愛知県立芸術大学創立50周年記念オペラ公演
プッチーニ作曲《ラ・ボエーム》
2016年9月25日(日)2:00PM 愛知県芸術劇場 大ホール

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 6月18日のイタリア・スポレート歌劇場の《ラ・ボエーム》は、あまり見たくも無いのに、プッチーニファンの義務感のような感覚でチケットを買ったのでした。
 そかし、佐藤正浩さん&飯塚励生さん&県芸オペラの《ラ・ボエーム》となると、いの一番にチケットを買ってしまいます。
 どうしてなのか自分でも不思議ですが、過去の経験の積み重ねでしょうか。

 愛知県芸術劇場大ホールは同窓会状態で、ドレスアップした女性が多かったです。


 愛知県立芸術大学創立50周年記念オペラ公演
 プッチーニ作曲《ラ・ボエーム》
 2016年9月25日(日)2:00PM
 愛知県芸術劇場 大ホール

 指揮:佐藤 正浩
 演出:飯塚 励生

 ミミ:吉田 珠代
 ロドルフォ:水野 秀樹
 ムゼッタ:辻井 亜季穂
 マルチェロ:末吉 利行
 ショナール:能勢 健司
 コッリーネ:林 隆史
 ベノア、アルチンドロ:初鹿野 剛
 合 唱:愛知県立芸術大学合唱団児童合唱
    :豊田市少年少女合唱団
 管弦楽/愛知県立芸術大学管弦楽団

 ミミの吉田珠代さんが圧倒的に素晴らしかった。
 理想の「私の名はミミ」を聴かせていただきました。

 吉田珠代さんは愛知県立芸術大学、同大学院修了。
 2006年文化庁新進芸術家留学生として、イタリア・ボローニャ 王立音楽学校に留学。
 2008~2010年公益財団法人ロームミュージックファンデーション特別研究生に選出され、ミュンヘン及びウィーンに留学。

 2012年小澤征爾音楽塾『蝶々夫人』(関係者公開公演)では主役外国人キャスト初日公演降板の為、急遽タイトルロールで舞台を務め小澤氏から絶賛を浴びる。

 今年10月には世界的指揮者スービン・メータ率いる世界最高のオーケストラ、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団で演奏される、サントリーホール30周年記念「第九」のソプラノソロに大抜擢された他、来年3月にはウィーン楽友協会での第九ソプラノソロに決定している。

 第1幕は地下室でしょうか?
 ミミは階段を下って、ロドルフォの部屋にやって来ます。
 空には大きな月があるんですが、ボヘミアンたちは階段を上って、外へ出て行きます。
 部屋の奥には大きな後ろ向きの牛?の絵。
 ミミは実際に鍵を落としました。
 ロドルフォは意図的にミミの手を上から握りました。
 ロドルフォは自分でろうそくの火を吹き消しました。

 第2幕へは休憩無し。
 舞台奥からパリの人々を乗せた回り舞台がせり出してきます。
 二階建てではありませんが、よく回ります。
 人びとの整理は見事なもので、ボヘミアン一人ひとりの居場所が確認できます。

 海外の大都市で見る、大きな牛(白に黒の斑点)のオブジェがありました。
 カフェ・モミュスは白に黒の斑点の箱が8個?これでカフェに見えるのが不思議です。
 ムゼッタは大きいハイヒールに乗って、回り舞台で現れます。
 回り舞台もパリの人々も止まった舞台で、ムゼッタは「ムゼッタのワルツ」を歌い上げました。

 ムゼッタ役の辻井亜季穂さんも良い出来だったと思います。
 県芸出身で、ドイツ・アルテンブルク歌劇場専属歌手だそうです。

 全般にこの第2幕はゼッフィレッリ様式とは違う、素晴らしいアイディアに溢れた演出で、オペラの楽しさを堪能しました。
 一生懸命拍手しましたが、幕が上がることはありませんでした。
 
 第3幕は2階建てで、2階には橋が架かっています。
 マルチェッロの酒場は2階左手にあるようです。
 訪ねてきたミミに、マルチェッロ(末吉利行教授)は橋を左から右に渡り、階段を降りての二重唱です。
 この二重唱は、さすがの聴かせどころでした。
 ミミとロドルフォの二重唱も大好きですが、ロドルフォはちょっと弱かったでしょうか。
 最後の四重唱はミミとロドルフォは舞台で、マルチェッロとムゼッタは2階の橋で歌いました。

 第4幕では、ミミは二人きりになると立ち上がり、仲間達が戻るまで立ったままで歌います。
 僕は今までミミはベッドの中で歌うものだと決めつけていましたので、このアイディアには大いに感心しました。
 キャストの動きも自由になりますからね。
 ミミがマフを落としてからロドルフォの絶叫に至るまで、最後の段取りも大いに納得できるものでした。

 カーテンコールでは、カーテン前にキャストが並び、盛大な拍手が送られましたが、指揮者はオケピットに張り付いたまま。
 不思議に思っていたらカーテンが上がり、第二幕がカーテンコールで始まったんですね。
 いくつもの舞台を自由に動かせる、この劇場ならではのカーテンコールでした。
 最後には指揮者、演出家、舞台美術のスタッフも現れ、大いに盛り上がりました。

 ゼッフィレッリに対抗できる、世界のどこに出しても恥ずかしくない舞台だと思いましたよ。