びわ湖ホール 《さまよえるオランダ人》
2016年3月6日(日)2:00PM

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 本日はびわ湖マラソンが開催されましたが、びわ湖ホールの周辺に、特に変化はありませんでした。
 琵琶湖は曇り空でしたが、ロビーから遠くの山が見えていました。
 名古屋ではブラビンズ&名フィルの「マーラーの5番」があり、これは残念でした。

 びわ湖ホール 《さまよえるオランダ人》
 2016年3月6日(日)2:00PM

 指 揮:沼尻竜典(びわ湖ホール芸術監督)
 演 出:ミヒャエル・ハンペ
 装置・衣裳:ヘニング・フォン・ギールケ

 オランダ人:ロバート・ボーク
 ダーラント:斉木健詞
 ゼンタ:横山恵子
 エリック:樋口達哉
 マリー:竹本節子
 舵 手:高橋 淳

 管弦楽:京都市交響楽団
 合 唱:二期会合唱団、新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部
 合唱指揮:三澤洋史

 沼尻竜典さんの指揮は遅めのテンポで、ワグナーらしい熱気が感じられず、残念ながら退屈しました。
 かつて感心した2000年5月のヴィースバーデンの公演を思い出し、あの時の指揮者ウルフ・シルマーがこの指揮台にいてくれれば、と思いました。

 ミヒャエル・ハンペは昔から有名な演出家ですが、71歳でしょうか。
 この歳でワーグナーの新制作に取り組むとは立派なものです。
 第1幕はダーラント船長のノルウェー船。
 同じ舞台が照明により、第2幕では糸紡ぎの工場になるなど、舞台の不思議に魅せられました。

 キャストの皆さまは健闘かと思いましたが、やはりオランダ人のロバート・ボークが豊かな声量で図抜けていたでしょうか。
 
 第3幕のノルウェー船の乗組員と幽霊船の船員との言い争いの場面で、巨大な幽霊船が鯨のように暴れ出します。
 嵐が吹き荒れ、波しぶきが襲い、空ではゾンビがフライングをしています。
 蛸の足をした幽霊船のゾンビがノルウェー船に現れ、何はともあれ凄い迫力で圧倒されました。

 東条碩夫さんの解説によれば、幽霊船の船員の歌は少人数の「陰コーラス」をスピーカーで増幅することが多く、これほど多数の合唱団が舞台に登場することは珍しいそうです。
 あらかじめ録音をしたものを流したと思われる舞台を見たこともあります。
 そのコーラスは二期会合唱団、新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部の合同合唱団で、合唱指揮は三澤洋史さんでした。

 オペラのフィナーレ、ゼンタの裏切りに絶望したオランダ人は幽霊船に乗り込み、幽霊船は港を離れます。
 オランダ人を追ったゼンタは海に飛び込み、そして沖に見えていた幽霊船は沈没します。
 まったくワーグナーが考えたとおりのフィナーレであり、それを成し遂げたプロジェクション・マッピングの持つ限りない未来に、これからのオペラ演出は変わってくるかも知れないと予感しました。

 舞台の中央にずっと寝ている人がいて、スポットライトが当たります。
 この人についてプログラムに何の説明も無いのは不思議でしたが、上演中は無視して見ていました。
 後からプログラムを読んでいたら、このオペラの原作はハインリッヒ・ハイネの「フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想」という作品(ほか)だそうで、この人はシュナーベレヴォプスキー氏だったのかも知れません。
 踏まれるかも知れないのに2時間舞台中央で寝ているのは、ご苦労様と言うしかありません。
 
 今回の公演はワーグナーの当初の理想に従い、全3幕が通しで演奏されました。
 そのために、2時間を超える長時間の舞台となりました。
 僕は4階の席で聴いていたのですが、「ドタリ」という人が倒れる大きな音が2回聞こえました。
 2回目の時には4階席はどよめきました。

 多分トイレに行こうとして、通路の段差につまずいて倒れた方がいたのでしょう。
 大けがや骨折は無かったようですが、客席の電気を通路の段差が見えなくなるまで暗くする必要はないでしょう。
 本当に3幕通して上演する意味があったのか、トイレが近い方は観劇しにくい時間設定かとも思いました。
 僕は、ロビーのお菓子を買い損なってしまいましたよ (^_^ゞ。