうもモーツァルトの作品ではなさそうだな」と思いながら、気持ちよく聴いていました。

 後半の『ハーメルンの笛吹き』幻想曲は解説によれば、アメリカ現代の作曲家ジョン・コリリアーノ(1938年~)は、ジェームズ・ゴールウェイからフルート協奏曲を依頼されます。
 ただの協奏曲では面白くない! と考案・作曲したのが、ドイツの都市ハーメルンの有名な伝説に基づいた『ハーメルンの笛吹き』幻想曲です。
 奇抜な服装のソリストはフルートとピッコロを持替え、笛や太鼓をもって登場する子どもたち…。
 演劇的な要素が取り入れられ、初演以来、演奏のたびにソリストや楽団によって演出が変えられています。
 
 曲は全部で7つの楽章からできていて、すべての楽章は連続して演奏されます。
 各楽章にはサブタイトルがつけられており、第1楽章「日の出と笛吹きの歌」、第2楽章「ねずみ」、第3楽章「ねずみとの戦い」、第4楽章「戦争のカデンツァ」、第5楽章「笛吹きの勝利」、第6楽章「市民のコラール」、第7楽章「子どもたちの行進」。

 この曲は全くの現代音楽で、特に前半は理解不能でした。
 若い川瀬さんがこんな音楽を良く指揮できるものだと感心はしましたが。

 笛吹きの衣装で現れた上野星矢さんのフルートは、音色もテクニックも申し分の無い演奏で驚いてしまいました。
 難解な音楽でも上野さんの演奏を聴いていると納得できてしまうんですね。

 上野星矢さんさんは1989年東京都出身だから、23歳でしょうか。
 2008年に東京芸術大学に入学し、2009年にパリ国立高等音楽院に入学。
 第8回ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクールでグランプリ(第1位)を獲得。
 ルックスも爽やかな好青年だし、スターになること間違いなし。

 笛吹きには演技も求められまして、オーケストラの中を駆け回っていました。
 街の人々に裏切られた笛吹きがフルートからピッコロに持ち替えて演奏を始めると、客席に座っていた子供達(フルート15人、打楽器4人)が立ち上がりました。
 僕の席(3階後方)からは、右手前方の客席で立った一団が見えました。

 彼らはそれぞれの席から演奏しながら舞台に登って整列し、そして笛吹きの後について1階の通路を通り、後方のドアから出て行ったようです。
 彼らがロビーに出てからもしばらく音は聞こえており、それが不気味でした。

 今回の定期演奏会は若い指揮者とソリストの二人に、難解な曲を高いレベルで演奏していただき、後から思い出していると、だんだん有難味が増してきました (^_^) 。

 しかしチラシの「ハーメルンの笛吹き男」はオーボエを吹いており、フルートとのギャップは気になりました (^_^ゞ。