ウィーンミュージカル 《エリザベート》 (5)
◇ ある夫婦の停車駅/陽気な黙示録/エリザベート、私の天使よ
 
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◇シーン9 ある夫婦の停車駅

 『STATIONEN EINER EHE/ある夫婦の停車駅』

 これはスタジオ録音CDには無い場面だ。

 ルケーニが写真を見せる趣向で、フランツ・ヨーゼフとエリザベート夫妻に起こった出来事が、いくつかの場面に分けて演じられる。

 エリザベートは1855年にゾフィー、1年後にギーゼラと二人の娘を出産するが、産まれた子供はゾフィー皇太后に取り上げられ、『私の子供を返して!』と訴えている。

 そしてエリザベートは、ハンガリーへの旅に娘たちを連れて行くことをフランツ・ヨーゼフに要求する。
 しかし、旅の途中に長女のゾフィーは高い熱を出してしまう。
 そこに黒い馬車と共にトートが現れ、『影は長くなる』のメロディーでエリザベートを馬車に誘う。

 そこには黒い棺があり、中にはゾフィーの遺体が見える。
 『ナイン!』というエリザベートの悲痛な叫び声。
 ゾフィーが死んだのは1857年5月28日。 2歳と88日の命だった。

◇シーン10 ウィーンのカフェハウス

 『陽気な黙示録』

 ここでは暇を持て余したインテリが、カフェでコーヒーを飲みながら世間話をしている場面。
 彼らが話題にしているのは、エリザベートの娘ゾフィーの死、そして一年経って、ルドルフの誕生、クリミア戦争、ハンガリーの独立運動などなど。

 『世間では何があっても、我々はカフェテラスの周りにすわって、退屈な黙示録を待っているしかない』なんて、何時の時代もインテリは他力本願だね。

 で、このカフェシーンなんだが、驚いたことに、彼らは一人一台、遊園地の電気自動車に乗っている。
 ルケーニはウェイターとなって、車の間を通ったり、上に飛び乗ったり。
 乗っている人は運転してはいないようだが、この車のコントロールはどうなっているんだろう?

◇シーン11 エリザベートの寝室

 『エリザベート、私の天使よ』

 エリザベートの寝室のドアは、中から鍵がかけられている。
 フランツ・ヨーゼフはドアをノックし、『エリザベート、私の天使よ。優しくしておくれ。私の背後には問題に満ちた一日がある。醜聞、国家破産、戦争に革命。自殺の流行、新しいチフスの落とし穴。私が眠りに入れるよう助けておくれ』と歌う。

 しかし扉を開けたエリザベートは『ルドルフの教育について、お母さまか、私か、どちらを選ぶの!』とフランツ・ヨーゼフを詰問し、最後通告を突きつけて、再びドアを閉めてしまう。

 エリザベートが振り返ると、そこにはトートが立っている。
 彼は『私の腕によりかかって休むがいい。よりよい世界に連れて行こう』とエリザベートを誘う。
 しかし、エリザベートは『いや!私は生きていたい。私はまだ若い。私はあなたを望まない! 私はあなたを必要としない! あっちへ行って!』と、彼の誘いを拒否する。

※一口メモ
 皇太子ルドルフは立派な軍人にしたいというフランツ・ヨーゼフの命令で、6歳からゴンドルクール伯爵の監視のもと、あまりに厳しい訓練を受け、神経過敏で病気がちになり、一時は生命も危ぶまれたそうだ。

 結局エリザベートの要求は認められ、ルドルフの教育はラトゥール大佐に任された。
 この後ルドルフには「リベラル」な教育がされるが、それが後の「マイヤーリンクの悲劇」につながっていくわけだ。
 
 
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