関西二期会 《コジ・ファン・トゥッテ》
2012年11月10日(土)4:00PM あましんアルカイックホール

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 何回も書いているけれど、僕はモーツァルトの三大オペラが苦手。
 しかしながら《コジ・ファン・トゥッテ》は大好きなんですね。

 最初にこのオペラを見たのが1988年バイエルン国立歌劇場の来日公演。
 指揮:ヴォルフガンク・サヴァリッシュ 演出:ジャン・カルロ・メノッティ。
 メノッティの演出には、強い衝撃を受けたものです。

 新潮文庫『モーツァルト』に畑中良輔さんの「パパゲーノ独白」というコラムがあって、畑中さんは以下のように書いておられます。
 《コジ・ファン・トゥッテ》も、恋人の変装による浮気だめしの笑劇にしてしまった日本初演。
 どうしてあの中にかくされたモーツァルトの血の涙が読み取れなかったのだろう。
 モーツァルトが笑っているその瞬間の心の傷みを、どうして素通りしてしまったのだろう。
 
 この日は東京二期会の《メデア》もあって、大ファンの大隅智佳子さんがメデアを歌われる日でした。
 しかし、名古屋で午前中に仕事がある身としては、2時の開演にはとても間に合いません。
 東京ではオーケストラのコンサートも土曜日は2時開演ばかりで、週休二日制を当然のこととしているのでしょうか。

 関西のオペラ公演は、おおむね土曜日は4時開演。
 余裕を持って公演に臨むことが出来ます。

 駅から乗ったタクシーの運転手さんに「尼崎連続殺人事件の現場はどの辺ですか?」と聞いてみたら、「あそこに見えるマクドナルドの近く」という返事で、ビックリしました。

 関西二期会《コジ・ファン・トゥッテ》
 2012年11月10日(土)4:00PM
 あましんアルカイックホール

 指揮:園田隆一郎  演出:松本重孝

 フィオルディリージ:平野 雅世
 ドラベッラ:西村 薫
 フェランド:二塚 直紀
 グリエルモ:西尾 岳史
 ドン・アルフォンソ:松森 治
 デスピーナ:西田 真由子

 管弦楽:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団

 園田隆一郎さんの指揮が素晴らしかった。
 ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団の演奏する音楽の何と爽やかで美しかったことか。
 園田さんはレシタティーヴォでは、自分でチェンバロを弾いておられました。

 園田さんは1976年東京生まれというから、まだ36歳くらいですか。
 東京藝術大学音楽学部、同大学大学院を修了。
 その後イタリア、シエナのキジアーナ音楽院にてジャンルイジ・ジェルメッティ氏に師事。

 松本重孝さんの演出はオーストドックスなものでしたが、フィオルディリージとドラベッラの衣装が同じなのには参りました。
 細いのがフィオルディリージ、太めがドラベッラと覚えていたら、途中でショールを羽織られて、それから区別が付かなくなりました。
 観客に対する思いやりのないことです。

 松本さんはプログラムで次のように語っておられます。
 僕は、モーツァルト、ヴェルディという二大巨匠、そしてプッチーニなどの優れた作品においては演出家の姿をできるだけ消そうと考えています。
 特にモーツァルトの作品は普遍性を備えていて、そこに演出家が色をつけて上演することは作品に失礼ではないかと…。
 作品そのもの、作曲家そのものに語らせるのがいいと考えています。

 それなら、なぜ最後に恋人を入れ替えたのでしょう?
 モーツァルトの意図は恋人達を元の鞘に収めて浮気は赦すという寛大なものでしょう?
 「この演出家は言っていることとやっていることが違うじゃないか」とは誰でも思うでしょう。
 このような演出は何度も見たことがあり、新しいアイディアでもないでしょう。
 せっかくの良い舞台だったのに、最後に不愉快な思いをしました。

 若手主体というキャストは、皆さま好演かと思いました。

 しかし改めて《コジ・ファン・トゥッテ》は素晴らしいオペラです。
 3時間くらいの長いオペラなのに、まったく無駄な部分がありません。
 先日見た《フィガロの結婚》なんか、半分は削れるような気がしましたよ。