《ミス・サイゴン》 2022年9月17(土)0:00PM
梅田芸術劇場メインホール
 
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 僕が一番好きなオペラは《蝶々夫人》。
 一番好きなミュージカルは《ミス・サイゴン》(ベトナム戦争版《蝶々夫人》)。

 《ミス・サイゴン》が帝国劇場で日本公演の初日を迎えたのは1992年5月5日。
 それから約18ヶ月のロングランとなりました。
 それ以来隔年で上演が続けられて30年です。

 美しくドラマチックな音楽を作曲したのはクロード=ミシェル・シェーンベルク(十二音音楽のアーノルド・シェーンベルクの兄の孫)。

 また初演時、最新の舞台装置を駆使したニコラス・ハイトナー(当時イギリス国立劇場の演出家)、「サイゴン陥落」などの群衆シーンが素晴らしい。
 ハイトナーはオペラの演出家としても活躍しています。

 《ミス・サイゴン》2022年9月17日(土)
 梅田芸術劇場メインホール

 エンジニア:市村 正親
 キ ム  :高畑 充希
 クリス  :海宝 直人
 ジョン  :上原 理生
 エレン  :仙名 彩世
 トゥイ  :神田 恭平
 ジ ジ  :青山 郁代

 今回の注目キャストは初めて主役のキムに挑む高畑充希さん。
 高畑さんは名古屋には出演予定がないので、台風14号が迫るなか大阪まで遠征しました。
 高畑さんはミュージカル《ピーターパン》、16年NHK連続ドラマ《とと姉ちゃん》。
 本日の感想は「頑張っているな」というところ。

 《ミス・サイゴン》を観劇することざっと20回以上。
 僕にとっては役作りも歌唱も新妻聖子さんが最高のキムです。

 あれは2004年9月26日、新妻さんの舞台でヘリコプターが降りてこないというハプニングが起こりました。
 支配人(?)が現れ、「全国から来ていただいたお客さんにヘリコプターシーンを見ずにお返しすするわけには参りません」ということで機械の修理が始まりました。
 筧エンジニアがトークで間を持たせる、山口さんがアドリブでピアノを弾く、ドリンクはサービスという珍しい機会でした。
 この舞台を高畑充希さんも座席で見たそうで、同じ経験、空間を共有したわけです。

 市村正親さんはエンジニア役を初演から続けて30年。
 途中で手術を受けて休演したこともありましたが、73歳の今でも歌ったり踊ったり、スーパーマンですね。

 今回の演出はローレンス・コナーによるもので、地方公演も出来るように簡易型。
 ヘリコプターも降りてこないし、ちょっと寂しい感じがしましたね。

 僕はブロードウェイ(ニューヨーク)やウェストエンド(ロンドン)でも《ミス・サイゴン》を見ています。
 中でもブロードウェイの舞台は「舞台の上にも、客席にも、本当のボートピープルがいるのだ」と思い至り、その生々しさに震え上がったものです。

 それにしても大劇場に満席でロングランとは大したものです。
 数年前にブロードウェイでバズ・ラーマン監督が《ラ・ボエーム》のロングランを企画したことがあります。
 トリプルキャストのローテーションでしたが、数ヶ月でクローズしてしまいました。
 観客はオペラよりもミュージカルが好きなのです。

 《オペラ座の怪人》のアンドリュー・ロイド=ウェッバーや《レ・ミゼラブル》《ミス・サイゴン》 クロード=ミシェル・シェーンベルクは「現代のプッチーニ」と呼ばれることがあります。
 彼らのメロディーはロマンティックでありドラマティックでもある。
 現代音楽のオペラが騒音の中に埋没していくなか、彼らのミュージカルはいつまでも上演され続けるでしょう。