メトロポリタン歌劇場来日公演 《トスカ》
1997年5月25日(日)5:00PM 愛知県芸術劇場大ホール

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  メトロポリタン歌劇場来日公演 《トスカ》
  1997年5月25日(日)5:00PM 愛知県芸術劇場大ホール

  指揮:ジェームズ・レヴァイン 演出:フランコ・ゼッフィレッリ

      トスカ:キャロル・ヴァネス
      カヴァラドッシ:ルチアーノ・パヴァロッティ
      スカルピア:ジェームズ・モリス

 舞台装置は日本公演用ということで、教会も中央部以外は絵で描かれたもの。
 豪華絢爛という前宣伝の割には、ちょっとチープ。

 まずは、カヴァラドッシが描く絵のことから。
 堂守が紐をひくと、舞台正面に大きな絵が現れる。
 しかし、カヴァラドッシは、舞台前方にある小さいカンバスの絵を描き始める。
 (パヴァロッティは膝が悪くて階段を上れない。 サイン会でも、伸ばした足に注意するよう言われた。 曲げられないようだ。)
 で、トスカもこの小さいカンバスの絵について嫉妬するわけだ。

 『目を黒くしてね』というところでは、小指に絵の具を付けて、ちょんちょんと眼を黒くしてしまった(ようだ)のはおかしかった。
 しかし、後から現れたスカルピアは舞台奥の大きな絵を指して、『アッタヴァンティ夫人だ』と言うわけだ (^_^) 。

 パヴァロッティは二重唱なんか途中で声が消えそうになってしまったり、すごく調子悪そうに思われた。
 カンバスに置いてある水を何回も飲んだりして。
 本当に最後まで歌えるのか心配になってしまった。

 しかし、第一幕後の休憩時間のロビーでは『今日のパヴァロッティの出来は素晴らしい』という評判だった (^_^;。
 MET通の方の『最近の彼がこれだけ歌えることはめったにない』というお言葉を肝に銘じて、第2幕以降に臨むことになる。
 水を飲むのは、彼の場合、定番なんだそうだ。

 キャロル・ヴァネスのトスカは舞台姿も美しく、まあ言うことないんじゃないか

 ジェームズ・モリスのスカルピアは以外に声が小さいような気がした。
 『テ・デウム』の歌い始め『VA,TOSCA!』という部分なんか、予想よりずっと小さい声で驚いてしまった。
 この件については、またMET通の方から『モリスはヴォータン疲れでしょう。テ・デウムの歌い出しが小さいのは彼の流儀』とのご説明をいただいた。

 オケも何カ所か乱れたようだったが、これについては『練習をしたのが、かえって良くなかったんでしょう』とのコメントであった。

 第一幕後の休憩時間にロビーが騒がしいので見に行ったら、アラーニャとゲオルギウのカップルがいて、サインを求める人の輪が出来ていた。
 こんなこと、普段の名古屋の会場ではあり得ないことで、『やはり、今回の公演は特別なんだ』との思いを新たにする。

 アラーニャとゲオルギウの席は1階下手の第1列。
 第二幕の休憩時間は、楽屋に逃亡したようだった (^_^) 。
 《カルメン》(5/28)におけるゲオルギウの降板は世界的なスキャンダルになりましたね。

 第二幕のカヴァラドッシの『VITTORIA!』という高い音を、パヴァロッティは見事に出したが、その後はオケに埋もれてうやむやになってしまった。
 ここで分かったんだが、パヴァロッティは聴かせ所は聴かせて、その他はセーブして、声と体力を第三幕まで温存しているんだね、きっと。

 拷問室から出されたカヴァラドッシは椅子ではなく、ベッドに倒れ込む。
 このベッドは体重の重いパヴァロッティ専用に準備されたものだろうか?
 スカルピアの執務室にベッドがあるのはおかしいような気もしたが。

 トスカとスカルピアの二重唱は緊迫して、たいへん盛り上がったものだった。
 『歌に生き、恋に生き』も素晴らしかった。
 スカルピアを刺す場面では、トスカがなかなか食卓からナイフを取らないので、ハラハラしてしまった。
 ナイフを取るのはスカルピアが抱きつく寸前。

 死んだスカルピアの周りを、トスカが歩いて蝋燭を置いたりする場面では、静まり返った会場にトスカの衣擦れの音が響き、緊張感がすごい。
 最後、トスカが出ていく場面で大きく打ち鳴らされる小太鼓は、僕は今までトスカの心象風景かと思っていたんだが、ヴァネスはハッと窓の外を見る。
 この場合は、処刑場で鳴らされる太鼓として扱われているようだ。

 そうそう、カーテンコールのことなんだけれど、昨日は最後のカーテンコールで盛大にフラッシュがたかれていた。
 今日は各幕ごとにフラッシュがたかれていて、これはだんだんエスカレートしていくのであろうか?

 第三幕は聖天使城の屋上。
 僕の席は4階第1列という、僕にしては大変いい席なんだが(普段は5階ね)、プロセニアムのために、天使像の上半身が見えなかった。

 残念ながらせり上がりはなく、屋上に机が置かれている。
 この場面が、机の位置まで、先日大阪で見たカレッジ・オペラといっしょで、笑ってしまった (^_^ゞ。

 パヴァロッティの『星も光ぬ』はとっても良かった。
 セーブした甲斐があり、聴かせていただいて有り難い、という感じ。
 二重唱では、かなり濃厚なキスも見せてもらった (^_^;。

 聖天使城の屋上は2段になっていて、上に登る5段くらいの階段がある。
 処刑の場面で、パヴァロッティはこの階段の横に立ち、銃声と共に、ゆっくり階段にうつ伏せになった (^_^) 。

 最後に飛び降りたトスカは、無事着地したのが分かった (^_^) 。
 4階からだからかな?

 最後は盛大なカーテンコール。
 客席から投げられる花束が(花束を持ち込んでもいいのか? 以前は禁止されていたと思うんだが)オーケストラピットの中に落ちて、オケの人が舞台に投げ上げる。
 たまに花束が舞台まで届くと、拍手が一段と高くなる (^_^) 。

 パヴァロッティの衰えが見えてしまったのは残念だったが、日本のオペラ史上に残るであろう舞台を見ることができ、まずは大変満足な一夜でした。

◇本日(5/25日)のサイン速報

 《トスカ》のカーテンコールもそこそこに、サイン会へと駆けだした。
 そこにはもう結構たくさんの人が並んでいた (@_@)。
 サインは1枚、写真はダメ、9時10分までとのこと。

 本日のサインは、トスカ役のヴァネスとパヴァロッティー\(^o^)/。
 スカルピアのモリスはもう帰ってしまったみたい。

 ヴァネス用には、会場で彼女主役の《トスカ》のCDを買った。
 で、 MANEY BEST WISHES CACAROL VANESSと書いて貰った。
 CDを買っただけの効果はあったようだ (^_^) 。

 パヴァロッティには作戦通り手持ちの本『パヴァロッティ・マイ・ワールド』を出したんだが、『立派な本だが、表紙の似顔絵が気に入らない (^_^;』と言われてしまった。
 サインはミミズが這ったようなもので、全く読めない (^_^;。
 
 
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