水戸室内管弦楽団 豊田公演
2015年11月22日(日)3:00PM 豊田市コンサートホール
 
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 初めてメナヘム・プレスラーを聴いたのは2010年12月9日、アントニオ・メネセス(チェロ)の伴奏者としてでした。
 名前も知らない老人ピアニストの奇跡とも思える素晴らしい演奏に、僕は夢中になってしまいました。

 プレスラーはこの年の来日が評判となり、ついには2014年のベルリンフィル・ジルヴェスターコンサート(指揮:サイモン・ラトル)のソリストとして招かれ、モーツァルトのピアノ協奏曲23番を演奏したのでした。
 プレスラーは91歳でした。

 そのプレスラーが豊田市コンサートホールでモーツァルトの27番を演奏するというチラシを見て、慌ててチケットを予約しました。
 ところが、チケットの売れ行きがよろしくないようで、僕は不思議でなりませんでした。
 ベルリンフィル・ジルヴェスターコンサートのソリストが豊田市まで来てくれるのに!

 よくよくチラシを見てみると、大きい字で「水戸室内管弦楽団 豊田公演」と書かれていて、プレスラーの扱いが小さいんです。
 我々が「水戸」と聞いて思い出すのは「黄門さま」と「納豆」くらいで、「水戸室内管弦楽団」にはそれほどのネームヴァリューは無いでしょう。
 チラシが「水戸室内管弦楽団 & メナヘム・プレスラー」だったら、もっとチケットは売れたと思いますよ。

 ところがある日突然、豊田市コンサートホールから、次のような葉書が送られてきました。

 ◆出演者・曲目変更のお知らせ◆
 当初、出演を予定しておりましたピアニストのメナヘム・プレスラーさんが、健康上の理由により来日できなくなりました。
 これに伴い、メナヘム・プレスラーさんの出演を予定していたモーツァルト作曲「ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595」を取りやめ、代わりに児玉桃さんをピアノ独奏者として迎え、モーツァルト作曲「ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467」を演奏いたします。
皆様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご了承ください。

 チケット代は払い戻していただけるそうで、しばし考えてしまいました。
 児玉桃さんは可愛いし、21番は大好きだし、結局行くことにしましたが、係員の方に聞くと、遠方の方からのキャンセルはあったそうです。
 僕は今年の年間ベスト・コンサートかと期待していましたので、期待値は8割減ですね。

 プレスラーは91歳だそうで、このようなリスクは十分に考えられたことです。
 2010年のメネセスとのコンサートが一期一会の機会だったのかと考えると、ラッキーだったと思うと同時に、ちょっと泣けますね。

 水戸室内管弦楽団 豊田公演
 2015年11月22日(日)3:00PM
 豊田市コンサートホール

 指 揮:広上淳一
 ピアノ:児玉 桃

 ハイドン:交響曲 第102番 変ロ長調
 モーツァルト:ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調
 モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調「ジュピター」

 水戸室内管弦楽団は水戸芸術館の専属楽団として、1990年の開館と同時に、初代館長・吉田秀和氏の提唱により誕生しました。
 日本を代表する音楽家である小澤征爾氏が、総監督、指揮者としてその運営にあたっており、メンバーは、ソリストとして、またオーケストラの首席奏者として、世界的な活躍を続ける日本人音楽家および外国人音楽家たちです。

・ヴァイオリン:安芸晶子、植村太郎、荻原尚子、小栗まち絵、久保田 巧、佐份利恭子、島田真千子、竹澤恭子、田中直子、豊嶋泰嗣、中島慎子、中村静香、渡辺實和子
・ヴィオラ:川崎雅夫、川本嘉子、篠崎友美、千原正裕
・チェロ:荒 庸子、上村 昇、原田禎夫、堀 了介
・コントラバス:石川 滋、助川 龍
・フルート:岩佐和弘、工藤重典
・オーボエ:アーメル・デスコット、森枝繭子
・ファゴット:ダーグ・イェンセン、鹿野智子
・ホルン:猶井正幸、ラデク・バボラーク
・トランペット:デイヴィッド・ヘルツォーク、若林万里子
・ティンパニ:望月岳彦

 コンサートマスターは1曲目が竹澤恭子さん、2曲目が渡辺實和子さん、3曲目が豊嶋泰嗣さんでした。
 渡辺實和子(1939年生)さんはアメリカで活動され、水戸室内管弦楽団及びサイトウ・キネン・オーケストラ創設以来のメンバーだそうです。

 竹澤恭子さん、植村太郎さん(名フィル・客演コンサートマスター)、島田真千子さん(セントラル愛知・ソロコンサートマスター)など、名古屋関係者が頑張っているのが嬉しい (^_^) 。
 そう言えば、広上さんも名フィルの副指揮者でしたね。

 竹澤さんがコンサートミストレスを努めたハイドンはあまり面白くない曲でした。
 このホールは残響が強く、早いパッセージは聞き取りにくいところがありました。

 児玉さんのソロは繊細な音楽で、とても良かったです。
 アンコールは「亜麻色の髪の乙女」でした。
 大物のベテランたちが後ろに並ぶステージで、圧迫感があったことでしょう。

 豊嶋泰嗣さんがコンマスを務められた「ジュピター」は男性的な音楽でした。
 豊嶋さんは身体が大きいから。

 交響曲と協奏曲3曲合わせて、休憩を含め2時間以上のプログラム。
 すぐに客電が明るくなり、アンコールはありませんでした。