広瀬悦子 ピアノリサイタル =マスク警察=
2020年11月14日(土)6:00PM 宗次ホール

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 2013年1月19日(土)に愛知県芸術劇場コンサートホールで開かれた『大作曲家ワーグナーの生涯Ⅲ』「ブラームスとの対立と恩人リスト」。
 そのコンサートで聴いた広瀬悦子さんの『ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ』という難しい曲の男性的な演奏が気に入り、ソロリサイタルを楽しみにしていました。

 その前に、今回のコンサートでは1週間前の「ガヴリーロフ・コンサート」と較べ、コロナ対応のつもりでしょうが、非常識とおもわれる対応が行われていました。
 「一部指定席」とのことで、開場15分前にホールに到着すると普段着のお姉さんが寄ってきて「マスクを上げて下さい」というわけです。
 「はあ~! 僕のマスクがおかしいの?」
 「少し上が空いております」

 今までの人生で、コンサート、飲食店や医療機関にもマスクをして入ったけれど、こんなことを言われたのは初めてで、仰天しました。
 悪名高い「マスク警察」は列車などに出没し、マスクをしていない人を攻撃するものだと思っていましたが、マスクをしていても宗次ホールにはそれを上回る「超マスク警察」がいるんですね。
 だいたいマスクの容量は限られているんだから、上を閉じれば横から空気が漏れるでしょう。
 このような常識外れの指示は接客責任者から出ているわけで、接客責任者がコロナ対応でパニックになって、適切な判断が出来なくなっているのでしょう。

 おかしな事はまだまだありました。
 僕の前に並んでいる人は番号札を持っていて優先待遇のようで、番号札の無い僕は「ここ(ホール前)に並ばないで下さい」と言われました。
 番号を持っている人に続いて入ればスムーズなのにね。

 で、我々は歩道の車道側(ホールの反対側)に並ばされていたわけです。
 スキーバスでもあるまいし、そもそも公道の使用許可は取っているのかな?
 入口に人がいなくなったので、姉さんに「もう窓口も開いているのだから並ばされている人を入れてもいいんじゃないの?」とアドバイスしても、この人がアルバイト(多分)で対応能力なし。

 待たされている客の間では、並び場所や並び順もトラブル(突然の変更だから)になってきました。
 このお姉さんに対応能力が無ければ上の指示を仰げば良いのに、その判断も出来ないくらい‥‥能力が無いんでしょうね。

 まあ今回、宗次ホールはコロナ対応をしたつもりだろうけれど、常識外れでポイントがずれまくり。
 接客責任者はその能力を超えていろいろ考えすぎてパニックになって、自分たちが如何に非常識なことをしているかの認識が出来ない状態になっているんだろうね。
 テレビでは新型コロナ対策分科会の尾身会長が「食べるときに左手でマスクを外して、食べているときは話をせず、食べ終わったらマスクを元に戻して話す」と実演したことが物笑いの種になっているけれども、宗次ホールも同じような状態に陥っているんだな。
 その上、客に迷惑をかけているんだな。


 広瀬悦子 ピアノリサイタル
 2020年11月14日6:00PM 宗次ホール

 愛知県名古屋市出身。
 3歳からピアノを始め、1994年にパリ・エコールノルマル音楽院に入学。
 96年に同院を首席で卒業後、パリ国立高等音楽院に入学。
 99年に首席卒業とともにダニエル・マーニュ賞を受賞。
 99年のマルタ・アルゲリッチ国際コンクールでの優勝をはじめ、数々の国際コンクールで優秀な成績を収める。
 2001年にはシャルル・デュトワ指揮のN響と共演、日本でのオーケストラ・デビューを果たす。

・ベートーヴェン:ピアノソナタ 第17番「テンペスト」
・ベートーヴェン:ロンド・ア・カプリッチョ「失われた小銭への怒り」
・ベートーヴェン:交響曲 第9番 より 第1楽章 (カルクブレンナー編)

・J.Sバッハ(ブゾーニ編):シャコンヌ
・モシュコフスキー:愛のワルツ/秋に
・ワーグナー(モシュコフスキー編):イゾルデの愛の死
・ビゼー(モシュコフスキー編):「カルメン」より「ジプシーの歌」

 先週聴いたガヴリーロフが素晴らしすぎて、広瀬さんは割を食ったでしょうか?
 どこが違うのか、音色なのかスケールなのか、いろいろ考えてしまいますが、結果的には「ガヴリーロフより面白くない」んですね。
 フォルテの部分は力強く、鉄の前腕かと思いました。

 一番面白かったのが「失われた小銭への怒り」。
 1795年と日付が書かれたピアノ曲未完成の手稿が、ベートーヴェンの死後1827年に開催されたオークションで、その存在が明らかになった。
 1828年に「ディアベリ変奏曲」で有名なアントン・ディアベリによって正式に出版された。
 その後オリジナル手稿が、第二次世界大戦後にアメリカにて発見、これを元に新しい 版が1949年に出版された。
 「失われた小銭への怒り」というサブタイトルは、ベートーヴェンの友人でもあるア ントン・シンドラーによって付けられたと伝えられる。

 力強いスピードのある主題が基本となり、頻繁に転調が行われるところがカプリ ッチョ。
 広瀬さんの力強い良さが出た曲、演奏かと思いました。
 しかし、youtubeでキーシンの演奏(6分)を発見。
 もっとスピードアップし、それでいて一つ一つの音がクッキリと燦めいている。
 上には上があるものだと思いました

 ベートーヴェン『第九』を聴きながら、このピアノで「シャコンヌ」を弾けばどういう音楽になるのか、大体予想できたので、後半はパスしました。
 入りは市松模様で7~8割でしょうか。