大隅智佳子/最高の蝶々さん(2)
2013年11月10日(日)3:00PM 足利市民会館

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 足利学校からバスで《蝶々夫人》が上演される足利市民会館へ向かいます。
 市民会館は街の外れでしょうか、バスの本数が少なくて困りました。

 今回の公演は足利市民会館・専属プロフェッショナル団体「足利オペラ・リリカ」の発足記念公演でした。
 「足利オペラ・リリカ」の音楽監督は大隅智佳子さんで、プレイングマネージャーは大変ですね。

足利市民会館 玄 関
ロビー ホール


 「足利オペラ・リリカ」発足記念公演
 プッチーニ作曲 《蝶々夫人》

 2013年11月10日(日)3:00PM
 足利市民会館

 指揮:時任康文  演出:直井研二

 蝶々さん:大隅智佳子
 ピンカートン:内山信吾
 シャープレス:谷友博
 スズキ:相田麻純
 ゴロー:横山真悟
 ボンゾ:三戸大久
 ヤマドリ:小林昭裕
 ケイト:岩水美稚子

 演奏:足利オペラリリカ・アンサンブル
 合唱:足利市民オペラ合唱団

 大隅さんの蝶々さんは最初は低い音が少し出ていないかと感じたのですが、二重唱以降は文句なし。
 期待どおりの歌唱、演技で、泣けました。

 ピンカートンの内山信吾さんは少し声がかすれていたようで、絶好調では無かったようです。
 シャープレスの谷友博さんは余裕のある演技、歌唱でした。
 スズキの相田麻純さんは初めて聞く名前ですが、とても良いスズキだったと思います。

 ゴロー、ボンゾ、ヤマドリの皆さまも役に合っていたと思います。
 ボンゾは登場の時にゴローを激しく突き飛ばしまして、迫力がありました。

 直井研二さんはプログラムに「何も足さず、何も引かない舞台を創りました」と書かれていますが、ジャポニズムの美しい舞台で、演技に対する指示も深みを感じさせ、この舞台を蝶々さんとスズキ付きで海外に輸出して、海外のオペラファンに見ていただきたいと思いました。

 気になったことを書いておけば、『ある晴れた日に』は蝶々さんがスズキに向かって歌う歌だと思うのですが、スズキに向かって「お聞き」と言いながら、蝶々さんは下駄を履いて庭に降りてしまう。
 この辺が良く分からない。

 大隅さんの『ある晴れた日に』は絶唱でしたが、蝶々さんに対するスズキのリアクションが少ない。
 だから、スズキが蝶々さんと同じように期待を持っているのか、蝶々さんの妄想を哀れんでいるのかが分からない。
 最後にスズキは奥の間に走り去るのですが、消える最後に涙を拭いたでしょうか。
 だったら、蝶々さんを痛ましく思いながら聞いていたのかな、と最後に思いました。

 自決の決意を固めた蝶々さんがスズキに「お前も行きなさい」と命じる場面で、スズキは比較的あっさりと奥に間に引っ込みます。
 しかし、いよいよ蝶々さんが自決しようとするときに「ママー!」と叫ぶ子供を連れて現れるのです。
 そして蝶々さんと子供との別れがあって、蝶々さんはスズキに子供を渡し、スズキは蝶々さんに深く頭を下げ、子供を連れて去って行くのです。
 この部分の演出には感心しました。
 子役の小池穂香さんは好演で、泣かされました。
 
 指揮の時任康文さんはオーケストラを大きく動かして、ドラマチックな音楽を創り上げました。
 足利オペラリリカ・アンサンブルはプロのピックアップメンバーのようで、管楽器のソロなど上手だと思いました。
 時にアンサンブルがずれる部分もありましたが、僕はアンサンブルがずれることが決して悪いことだとは思いません。

 大隅智佳子さんの《蝶々夫人》ロールデビューという歴史的な舞台に立ち会うことが出来て、大変に幸せでした。
 

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