名古屋フィルハーモニー交響楽団第392回定期演奏会
「ある東欧の物語」 2012年6月16日(土)4:00PM

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 名フィル本年度定期演奏会のテーマは、音楽で紡ぐ「世界の物語」シリーズ。
 6月定期は「ある東欧の物語」としてプラハが取り上げられました。

名古屋フィルハーモニー交響楽団第392回定期演奏会
 2012年6月16日(土)4:00PM
 愛知県芸術劇場 コンサートホール

 指揮:下野竜也

 スメタナ: 交響詩『ブラニーク』
 (連作交響詩『わが祖国』より第6曲)
 モーツァルト: 交響曲第38番ニ長調 K504『プラハ』
 マルティヌー: リディツェ追悼
 フサ: プラハ1968年のための音楽

 『ブラニーク』はあまり面白くない曲でした。
 『わが祖国より』全曲演奏の中で聴くと面白く聴けたのですが、独立して演奏するほどの曲では無いのでしょうか?

 モーツァルトの『プラハ』は宇野功芳先生ご推薦の、カール・シューリヒト指揮パリオペラ座管弦楽団の疾風のような演奏が大好きですから、本日のような丁寧な演奏はもたれます。
 下野さんは丁寧な上にすべてを繰り返して演奏して下さるものですから、精神的に疲労困憊しました。
 熱演ではありますが、あまり好みではありません。

 マルティヌー(1890~1959)の『リディツェ追悼』はナチスドイツによる『リディツェ村皆殺し事件』(1942年6月)を追悼したもの。
 作曲されたのは1943年。
 演奏時間8分で、あまり難しい曲ではありませんでした。

 1968年に起きた『プラハの春』に対してブレジネフ率いるソ連はワルシャワ条約機構軍による軍事介入を行いました。
 僕は2004年のゴールデンウィークにプラハ旅行をして、かつてソ連軍の戦車が並んだヴァーツラフ広場に焼身自殺したヤン・パラフの記念碑を訪ねたことがあります。

 フサの『プラハ1968年のための音楽』は当然この軍事介入に対する抗議の曲と考えられますが、純粋な標題音楽では無いので良く分かりませんでした。
 もともと吹奏楽のために書かれた曲で、打楽器が大活躍し、カーテンコールでは一人一人が拍手を受けていました。

 しかしプラハという街はフス戦争、三十年戦争から第二次世界大戦後の冷戦まで、大変な目に遭った街ですね。
 ヒトラーとスターリンに挟まれたのでは、どうしようも無いでしょうか。

 カーテンコールは下野さんの『帰っちゃあダメ!』という叫び声で始まりました。
 「今回の演奏会の隠しテーマは‥‥」という解説がありましたが、3階後方の僕には聞こえてきませんでした。
 演奏されたのは弦楽器だけのバッハ(レーガー編曲)の「おお人よ、汝の大いなる罪を嘆け」でした。

 そして最後に下野さんは花束を持って現れ、この演奏会で引退されるホルンの新井雅夫さんを指揮台まで引っ張り上げました。
 そこへ1番ホルンの安土真弓さんが付いてきて、下野さんから受け取った花束を新井さんに渡し、号泣しながら新井さんをガッシと抱きしめたのでした。
 2日前に関西フィルの《ワルキューレ》を見たばかりなので、ヴォータンとブリュンヒルデが反対だなと思いましたが (^_^; 、ドラマチックな場面でした。
 名フィルは今年6人の管楽器奏者が退団されるそうで、世代交代の時期に来ているようです。