東京二期会 《パルジファル》
2012年9月16日(日)2:00PM 東京文化会館

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 毎回書いているのですが、僕は一度だけバイロイト歌劇場で観劇したことがあって、それは1980年8月16日(土)の《パルジファル》

 あの時は「こんな難しいオペラを見るのは一生に一度」と思ったのですが、その後もあちこちで《パルジファル》を見る機会があり、《パルジファル》観劇記録を作ってみました。
 
 すると、今回が8回目の観劇になるようで、こんなに何回も《パルジファル》を観劇する人生を送ることになるとは、自分でも驚いています (^_^ゞ。

 東京二期会 《パルジファル》
 2012年9月16日(日)2:00PM
 東京文化会館

 指揮:飯守泰次郎
 演出:クラウス・グート

 アムフォルタス:黒田 博
 ティトゥレル:小田川哲也
 グルネマンツ:小鉄和広
 パルジファル:福井 敬
 クリングゾル:泉 良平
 クンドリ   :橋爪ゆか

 合唱:二期会合唱団
 管弦楽:読売日本交響楽団

 バイロイト歌劇場と違って、オケピットが明るいままで演奏が始まった前奏曲は大変に神経質な音楽で、これではオーケストラが大変だなと思いました。

 前奏曲の最後の部分で幕が上がり、3人の男性が食事をしていて、一人が怒って出て行ってしまうという寸劇が演じられました。

 今回の演出は、ザルツブルク音楽祭の《フィガロの結婚》が話題となったクラウス・グートで、バルセロナ・リセウ大劇場とチューリッヒ歌劇場との共同製作だそうです。
 特徴は巨大な回り舞台を使っていることで、怪我人や精神疾患の患者が出てくるので、戦場の病院が舞台として設定されているのでしょうか。
 演技プラン自体はまともなもので、コンヴィチュニーのような不快感はありません。

 キャストは皆さま大変に高いレベルで、特に初めて聴く橋爪ゆかさんには感心しました。
 新しいスターの誕生か!と思ったら、すでに多くのキャリアを積まれた方でした (^_^; 。
 第二幕のパルジファルとの二重唱は訳が分からず、いつもは退屈するのですが、福井敬さんとの熱唱には興奮しました。

 クリングゾルが投げた聖槍がパルジファルの頭の上で止まるという見せ場は、クリングゾルが聖槍を持ったまま硬直するというあまりに安直な対処法で、たいへん失望しました。

 『聖金曜日の音楽』が歌われるバックには人々の古い映像が流されます。
 戦争の場面ではなし、騒動が起きるわけでも無く、ただ古い映像が流されるだけで、意図不明。
 こんなものを気にしているとせっかくの『聖金曜日の音楽』に集中できなくなります。
 
 クラウス・グートたちのチームは音楽の力を信じることが出来ないのでしょうか?
 それとも音楽の邪魔をしなくては、ヨーロッパで演出家として生きていくことは難しいのでしょうか?

 聖杯王となったパルジファルは制服を着て現れます。
 これはパルジファルが独裁者となったということだそうで、あまりの馬鹿馬鹿しさに失笑するしかありません。

 そして舞台は回り、居間のソファで二人の男達が談笑するフィナーレとなります。
 これは前奏曲で喧嘩別れしたアムフォルタスとクリングゾルの兄弟 (@o@) が和解する場面だそうで、飯守マエストロに率いられたオーケストラと合唱が演奏するあまりにも美しい聖なる音楽と、目の前に見る信じられない場面とのギャップに、「もう二期会の公演には来ない!」という決意が固まったのでした。

 舞台を回さなければ良かったのにな。