名フィルの 新音楽監督について 2014年12月22日

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◇名フィル12月定期演奏会プログラム

 名フィル定期のプログラムには「名フィル定期批評」なるページがあり、東京などから来た音楽評論家(?)が、「○年ぶりに聴いた名フィルは上手になっていた」というような記事を書いているわけです。

 12月定期演奏会の担当は音楽評論家の藤井知昭さんでした。
 藤井さんはこの地域の音楽界の大御所で、かつて新聞に演奏評を書いておられました。
 しかし、藤井さんは名フィルの評議員を務めておられ、身内の演奏評とは違和感がありました。

 内容は11月定期演奏会についての普通の演奏評でしたが、最後になって論調が変わりました。

 名フィルの昨今の定期は、現行の「ファーストシリーズ」など、選曲への特性をもたせており、それらの紹介をかねて貴重だが、視点によっては、同じテーマでの異なった選曲も可能である。
 定期演奏会の位置づけの意味は大きく、稀少な作品の紹介や苦楽史上の貴重な作なども含めての作品構成は不可欠だ。しかし一方では、可能なかぎり多くの聴衆を運ばせ、オーケストラの魅力を拡げていくための課題もあると考える。このシリーズに不賛成ではないが、定期の役割と課題も再考を必要とするのではなかろうか。

 この難解な文章には、ますます違和感を持ちました。
 藤井さんは名フィルの評議員ですから、この「ファースト・シリーズ」を決めた責任があるはずです。
 すでに来年度の「メタ・シリーズ」も発売されているこの時期に、何を他人事のようなことを言っているのでしょう?
 藤井さん率いる合唱団「グリーンエコー」はバーンスタインの『ミサ』の日本初演を行うなど、「ファーストシリーズ」以上に斬新、前衛的な路線を取っており、この記事が藤井さんの本心だとは思えないのです。

◇中日新聞『回顧2014・クラシック』(長谷義隆)

 「朝日新聞より左」との評判もある中日新聞(東京新聞)ですが、さすがに地元情報には強く、やむを得ず購読しています。
 12月22日(月)の夕刊に『回顧2014・クラシック』(長谷義隆)という特集があり、名フィルについては次のように書かれています。

 さて、リーダー格の名古屋フィルハーモニー交響楽団は今年始めた豊田定期公演や小林研一郎指揮のマーラー交響曲第二番「復活」などでは喝采を沿びたが、肝心の定期演奏会は聴衆ニーズから離れた選曲が多く定期会員の漸減に歯止めがかかっていない。切り口の斬新さより、名曲を感動的に演奏する原点に立ち返る必要がありそうだ。

 新しい挑戦が上手くいかないからといって、「名曲路線に戻れ」とは情けない。
 多くの聴衆ニーズから離れた意見かと思いました。

◇毎日新聞2014年12月23日(火)

 名古屋フィルハーモニー交響楽団は22日、東京都交響楽団終身名誉指揮者の小泉和裕氏(65)が2016年4月から「音楽監督」に就任すると発表した。音楽監督は現在の最高ポスト・常任指揮者より格上の役職で、任期は19年3月までの3年間。名フィルは「小泉氏は日本の主要オーケストラとも関わりが深く、最高責任者として指導していただく」と話している。

 音楽監督の役職は、名フィル桂冠指揮者の小林研一郎氏が03年3月まで使用して以来、13年ぶりに復活する。

 小泉氏は京都出身で東京芸術大指揮科に入学。1973年、第3回カラヤン国際指揮者コンクールで優勝した後、75年のベルリン・フィル定期演奏会に登場するなど国内外で活躍している。現在、九州交響楽団音楽監督、仙台フィルハーモニー管弦楽団首席客演指揮者などを務めている。

 常任指揮者のマーティン・ブラビンズ氏は16年3月に退任する予定で、音楽監督に就任する小泉氏が、正指揮者の円光寺雅彦氏と指揮者の川瀬賢太郎氏と共に名フィルの演奏能力向上と魅力的な企画づくりに携わる。


 これら一連の流れを見ていると、藤井知昭さんを含む名フィル首脳陣と、音楽関係マスコミとの間ですり合わせがあったような気がします。
 そして、2016年4月から小泉和裕さんを音楽監督として「名曲路線」に転向することが確認されたようです。

 僕は「ファースト・シリーズ」は二度と聴くことが出来ない意欲的なプログラムだと思って通っているのですが、訳が分からない曲が多いことは確かです。
 団員にとっても、一生懸命練習しても二度と演奏しない曲が続くのは辛いのでしょう。

  僕は小泉和裕さんの良い聴き手ではありませんし、今さらの「名曲路線」では、16年度以降の定期会員については継続するかどうか考えてしまいます。
 ティエリー・フィッシャーやマーティン・ブラビンズの意欲的な路線に付いてきた定期会員を失望させるようなプログラムにならないことを願っています。