左手のピアニスト 智内威雄 ピアノコンサート
2013年12月11日(水)1:30PM 宗次ホール

「REVIEW13」に戻る  ホームページへ
 
 
 11月16日(土)のETV特集『左手のピアニスト~もう一つのピアノ・レッスン』を見て、翌日朝に宗次ホールで電話予約しました。
 自由席 2000円。
 果たして、本日のチケットはソールドアウトとなっていました。
 放送前から前の方のチケットは売れていたそうで、すでに追っかけグループが形成されているようです。

 左手のピアニスト 智内威雄 ピアノコンサート
 2013年12月11日(水)1:30PM 宗次ホール

 シューベルト:アヴェ・マリア
 レーガー:前奏曲とフーガ
 ポンセ:前奏曲とフーガ
 J.S. バッハ/ブラームス:シャコンヌ

 サン=サーンス:エレジー
 滝廉太郎:荒城の月
 左手のアーカイブ楽譜より
  初級 唱歌
  中級 シベリウス:もみの木
  中級 グリーグ:アリエッタ
 ボルトキエヴィチ :詩人
 ボルトキエヴィチ :結婚式
・アンコール
 マスネ: タイスの瞑想曲
 スクリャービン:左手のための前奏曲と夜想曲(?)

 プログラムによれば、智内威雄(ちないたけお)さんは1976年生まれ。
 7歳より東京音楽大学付属教室、東京音楽大学付属高等学校ピアノ演奏科コース、東京音楽大学ピアノ演奏科コース大学在籍中にミラノにて研鑽を積む。
 2000年、ドイツ・ハノーファー音楽大学に入学、ネックレベルク教授に師事し研鑽を積む。
 2001年 局所性ジストニアが右手に発症し、大学を休学し付属医療機関にてリハビリを開始
 2002年 ネックレベルク教授のすすめにより、スクリャービンの前奏曲と夜想曲、バッハ・ブラームスのシャコンヌ等、左手の音楽世界と出会う。
 2005年 同大学の卒業試験にて、左手のみで行った室内楽で満場一致の最優秀成績を収める。
 2007年7月に関西テレビ制作のドキュメンタリー番組「心に響く命の音・左手のピアニスト・智内威雄」が放送される。
 2010年 左手のためのピアノ音楽の発掘と普及を目的とした任意団体「左手のアーカイブ」プロジェクトを発足させ、映像アーカイブ事業の成果を www.lefthandpianomusic.org  にて公開スタート。

 智内さんのトーク付きのコンサートでした。
 客席数およそ300席の宗次ホールは満席。
 
 レーガーの曲は、聴き終わってからとても左手だけで弾いていたとは思えないほど内容のある曲でした。
 ポンセはETV特集で取り上げられた曲。

 シャコンヌは無伴奏ヴァイオリンのための曲ですから、音は最高でも4つで、片手のピアニストにとっても取り組みやすい曲でしょうか?
 無伴奏の曲ならヴァイオリンでもチェロでも4音までだから左手用に編曲しやすいのかな?

 シャコンヌは変奏曲ですが、指1本余裕があるためか、内声に隠されたメロディーがヴァイオリンよりよく聞こえていたと思いました。
 智内さんは「この曲とスクリァービンに救われた」と言っておられました。

 後半はまず「左手のアーカイブ」プロジェクトのお話。
 自らのハンディを克服し、新しい道を切り開いていく姿勢に感銘を受けました。

 セルゲイ・エドゥアルドヴィチ・ボルトキエヴィチ(1877~1952年)は、現ウクライナのポーランド人貴族の家系に生まれました。
 智内さんのお話では、ラフマニノフ、プロコフィエフ、スクリャービン、メトネルらと同時代だったことが不幸だった、とのことでした。
 しかしWikipediaを調べてみると、ロシア革命と二つの世界大戦に翻弄された、あまりにも過酷な人生を送った作曲家だったようです。
 しかし、戦後の1952年にはボルトキエヴィチ協会とラヴァッジ管弦楽団がウィーン楽友協会ホールで彼の75歳の誕生日を祝う演奏会を開きました。
 最近では彼の作品に対する再評価が高まっているそうです。
 鍵盤の端から端まで左手が飛び回る、ロマンティックで輝かしい曲でした。

 「タイスの瞑想曲」はヴァイオリンとピアノの右手が無くても、ちゃんとした曲になっていて不思議でした。

 スクリァービンの曲は多分「左手のための前奏曲と夜想曲」だと思うのですが、スクリャービンは同級生のラフマニノフに対抗心を燃やし、練習しすぎて右手を痛めてしまい、自分自身のために左手の曲を作曲した、と聞いたことがあります。